※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

企業の成長には、常に変化が求められる。特に、技術の急速な進化が求められるIT業界では、既存の枠組みを超えた新しいアプローチが不可欠だといえる。

株式会社ビヨンドでは、この課題に対して、クラウドサービスとウェブ技術を核としたビジネスモデルを確立し、業界内での競争力を強化している。

今回は、英会話教室を運営する企業から転身したユニークなキャリアを持つ原岡社長に、持続可能な技術革新を通じた事業拡大の取り組みについて話をうかがった。

新卒エンジニアが起業の原点だった

ーー貴社を立ち上げた経緯を教えてください。

原岡昌寛:
英会話会社のNOVAに新卒で就職し、エンジニアとしてテレビ電話を使った英会話レッスンサービスに携わっていくうちに、自分のビジネスを興したいと思うようになりました。

初めての起業は古本のオンライン売買でした。他にもモバイルスペースでのホームページ作成サービスや、美容関連のビジネスにも携わるなどの経験を経て、多数のサーバーを運用する会社としてビヨンドを設立しました。

ーー貴社の事業について詳しくお聞かせください。

原岡昌寛:
弊社の主力事業では、クラウドサーバーの運用、ウェブシステムやアプリの開発、自社サービスとしての予約システムとウェブ監視ツールを取り扱っています。

弊社は、全てのサーバーを大阪に集約させ、運用やトラブル対応を24時間行う業務からスタートしました。その後、ビジネスの機会を追求する過程で、技術を他の領域にも応用する可能性を探っていました。

ガラケー向けコンテンツのサーバー運用から始めた事業は、スマートフォンとクラウドが台頭したタイミングで、物理サーバーからクラウドサーバーへの移行という新たなビジネスモデルへと舵を切りました。

ただ、これまで企業間取引における経験は一切なかったので、営業先から「見積りを出してほしい」と言われても、私たちは「見積りって何?」という状態でした。初めての法人顧客からの依頼で見積もりを作成する際には、インターネットで情報を調べながら手探りで学んだ記憶があります。その後は、営業戦略を見直し、マーケティング活動を強化して新規顧客を獲得する流れをつくりました。

会社の未来へつなげるために!エンジニア育成と文化の浸透

ーー過去の経験がビヨンドの事業にも活かされているのでしょうか?

原岡昌寛:
クラウドサーバーと物理サーバーの管理経験が、他の開発プロジェクトにも活かされましたね。特に、サーバーの運用面では大量のデータ負荷を回避することやセキュリティ対策などに役立ちました。

基本的に、サービス開発はハイリスクであり多くの試みを必要とし、持続可能な開発・運用が重要です。そういった課題に対応するためにも、適切なエンジニアの育成と運用の強化に加え、サーバー運用の質にこだわっています。

多くの企業ではコンサルティングや要件定義といった上流工程が評価されがちですが、運用にもスキルと経験が問われることもたくさんあります。しかも予期せぬ問題に対処するためには、より高度なスキルと経験が必要であることから、運用も重要な位置づけだと考えています。

ーー企業文化の醸成において意識しているポイントはありますか?

原岡昌寛:
弊社の企業文化に合う人材を選ぶことに注力しています。技術は学ぶことができるものの、人の考え方や性格を変えていくことは難しいため、採用段階から人柄を見るようにしています。面接を受ける人の名前も知らない状態で、かつ顔や先入観(バイアス)も取り除き、「どんな人物像なのか」にフォーカスしたバーチャル面接という新しい試みも始めました。

社内では、企業理念やコアバリューを社員に浸透させるために、研修や日々のコミュニケーション、社内イベントを通じて連帯感を高めています。特に、新卒社員には企業文化を理解しやすくするために、定期的にミーティングなどを設け、企業文化の醸成に務めています。

かゆい所に手が届くような世界基準の高品質サービスを目指す

ーー今後の展望について聞かせてください。

原岡昌寛:
現在は、カナダのトロントと中国の深圳に拠点を設立し、海外展開を進めています。円安の環境下において海外で収益を直接上げることが重要です。カナダでの営業活動にはすでに着手していますが、現時点で、自立する段階には至っていません。

事業展開においては、日本で開発された技術やシステムを海外市場に適応させることを計画しています。国内外の顧客が求める製品を把握し、GoogleやAmazonのような大手企業が求めるプロダクトレベルのサービス品質を目指します。

また、製品やサービスをパッケージ化し、国際市場で競争力のあるポジションを築くことを目指しています。実際にそのポジションを築くには、現地での販売戦略を含め、適切なマーケティングと顧客サービスの構築が必要です。

各地の時差をうまく活用したグローバルな運用体制を計画しています。イメージとしては、世界の3つの主要なタイムゾーンに対応できる、24時間体制のサービス提供です。それを実現するために、欧州や北米西海岸での拠点設立も検討しています。

編集後記

新卒エンジニアとして英会話会社の勤務を経て、さらなる技術革新を探求する原岡社長。今後は、クラウドサーバー関連の事業にフォーカスしてよりグローバルな展開を目指すという。ビヨンドのとどまるところを知らない事業戦略を含めて、今後どのような展開になるか注目し続けたい。

原岡昌寛/愛知県出身。同志社大学経済学部を卒業。2001年、株式会社NOVA(現NOVAホールディングス株式会社)でインフラエンジニアとして従事。2007年、株式会社ビヨンドの創業に参画。その後代表取締役に就任。「共に創り支え続ける」の理念のもと、IT業界の縁の下の力持ちとして24/365のマルチクラウドでのインフラの構築・運用とサーバサイド開発を行う。