※本ページ内の情報は2026年8月時点のものです。

進まないデジタル化や人手不足など、多くの問題を抱える物流業界。この課題を、テクノロジーで解決すべく取り組むのが、X Mile株式会社だ。物流業界を中心としたノンデスク産業向けのプラットフォームは、登録者数120万人を突破し、急速な成長を遂げている。組織体制は600名規模へと拡大し、世の中に不可欠なインフラ産業を支える存在へと進化している。令和を代表するメガベンチャーを目指す同社の代表取締役CEO、野呂寛之氏に、事業の現在地と今後の展望について話を聞いた。

成長余地のある物流業界向け事業にチャンスを見出す

ーー創業の経緯をお聞かせください。

野呂寛之:
スタートアップ企業の新規事業を中心に10以上のプロジェクトに関わり、スタートアップで働くことが楽しく、なおかつ新しい産業を創造していく点で日本の未来のためになると感じていました。

また、スタートアップで働いていると周囲に起業する人が多く、私自身も「起業するなら歴史に残る大企業をつくりたい」と考えるようになりました。この「大企業をつくる」前提から、現在の事業に辿り着きました。ただ、まずはどの業界に参入するかを決める前に、各業界について研究する必要があったので、インターン生を採用して半年ほどいろいろな業界についてひたすらリサーチや営業活動をしていましたね。

ーー現在の事業を選んだ決め手は何ですか。

野呂寛之:
スタートアップ企業で働いていたとき、海外で製造業を立ち上げて私自身もワーカーと一緒に工場で作業し、トラックに荷物を積み込むなど、現場の業務に携わっていました。そのときの経験もあり、物流といったインフラ産業の課題は、日本だけでなくグローバルでも大きな社会課題であり、解決しなければならないことだと感じました。

また、お客様や業界課題を解決する一方で利益を出す、つまり「勝つ」事業を選ぶことも大切だと理解していました。この「社会課題の解決」と「勝つこと」の両立を考えた結果、現在の事業に辿り着いたのです。物流は20兆円を超える巨大産業でありながら、まだ業務効率化が進んでいるとは言えません。そこに可能性を感じたことも、物流業界を選択した理由の一つです。

苦労したのは人材 面白さを感じるのも人材

ーー創業後に苦労したエピソードについて教えてください。

野呂寛之:
最も苦戦したのが採用面です。当時は会社の実績もなければ業界も地味ですし、入社希望者がなかなか集まりませんでした。結果的には初年度に新入社員を8人ほど一気に採用できましたが、創業当初は採用の厳しさを感じていましたね。

ーーどのようなときに経営者になって良かったと感じますか。

野呂寛之:
新しく入社した人が育って、成長していく過程を見られるのは経営の面白さだと感じています。私自身、社員が変化して成長する姿を見るのが好きですし、視座が高くて前向きな方が会社に入ってくれると、とても楽しいですね。また、弊社のお客様が初めてドライバー数の純増を実現できたとおっしゃってくださったときは、大変嬉しく思いました。他の採用ソリューションと比べて、弊社のサービスを通して採用した場合の離職率は低く、企業様にも喜んでいただいています。

HR領域とSaaSの両輪展開と新卒から育てる強い組織に

ーー貴社が提供するサービスについてお聞かせください。

野呂寛之:
弊社はHRプラットフォーム事業を祖業としており、もう1つの事業としてノンデスク事業者向けのソフトウェアサービスも提供しています。労務管理や業務管理など、総合的な課題解決を行うソリューションで、なおかつクラウドで簡単に始められるサービスとなっています。

(※)サービス詳細
・HRプラットフォーム「クロスワーク
・物流業界向けクラウド「ロジポケ

ーー会社としての強みについても教えていただけますか。

野呂寛之:
弊社の強みの1つは、組織やオペレーションの仕組み化や設計を創業期から積極的に取り組んできていることです。会社のミドルマネジメントを中心に、全社員がやりがいを持って働ける環境をつくっています。また、研修や教育の重要性を理解し、新卒や第二新卒からしっかりと社員を育ててきたのも弊社の強みです。新卒採用に関しては、インターンシップのときに、実際に事業を考えてもらって、経営チームがフィードバックをする取り組みも行っています。

