営業人材やノウハウ不足といった課題を解決する方法の1つに、「営業の外注」がある。株式会社soraプロジェクトは、2007年から営業代行を始め、5300件ものプロジェクトを請け負った実績のある会社だ。
福岡から全国に向けて、テレアポやインサイドセールス、WEBマーケティング支援を行っており、6年で18倍にも事業を成長させた。成果を出し続けることを追求する同社の代表取締役社長・樋口裕貴氏に、事業内容や地元福岡への思い、今後の展望についてうかがった。
人手不足のピンチをチャンスに。時代の波に乗り事業を拡大
ーー貴社の概要と創業の経緯をお聞かせください。
樋口裕貴:
弊社は、テレアポ・営業代行やWEBマーケティング支援を行っています。もともと母が創業した会社で、株式会社ダスキンのフランチャイズをしていたときにつくった営業電話の部隊がきっかけになっています。
営業部隊の実績を聞きつけた他の会社から、営業電話の代行を頼まれるようになり、「これは十分な見込みがある」とsoraプロジェクトを立ち上げました。今や弊社のコールセンターの社員は業務委託を含めると500名にまで拡大しています。
ーー社長の経歴を教えてください。
樋口裕貴:
私は2つの大学に行き、26歳で卒業しました。その年齢で新卒だと採用されることは難しく、結果、唯一入社できたのが弊社だったというのが正直なところです。当時は売上が低迷していたので赤字続きで、明日潰れるかもしれないという危機的状態の中、苦労もありました。私は営業を担当し、営業部長を経て、2021年に代表取締役社長に就任しました。
ーー事業の成長には、どのような背景があったのでしょうか。
樋口裕貴:
一番は、需要の拡大が大きいですね。昨今、世の中では企業の人手不足が言われ始め、人を採用するよりも外注するという流れが起きています。その中で、営業業務を外注したいという企業が増えてきたので、その波にうまく乗れたわけです。
もう一つの背景として、メディアへの露出を増やしたことがあげられます。ウェビナーへの登壇やイベントへの出展、YouTubeやX(旧Twitter)の活用を始めて、弊社についていろいろな場でアピールしたことが、業績向上につながったと思っています。
経験と論理に裏打ちされた確かなアプローチ
ーー貴社の強みをお聞かせください。
樋口裕貴:
最近、営業・テレアポ代行を始める企業は多いのですが、私たちは2007年からそこに目をつけていました。そして同業他社よりも長く、様々な業界の会社にサービスを提供してきたという経験があるので、多くのノウハウが社内に蓄積されています。
このノウハウは、言語化・数値化して、再現性を高めています。KPIを設定し、問題があるときには、気合いや根性に頼るのではなく、数字で評価していくことを大切にしています。
ーー貴社のインサイドセールスについてご説明いただけますか。
樋口裕貴:
もともとテレアポ代行をしており、営業電話に強い部隊を持っているので、インサイドセールスにかなり力を入れています。具体的には営業管理システムのツールを入れて営業活動を可視化し、アポイント件数だけでなく、見込み客が何件とれたのかという数字を見ています。無理やりアポイントをとりつけるという一過性の電話ではなく、見込み客のストックを私たちが企業に伴走してつくっていくわけです。
ーーテレアポ代行の効果はいかがですか?
樋口裕貴:
人材派遣業を行っているお客様で、アポイント数が今までの2.5倍になったケースがあります。また、営業の離職が減ったという副次的な効果も出ています。
弊社がテレアポを代行することで、営業の方はアポイントがとれた状態、いわば需要がある状態で活動できるので、心身ともに負担が減りますよね。生産性も上がって、離職率も下がるわけです。また、採用には時間もコストもかかるので、最初から外注のほうがいいと判断される企業さんも多いですね。
ーー貴社が選ばれる理由をどのように分析していますか?
樋口裕貴:
弊社では、今までに約5300件のプロジェクトに携わっていて、4〜5万件分のトークスクリプト(商談の台本)をつくっています。どのスクリプトがいいかをABテスト(複数のパターンを比較して成果を得られるほうを採用する手法)で検証する専門部隊がおり、正解が見えた状態で電話をするので、成果が出やすいのです。
そこからさらにPDCAサイクルも回して、どんどん質を高めていきます。他の代行会社と弊社を並行して使っていただいても、結果、弊社だけを継続してご利用いただくということも多いですね。
福岡への思いと、営業に悩む会社への思い
ーー取引先の9割が東京のお客様ということですが、福岡に拠点を置き続ける理由を教えてください。
樋口裕貴:
やはり、「福岡が好き」という気持ちが大きいですね。私は福岡県出身なので、地元に貢献したいと思っています。実際、東京で契約をとってきて、それを福岡に還元するという流れをつくっているので、「少しは恩返しできているのかな」と思っています。
弊社にとって重要なのは、人的資源です。東京のお客様が多いのですが、「実際に業務を行うのは福岡で採用した人」という流れをつくっていきたいですね。
ーーどういう組織を目指していきたいと考えていますか。
樋口裕貴:
私たちが目指すのは、営業活動のプラットフォームになること。営業で困ったときには「soraプロジェクトに相談してみよう」と頼ってもらえる状態を目指したいですね。
私は売れない営業の気持ちから、その営業を支えるマネージャーの気持ち、その姿を目にする社長の気持ちまで、すべてがわかります。それぞれが苦しくても、誰に相談していいのかがわからないのです。そのような営業の悩みを全面的に解決できるように、コンサルからリソースの提供まで、弊社に全部任せてもらいたいと思っています。
シェアを拡大するためには、社内のコールスタッフやSV(スーパーバイザー)、リーダー、営業など、まだまだリソースが足りません。今はインサイドセールスが売上のほとんどを占めていますが、新しいメンバーを加えて、これからはマーケティング支援の領域を伸ばしていきたいですね。
編集後記
コールセンターというと、ハードな環境を思い浮かべる人もいるかもしれないが、株式会社soraプロジェクトでは、ワークライフバランスを重視している。「弊社はマンパワーではなく、数字と仕組みで成果を出すことを目指し、それが今、実現できている」と自負する樋口社長の数々の言葉には、事業への熱意と、従業員そして地元福岡への思いが溢れていた。
樋口裕貴/福岡県出身。2012年に株式会社soraプロジェクトに入社し、テレアポ・インサイドセールス事業に携わる。専門は法人向けのアウトバウンド営業。営業部長を経て、2021年に代表取締役社長に就任。