創業者が自ら養鶏に携わって育てた鶏肉を中心に、安心で質の高い食品を提供しているトリゼンフーズ株式会社。品質や味だけではなく、日本はもとより世界に通じる味と品質を目標にまい進し続けている。
生産者と手を取り、こだわりの食品を届けるトリゼンフーズの代表取締役社長である河津英弘氏に、メイン商品のブランディングや今後の事業展開などについてうかがった。
店舗立ち上げに携わったことをきっかけに、家業を継ぐことを決意
ーー河津社長のご経歴について教えてください。
河津英弘:
高校生のときにニュージーランドに留学して、帰国してから簿記の専門学校に入るまで時間があったので、当時トリゼンフーズの前身の会社を経営していた父から「これから立ち上げる飲食店を手伝ってほしい」と声をかけられました。
あくまでも専門学校に入学するまでの「つなぎ」として、福岡の店舗で1週間ほど手伝い、その後に大阪の新店舗の立ち上げに2カ月間携わりました。先輩方のご指導のもと、私自身も勉強しながら業務を覚える毎日でした。
専門学校に入ってからは、学業と並行して、忙しくなった福岡中洲の店舗でランチから閉店時間までアルバイトとして入っていました。卒業後もそのまま中洲の店舗で働くことをすすめられましたが、社会のことも学びたかったので、就職活動をすることに決めました。ただ、なかなか就職先が決まらなかったのです。
そんななか、父と仲の良い方が東京で食品販売の会社の社長をされており、直接会う機会がありました。実際にお話をしたところ、「この方のもとで働いてみたい、頑張ってみたい」という気持ちになりました。結局、その会社に就職し、東京で社会人のスタートを迎えました。当時は自分の会社を継ぐことは考えていませんでしたね。
ーー家業を継ごうと思われたのはいつですか。
河津英弘:
東京の就職先では、父の会社が流通から飲食部門まで鶏肉全般を取り扱っていることを高く評価する声を聞くこともあり、家業にも少しずつ興味を持ち始めました。
家業を継ごうと思ったのは、社会人4年目のことです。ちょうど福岡に里帰りするタイミングで、たまたま父と新幹線が一緒になりました。車内で、缶ビールを買っていろいろ話したんです。父はこんなことがしたいとか、会社の話など仕事の話ばかりしていました。
話していくうちに、純粋に父という人物に対する尊敬の念が湧いてきました。改めて「一度家に帰るかどうかを本気で考えた方がいいのかもしれない」と思い直して、家業を継ぐことを決めたのです。
「華味鳥」の味と品質を世界に届けたい
ーー貴社の事業内容についておうかがいします。
河津英弘:
業界ではインテグレーターといいますが、鶏肉にまつわる川上から川下まで一貫して担っています。生産から、食肉用に処理して物流に乗せ、BtoB販売や、飲食や通販などのBtoCまでトータルで関わっています。
インテグレーターの事業を行っているのは、中小企業では片手ぐらいしかありません。弊社は、「華味鳥(はなみどり)」というブランドの鶏肉を中心に、事業展開できている点が大きな強みだと思っています。
ーー「華味鳥」の特徴を教えてください。
河津英弘:
当時の会長が、いずれ生産コストや競争力で勝てない時代が来るだろうと予測し、自ら養鶏から関わり、自社ブランドを立ち上げたのが「華味鳥」のスタートです。
「華味鳥」には、2つの大きな特徴があります。1つは餌です。飼料会社と一緒に管理しているものを与えないと「華味鳥」として出荷することはできません。また、澄んだ空気が満ち、たっぷりと陽光が降り注ぐ開放鶏舎で育てられた鶏しか仕入れないようにしています。
ーー今後の事業展開についてお聞かせください。
河津英弘:
これからは、「トリゼン」という名前をブランディングして、「華味鳥」のクオリティを超えるものをつくりたいと思っています。やはり、大元となる会社の価値を上げ、看板とするためです。
現在、グループ全体の売上規模が250億円ほどです。直近5年間ぐらいで倍にはなりましたが、今後の目標としては500億円を掲げています。
ーー目標の売上に達するためにどのような取り組みを考えていますか。
河津英弘:
売上の倍増を目指すからといって、従業員の数を同じく倍にしようとは考えていません。リソースの供給には限界があるので、そのためにもまずは業務の効率化を図り、インフラを整える必要があると思っています。今期と来期でシステムを全て入れ替える準備もしています。
また、今弊社が取り扱っている商品はメイン業態が水炊きにも使用している「華味鳥」ですが、売上を上げるためには異なる業態での開発も必要です。メインとなるような商品を複数つくりたいですね。
編集後記
日本の中小企業の中でも数少ないインテグレーターとして、飼料会社や生産者と手を取り、鶏にまつわるさまざまな食品を提供しているトリゼンフーズ。「華味鳥」をつくり上げた会長から思いを受け継ぎ、高品質な食を提供しているだけではなく、人口減少が課題と考え、海外のマーケットも見据えた事業展開を画策中だ。
「日本はもとより、世界に通じる味と品質」を合言葉に日々まい進する社長。世界のマーケットでトリゼンブランドの食品が販売される日も近そうだ。
河津英弘/1983年、福岡県生まれ。単身でニュージーランドの高校に留学し、卒業と同時に帰国。家業の当時トリゼンフーズ株式会社飲食事業部(現トリゼンダイニング株式会社)にて「博多華味鳥」の大阪の店舗の立ち上げに携わる。他社で4年間勤務後、トリゼンフーズ株式会社に入社。以降、工場から各事業部門を全て経験。第一事業部長、常務取締役を経て2015年に代表取締役社長に就任。