成長に大切なのは「小さな一歩を踏み出す」こと

ーー若手時代に大切にすべきことは何だとお考えですか。

野呂寛之:
弊社には事業を0から1にする業務もあれば、1から10にするものもあります。もちろん、10を100にする社会にインパクトを強く与えられるような事業もあります。さまざまなステージの事業を経験でき、柔軟なキャリアパスを描けるのが魅力です。チームワークも良いですし、私自身も社員と懇親会をするなど、よく交流しています。社員から「入社して良かった」と言われたときは、とても嬉しかったですね。若手時代においては、小さくチャレンジすることが大切だと思っています。日本にはハングリー精神を持った人が足りませんし、まずは小さな一歩を踏み出すことが重要です。

登録者数120万人に到達しメガベンチャーへの道を歩む

ーー現在の事業の成長スピードについてどのようにお感じですか。

野呂寛之:
おかげさまで、登録者数は120万人を超え、社員も600名規模となり、ここ数年で2倍以上の規模へと急成長を遂げています。直近2年間で400名を増員し、現在は1000名に向けた組織の拡大期にあります。しかし、私たちが目指しているのは令和を代表するメガベンチャーをつくることであり、ノンデスク産業のインフラとなる存在になることです。そこに対してはまだ道半ばだと捉えていますので、さらなる成長ができると確信しています。

ーー事業規模の目標について教えてください。

野呂寛之:
2040年までに時価総額1兆円の規模を目指しており、日本における大企業クラスの会社を想定しています。創業からおよそ20年間での到達を野心的な目標としています。上場については資金調達の手段であり通過点だと捉えており、目的はあくまで巨大な社会課題の解決にあります。ただ、資金調達の環境が変化する中で、上場企業の方がM&A戦略も加速しやすく、採用面でも有利に働くため、事業の成長において有益であれば選択肢に入ります。

現場主義の営業力とSaaSの融合で物流の課題を解決

ーーサービスが業界内で広く普及した要因は何だとお考えですか。

野呂寛之:
私たちのサービスは、トラック10台規模の会社から国内最大規模の物流の上場企業まで、幅広く利用していただいています。普及の背景には、テクノロジーを活用する一方で、電話営業やファックス、現場イベントへの参加など、アナログな業界に深く入り込む地道な開拓を徹底している点があります。テクノロジーに強く、かつ泥臭い営業もできる会社は多くありません。そこが私たちの大きな強みであり、新しいブルーカラー領域のお客様を獲得できている理由です。

ーー現在のお客様が抱えている課題にどのようにアプローチしていますか。

野呂寛之:
人材紹介事業を通じて現場のリアルな人手不足やアナログな慣習を把握し、即座にプロダクトへ反映させる開発サイクルを回しています。私たちが多くのドライバーをご紹介したことで稼働率が上がり、売り上げを回復させた企業様も多くいらっしゃいます。

一方で中長期的な視点では、人材紹介だけでなく、クラウド化によるソフトウェアの提供や事業承継のマッチングなど、複合的な支援を行っています。これにより、単なる効率化ソフトではなく、法改正に伴う2026年問題(※1)のコンプライアンス対応や荷主の義務化を支える物流DXのフロントランナーとして機能しています。

(※1)2026年問題:働き方改革関連法に端を発する人手不足に加え、法改正による荷主の義務化やコンプライアンス強化が求められることで生じる物流業界のさらなる課題。

経営者が採用にコミットし自分より優秀な人材を集める

ーー急成長する組織において人材採用で意識されていることは何ですか。

野呂寛之:
採用において最も重要だと考えているのは、自分よりも優秀な人材を採らなければならないことです。経営チームの成長が停止し、組織が停滞していくことが一番のリスクになります。そのため、私自身も時間の大多数を採用に使っています。経営人材のリファラル採用をはじめ、自らスカウトを送り、採用のための会食や最終のクロージングにも入ります。大手企業に経営資源や知名度で対抗するには、経営者が先頭に立ち、ビジョンを語ることが不可欠です。

