※本ページ内の情報は2024年6月時点のものです。

コロナウイルス感染症の流行により、おうち時間が増え、自宅で菓子を楽しむ人も増えただろう。さらに、健康や食の安全に対する人々の意識も変わったのではないだろうか。

今回は「美味しく、安全で安心して食べられるお菓子」の製造を目指すニッポー株式会社に注目した。同社の代表取締役である青木健文氏に、就任後の苦労や会社の強み、今後の事業展望などについてうかがった。

両親の独立を後押しした大学生時代

ーーどのような経緯で貴社に入社しましたか?

青木健文:
弊社は製菓材料会社で働いていた父が「商品を企画販売する仕事がしたい」という思いで、私が大学2年生の時に創業しました。その当時、起業について相談されましたが「やりたいことがあるなら、やった方が良い」と、背中を押しました。父としては、その時から「将来は息子と一緒に仕事をしたい」と思っていたそうです。

家業の影響もあり食品に興味を持っていたので、大学では食品工学を専攻しました。大学卒業後は大阪の製菓企業や原料問屋に勤務し、菓子業界のいろはを学び、いろいろな経験を積んでから弊社に入社しました。

ーーどのような経緯で代表に就任したのかを教えてください。

青木健文:
大阪で修業したことにより、ある程度は食品に関する知識が備わりました。入社後は営業活動を中心に行い、大阪で働いていた経験から西日本方面を担当しました。その後、営業部長になり、専務を経て代表取締役に就任しました。

一度諦めてもその後の行動が成長のカギに

ーー入社後や代表取締役就任後に苦労したエピソードがあれば聞かせてください。

青木健文:
弊社は、既存商品のパッケージングやセットアップ加工などの企画販売業務をメインで行っていました。特にバレンタイン専用のチョコレート企画は大変好調で、弊社の主力商品となりました。しかし年々バレンタイン商戦が激しくなって、大手各社が競合する市場になると将来性がないと感じました。

ーーどのようにして乗り越えましたか?

青木健文:
クリスマスやひな祭りなど、バレンタイン以外のイベントに向けて企画販売を行いましたが、どれも一時的なものでしかありませんでした。

今後の経営を考えた時にお菓子の詰め合わせに辿り着きました。詰め合わせはゴールデンウィーク・夏休み・秋の行楽・年末年始といった繁忙シーズンだけでなく、スポーツやコンサート、地域や企業のイベントなど一年を通して需要があります。加工所と人手も確保できていたので、すぐに新事業を始めることができました。

この詰め合わせが軌道にのると、もっと中身のバリエーションが欲しいという注文が増えました。それならば、いっそのことすべてを内製化してみようと、スナック菓子製造への参入を決断しました。

当時の最新機器を購入して始動しましたが、はじめは食感が悪かったり、味ムラがひどかったり、なかなか納得のいくものができませんでした。何度も失敗し、試行錯誤を繰り返し、約半年を費やしてやっと理想のスナックが完成。お客様から美味しいとお褒めの言葉をもらった時は嬉しかったですね。

スナック菓子製造会社となって約20年になりますが、常に進化したスナック菓子を提供できるよう日々研究開発を続けています。弊社の安心安全で美味しいお菓子で、食べてくださる方が幸せな気持ちになっていただけたら、私たちも幸せです。

安定の製品ラインナップ!新たな挑戦とメッセージ

ーー貴社の強みはどのようなところにあると思いますか?

青木健文:
とうもろこしを主原料とした「スナック菓子をつくる・蜜炊きをしてシロップをかける・チョコレートを染み込ませる」という3種類のラインを持っているところが強みです。甘いものでも、しょっぱいものでも、臨機応変に対応することができます。

多品種小ロットでの生産が可能なところも強みですね。イメージに近いフレーバーを提案できるので、観光地やテーマパークのお土産品、コンセプトに沿った限定品など、OEM商品を製造できることも強みとして挙げられます。

ーー今後、挑戦してみたい商品はありますか?

青木健文:
主原料がとうもろこし以外の商品を開発中で、大豆を主原料としたスナック菓子『プロテインソイチップス』という商品を弊社のサイトで販売しています。

今後はお米など、いろいろな素材を使用したスナック菓子を自社製品として販売したいです。ジャンクフードと呼ばれているスナック菓子が、罪悪感なく食べられるようになれば良いなと思っています。

ーー20代、30代の方々へ向けてメッセージをお願いします。

青木健文:
20代、30代のうちは何事にもチャレンジして、さまざまな経験をしてもらいたいです。常に向上心をもって、今の自分に何かプラスしていくイメージで行動することも大切だと思います。

若い頃の失敗は生涯の財産となることが多いと思います。いろいろな経験を経て、守る部分と挑戦する部分のバランスが取れるようになると良いですね。

編集後記

時代の流れとニーズを即座に読み取り、新たな事業への参入を決めた青木健文代表取締役。その決断力には、大学卒業後にあえて外に出て、他企業で修業したという経験が活かされているのかもしれない。

今後、どのような商品を世に送り出してくれるのか、ニッポー株式会社の動向に注目したい。

青木健文/1960年生まれ。日本大学農獣医学部食品工学科を卒業後、大阪の製菓企業、原料問屋で修行し、ニッポー株式会社へ入社。2007年に同社代表取締役に就任。船橋経営者協会や鎌ヶ谷市商工会の活動にも参加している。