※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

企業の挑戦と変化においては、内部の努力だけでは越えられない壁に突き当たることもある。特に、グローバルな市場で競争を繰り広げていると、新しい取り組みや戦略の導入は不可欠といえる。

ダイトロン株式会社は、コロナ禍を乗り越えるため、働き方から変革を開始した。現在、積極的に海外展開と新規事業を推進し、業界内での確固たる地位を築くために動く。

今回は、これらの戦略を通じて年商1000億円の達成を目指し、社会への貢献と継続的な成長をはかる土屋伸介社長の取り組みの詳細をうかがった。

マレーシアへの赴任で成長し、適応能力が備わった

ーー入社後しばらくしてから、海外で勤務していたとお聞きしました。当時はどのような思いだったのでしょうか。

土屋伸介:
日本国内での営業経験に多少マンネリを感じており、海外勤務の話があったときは、またとないチャンスだと感じました。私にとっては挑戦であり、気持ちをリセットし、自分を見つめ直す経験になると思い、引き受けることにしました。

最初の赴任先であるマレーシアでは、事業の立ち上げに従事し、現地と日本とのビジネス文化の違いを実感しました。日本と異なる自己主張のスタイルや直接的なコミュニケーションは、私にとって新しい経験であり、多くの学びがありました。

私のキャリアにおいて海外経験は、新しい市場での業務展開のスキルを習得し、自己成長も遂げるものとなりました。

コロナ禍でチャンスをつかみ、新しいビジネスモデルの推進で利益をアップ

ーー土屋社長が就任したタイミングはコロナ禍でしたが、会社として変化はありましたか?

土屋伸介:
当時、多くの企業がビジネスの停滞を経験していた中、エレクトロニクス業界には在宅勤務や巣ごもり需要によってビジネスチャンスが訪れました。特にパソコンやゲーム機、通信機器などの電子機器の需要が急増しましたね。

この期間に、弊社では従来のビジネスモデルを見直し、在宅勤務の導入を強く推し進めました。最初はテスト的な取り組みでしたが、良い効果があることがわかったので、在宅勤務の導入を決定しました。

従業員も新しい働き方に順応し、生産性の維持・向上につながりました。結果的に大きな改革となり、社内外のコミュニケーションにも大きな影響を与えましたね。やりとりがスムーズになり、新たなビジネスモデルを生み出すこともできました。

時流に合わせてビジネス戦略を立て、それを実行に移したことで、企業としての売上と利益を伸ばすことができました。これらのことから、弊社の業界内での位置を確立したと感じています。

年商1000億円の達成とソフトウェア開発で社会の「サステナビリティ」を実現したい

ーー年商1000億円を目指しているとうかがっています。今後の貴社の方向性についてお聞きかせください。

土屋伸介:
私たちの注力テーマは、「年商1000億円超」。この年間売上を達成するためには、海外市場の拡大が重要だと考えています。国内市場はすでに安定しており、同じペースでの成長は現実的ではないため、海外でのさらなる市場開拓が必要です。

新しい事業の展開も重要ですね。弊社は技術商社としてニッチ市場における技術力・メーカー機能を加えた「製販融合路線」で展開していますが、社内の活性化とモチベーション向上のためにも、新規事業を検討し、今後はソフトウェアビジネスの強化にも注力したいと考えています。これまでにも調査や取り組みを行ってきましたが、これからはより具体的な成果を出せるようにしたいですね。

新規事業では、サステナビリティを意識したソフトウェアの開発に焦点を当て、既存のハードウェア製品と組み合わせたソリューションを提供することで、新たな顧客層の開拓を目指しています。画像処理の自動化やAIを活用したソフトウェアなどの製品を開発し、市場に導入していく計画です。

ーーサステナビリティを意識するきっかけなどはありましたか?

土屋伸介:
中期経営計画で策定した2030年のビジョンでしたね。ダイトロンとして、サステナビリティの重要性を認識し、企業活動を通じて社会への貢献を目指しています。最近では投資家の意識も高まり、社内でもその重要性が認識されるようになってきました。特に、企業にはSDGsの目標とどのように連携できるかを把握し、具体的な課題を抽出して取り組むことが求められています。

製品開発においても、サステナビリティを重視し、新しい技術をとり入れ、製品を開発し、社会に貢献できたことで、企業価値を高められるといえるでしょう。また、技術の知財化も含まれるため、私たちが開発した技術を保護し、長期的なビジネスの展望を持つことが重要です。

今後は、この持続可能な技術や製品の開発に注力し、市場での競争力を保ちながら、環境に配慮したビジネスを展開する予定です。さまざまな取り組みを実践し、2030年のビジョンの達成を目指しています。

編集後記

土屋社長は海外での厳しいビジネス環境の中で挑戦し、グローバルな視点から企業の課題解決に焦点を当て、革新的なソリューションを提供している。在宅勤務の導入など、新型コロナウイルスの危機をチャンスに変える戦略からは、決断力と先見性が感じられる。今後も、ダイトロンのビジネス戦略とサステナビリティへの取り組みを応援していきたい。

土屋伸介/1961年三重県生まれ。1984年に立命館大学産業社会学部を卒業後、大都商事株式会社(現・ダイトロン株式会社)に入社。機械営業部、マレーシア、アメリカ駐在を経て、2013年に執行役員に就任。2019年に取締役常務執行役員、2021年に代表取締役に就任。