ーー社員が中長期で活躍できるための取り組みについて教えてください。

野呂寛之:
キャリアアップできる環境を提供することを大切にしています。創業1期目から新卒を8名採用しており、新卒でも未経験でも役員や社長を目指せる抜擢文化が、人材不足の時代には強い武器になります。また、多様なバックグラウンドを持つ異質な人材が活躍できるよう、特定のポジションがなくても私が直接稟議を通し、その人の能力に合わせてポジションを新設する柔軟な対応をしています。一人ひとりが能力を発揮できる組織づくりを進めています。

徹底した情報共有とAI活用で熱量のある組織をつくる

ーー組織が急拡大する中でエンゲージメントを高める工夫はありますか。

野呂寛之:
経営層と現場とのウェットなコミュニケーションを何よりも大事にしています。毎週私から週報を全社員に公開し、全社に向けた定例会議や半期に一度の総会を実施しています。また、YouTubeやSNSなどを駆使し、社内外に向けた情報発信を行っています。現場との交流としては、トップの人材と食事に行く「MVPご飯会」や「経営合宿」、教育制度である「トレセン」など、急拡大期でも組織の熱量を下げないための、人と人とのつながりを重んじる施策を心がけています。

ーー最新技術を社内に取り入れるためにどのような施策を行っていますか。

野呂寛之:
「トップが言わなければ変わらない」という信念のもと、AIプロジェクトを全社で推進し、機会損失を防ぐスピード感を重視しています。最近では、社内でAIハッカソンを開催し、AIを活用した業務効率化や新規事業のアイデアを募ったところ、大量の応募があり大いに活気づきました。最新技術を現場に導入する際は、流行にとらわれず、お客様が何に困っているかを第一に考え、実用性の高い機能から提供を始めています。

三方よしを実現しノンデスク産業のインフラとなる

ーー今後10年の間に業界内でどのような存在になっていきたいとお考えですか。

野呂寛之:
日本の停滞した30年を打破し、民間企業の力でノンデスクワーカー領域の負を解消する存在になりたいと願っています。国内に約3900万人いるとされるこの領域の課題を解決することは、極めて意義のあることです。非営利組織では解決しきれない問題を、ビジネスとして三方よしの状態で社会に実装していくことが重要です。社会課題をテクノロジーとビジネスの力で解決し、業界を持続可能な状態にしていきます。

ーー事業を通じて社会にどのような価値を提供していきたいですか。

野呂寛之:
ブルーカラー領域におけるリクルートのようなプラットフォームになることを目指しています。物流業界で確固たる基盤を築いた後は、建設や製造、警備などブルーカラー全体に事業を広げ、将来的にはグローバル展開も見据えた産業のインフラとしての役割を担いたいです。業界を変える挑戦を続けることで、働く人々の給与を上げ、収益性を高める流れをつくっていく覚悟です。社会にインパクトを与え、歴史に残る会社をつくるために、これからも全力で事業に取り組んでいきます。

編集後記

野呂氏は、社員との交流など内部に原動力を持つ経営者だ。トップ自らが採用にコミットし、現場の最前線にも立ち続ける姿勢が、急拡大する組織の熱量を力強く支えている。時価総額1兆円という野心的な目標へ向かって突き進む根底には、社会課題の解決に対する揺るぎない使命感がある。2026年現在も加速し続ける同社の挑戦は、日本の未来を大きくアップデートしていくに違いない。さらなる飛躍から目が離せない。

野呂寛之/北海道生まれ、国際基督教大学卒。テラモーターズ株式会社ベトナム支社にてジョイントベンチャー(合弁会社)の立ち上げに参画し、カンボジア拠点長を経験。帰国後、当時ユニコーン企業だったメガベンチャーの新規事業室の担当を経て、株式会社ペイミーの創業に2番目の社員として参画。取締役COOとして事業と組織を牽引後、X Mile株式会社を設立し、代表取締役CEOに就任。