進まないデジタル化や人手不足など、多くの問題を抱える物流業界。そんな物流業界の課題を、テクノロジーを活用して解決しようと取り組んでいるのが、X Mile株式会社だ。
物流業界を中心としたノンデスク産業に特化した同社のプラットフォームには累計約50万人の会員が登録しており、物流業界で働くドライバーの2人に1人が登録しているという。
今や組織体制が300人を超え、世の中に必要不可欠なインフラ産業を支えている同社だが、どのように成長してきたのか、代表取締役CEOの野呂寛之氏に取材した。
成長余地のある物流業界向け事業にチャンスを見出す
ーー創業の経緯を教えてください。
野呂寛之:
スタートアップ企業の新規事業を中心に10以上のプロジェクトに関わり、スタートアップで働くことが楽しく、なおかつ新しい産業を創造していくという点で日本の未来のためになると感じていました。
また、スタートアップで働いていると周囲に起業する人が多く、私自身も「起業するなら歴史に残るような大企業をつくりたい」と考えるようになりました。この「大企業をつくる」という前提から、現在の事業に辿り着きました。
ただ、まずはどの業界に参入するかを決める前に、各業界について研究する必要があったので、インターン生を採用して半年ほどいろいろな業界についてひたすらリサーチや営業活動をしていましたね。
ーー現在の事業を選んだ決め手は何ですか。
野呂寛之:
スタートアップ企業で働いていたとき、海外で製造業を立ち上げて私自身もワーカーと一緒に工場で作業、トラックに荷物を積み込むなど、泥臭い業務に携わっていました。
そのときの経験もあり、物流といったインフラ産業の課題は、日本だけでなくグローバルでも大きな社会課題であり、解決しなければならないことだと感じました。また、お客様や業界課題を解決する一方で利益を出す、つまり「勝つ」事業を選ぶことも大切だと理解していました。
この「社会課題の解決」と「勝つこと」の両立を考えた結果、現在の事業に辿り着いたのです。物流は20兆円を超える巨大産業でありながら、まだ業務効率化が進んでいるとは言えません。そこに可能性を感じたのも、物流業界を選択した理由です。
苦労したのは人材、面白さを感じるのも人材
ーー創業後に苦労したことを教えてください。
野呂寛之:
最も苦戦したのが採用面です。当時は会社の実績もなければ業界も地味ですし、入社希望者がなかなか集まりませんでした。結果的には初年度に新入社員を8人ほど一気に採用できましたが、創業当初は採用の厳しさを感じていましたね。
ーーそのような苦労をする中で、経営者になって良かったと感じたことはありますか。
野呂寛之:
新しく入社した人が育って、成長していく過程を見られるのは経営の面白さだと感じています。私自身、社員が変化して成長する姿を見るのが好きですし、視座が高くて前向きな方が会社に入ってくれると、とても楽しいですね。
また、弊社のお客様が初めてドライバー数の純増を実現できたとおっしゃってくださったときは、非常に嬉しく思いました。他の採用ソリューションと比べて、弊社のサービスを通して採用した場合の離職率は低く、企業様にも喜んでいただいています。
新卒からしっかりと育成することで強い組織に
ーーほかのサービスについても教えてください。
野呂寛之:
弊社はHRプラットフォーム事業を祖業としており、もう1つの事業として「ノンデスク事業者向けのソフトウェアサービス」も提供しています。労務管理や業務管理など、総合的な課題解決を行うソリューションで、なおかつクラウドで簡単に始められるサービスとなっています。
(※)サービス詳細
・HRプラットフォーム「X Work」
・物流業界向けクラウド「ロジポケ」
ーー会社としての、その他の強みについても教えていただけますか。
野呂寛之:
弊社の強みの1つは、組織やオペレーションの仕組み化や設計を創業期から積極的に取り組んできていることです。会社のミドルマネジメントを中心に、全社員がやりがいを持って働ける環境をつくっています。
また、研修や教育の重要性を理解し、新卒や第二新卒からしっかりと社員を育ててきたのも弊社の強みです。新卒採用に関しては、インターンシップのときに、実際に事業を考えてもらって、経営チームがフィードバックをするという取り組みも行っています。
成長に大切なのは「小さな一歩を踏み出す」こと
ーー貴社で働く魅力と若手へのメッセージをお願いします。
野呂寛之:
弊社には事業を0から1にする業務もあれば、1から10にするものもあります。もちろん、10を100にするような社会にインパクトを強く与えられるような事業もあります。いろいろなステージの事業を経験でき、柔軟なキャリアパスを描くことができるのが魅力です。
チームワークも良いですし、私自身も社員と飲み会をするなど、よく交流しています。社員から「入社して良かった」と言われてとても嬉しかったです。
若手時代においては、小さくチャレンジすることが大切だと思っています。日本にはハングリー精神を持った人が足りませんし、まずは小さな一歩を踏み出すことが重要です。
編集後記
野呂社長は、「社員との交流や会社での出来事など、内部に原動力を持つタイプ」だという。社長が積極的に部活動や飲み会に参加するため、社員にとっては社長の気持ちや考えをダイレクトに聞くことができる機会が多い点も、X Mileの魅力の1つといえよう。
今後もモビリティ分野や、海外への拠点づくりなど、積極的に新たな挑戦をしていきたいと野呂社長は語る。X Mileがこれからどのように事業領域を広げていくのか。急成長する同社を今後も追いかけていきたい。
野呂寛之/北海道生まれ、国際基督教大学卒。テラモーターズ株式会社ベトナム支社にてジョイントベンチャー(合弁会社)の立ち上げに参画し、カンボジア拠点長を経験。帰国後、当時ユニコーン企業だったメガベンチャーの新規事業室の担当を経て、株式会社ペイミーの創業に2番目の社員として参画。取締役COOとして事業と組織を牽引後、X Mile株式会社を設立し、代表取締役CEOに就任。