※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

高齢化社会が進む日本は、認知症による資産凍結という社会課題を抱えている。認知症患者は2020年時点で約630万人だったが、2050年には1,000万人を超えると推計されている。(※)

そんな中、株式会社ファミトラは資産凍結リスクという闇を打ち破るべく、家族信託の力を振るう。「家族信託を、あたりまえに。」というビジョンを掲げる同社は、どのようなサービスで日本の高齢化に立ち向かっているのか。そして、彼らの使命とは。今回は代表取締役CEOの三橋克仁氏が、その一端を明かす。

(※)参考:内閣府「平成29年度版高齢社会白書」

革新的な家族信託サービス「ファミトラ」

ーー貴社の事業内容を教えてください。

三橋克仁:
認知症による資産凍結などの対策として、家族信託の組成をサポートする事業をしています。従来、この問題への対策は、成年後見制度一択でしたが、非常に複雑で使いにくいものでした。そこで、私たちは新たな選択肢として家族信託に着目したのです。

家族信託は合理的な仕組みですが、時間と費用がかかるという課題があります。そこで、ITの力を活用し、誰でも手軽に家族信託を組成できる「ファミトラ」というサービスを誕生させたのです。家族信託は英語で「ファミリートラスト」といいますが、それを省略して「ファミトラ」という社名に決めました。

ーー貴社の強みや特徴はどういったところだと考えていますか?

三橋克仁:
1つ目は、コストパフォーマンスの高さです。DX推進によって社内業務を効率化し、業界トップクラスのサービス品質やきめ細かいサポートをお客様に提供しています。

2つ目は、契約書の締結を司法書士ではなく弁護士に委託していることです。他社では司法書士に任せているところもありますが、慣れていない人が担当したことによって契約が無効になる判例もいくつかあります。そのため、弊社では契約書作成は全て弁護士に依頼しているのです。

3つ目は、信託監督人として資産管理をサポートしていることです。私たちは信託監督人という立場で、子どもが親から託された資産の管理を、継続的にサポートさせていただいています。通常このサービスには約1〜2万円かかりますが、弊社は無償で全てのお客様に資産管理サポートのサービスを提供しています。これは他社には真似できない、弊社独自の仕組みだと胸を張っていえます。

ーーなぜ他社には真似できない仕組みをつくることができたのでしょうか?

三橋克仁:
当時、見向きもされていなかった家族信託の市場に着目し、特化した事業を始めたこと、それが成功の要因でした。また、社員数が少ない段階から、日本で指折りの、信託法に詳しい弁護士に助けられるなど、優秀な人々に巡り会えました。彼らの存在が、事業の成長に大きく関係しています。

そして、その市場価値の高さや、事業の推進力が優れたメンバーとポテンシャルを持つ会社であることが投資家に高く評価され、資金調達も順調に進みました。

ーー「ファミトラ」で世の中にどのような影響を与えたいと思いますか?

三橋克仁:
皆が家族信託を当たり前の選択肢と考え、広く利用する社会を目指しています。たとえば、車や家を買うときに、リスクに備えて自動車保険や火災保険に入る人は多いですよね。

家族信託も認知症による資産凍結という経済的リスクを防ぐサービスであり、保険などと同様に、多くの人に利用していただきたいですね。

BCIの黎明期到来に向け、シニアから信頼される会社を創業

ーー貴社は三橋CEOが2社目に創業した会社ですが、何がきっかけだったのでしょうか?

三橋克仁:
もともとエンジニアだった私は、技術に強い関心を抱いていました。そして、2018年の終わりごろにBCI(※)に興味を持ったのです。

前の会社が一区切りついたタイミングだったので、「BCIに取り組む中国の会社を訪問しよう」と決めました。そこでは、BCIの最先端技術を体験するチャンスがありましたが、その体験によって、「脳からの信号の精度をさらに上げるためには、頭蓋骨に穴を開けて脳に剣山のような装置を入れなければならない」という現状を目の当たりにしました。

「そのようなリスクを背負う技術はどこに需要があるのか」と考えたとき、シニアが孫とコミュニケーションをとるために、ペースメーカーを入れるような覚悟でBCIを利用する可能性があるのではないか、という大胆な仮説を立てました。

また、BCIの黎明期が訪れたときに「この会社が出したサービスなら試してみよう」などとシニアから信頼される事業・会社を今から立ち上げておきたいと思うようになったのです。

その後、2019年に日本に帰国し、「シニア×IT」という方向で先進国の日本が抱えるシニアの課題に対応する事業を展開しようと決意し、弊社を誕生させました。

(※)BCI:ブレイン・コンピューター・インターフェース。脳の活動を使ってコンピューターやデバイスを操作する医工学技術。たとえば、脳波を使ってコンピューターゲームをプレイしたり、身体の動きが制限されている人がコンピューターを操作したりするのに使われる。

ーー創業時はどのようなことに苦労しましたか?

三橋克仁:
家族信託は私たちが初めて着目したビジネスモデルだったので、市場に展開していくことが困難でした。信託の実務については全くの素人だった状態から、手探りでビジネスフローを組み立てていきました。

弁護士も在籍していましたが、彼らはビジネスパーソンではないので、誰も知見を持っていない状況でビジネスフローの組み立てを模索しなければならず、とても苦労したものです。

取引先の拡大や上場に向けた、体制強化

ーー事業をさらに成長させるために、今後はどのようなことに注力していきますか?

三橋克仁:
弊社の顧客となり得る高齢者向けのビジネスを展開している会社と、保険の分野に限らず、連携を広げていきたいと思っています。

信託は自由度がとても高い制度なので、さまざまな業界と組み合わせていきたいですね。そのためには、営業部門の体制強化が不可欠です。今までは私が率先して、大手保険会社を中心に提案していました。今後は私個人の感覚やセンスに頼らず、誰であっても再現性の高い営業を行うチームとして、活動を展開していきます。

また、管理体制も強化していきたいと考えています。近い将来、上場することを目指しており、その準備のためにも管理体制の構築を進めていきたいですね。

求めるのは“ロマン”、“算盤”、“自慢”を持った人材

ーーどのような人に入社してほしいと思いますか?

三橋克仁:
お金に縛られずに面白い仕事をやりたいという“ロマン”と、仕事を進めるのに必要な“算盤”、胸を張れる仕事ができる“自慢”という3つの要素を持った方に入社してほしいですね。

私たちはスタートアップ企業として、常識にとらわれずに想定外のアイデアを実行してくれる人を歓迎します。そのような人材がいることで、私も刺激を受けて「さらに頑張ろう」という気持ちになれるからです。

ーー最後に、若手人材に向けてメッセージをお願いします。

三橋克仁:
起業を考えている方には、スタートアップのような小さな会社で経験を積むことをおすすめします。小さな会社は環境が整っていないことが多いので、実際の経営を身をもって体験することができるからです。そこで得られる経験と知識は、将来的に起業家として成功するために不可欠なのです。

もし、そのような起業の疑似体験を求めて弊社に興味を持った方がいれば、是非応募をお待ちしています。

編集後記

「事業は大きくなってきたが、家族信託を当たり前にするという目標は1%も達成していない」と語る三橋CEO。高齢化が進む日本において、その問題解決に貢献するファミトラのような企業は、今後さらに必要な存在になると感じた。

三橋克仁/2012年、株式会社manabo創業、オンデマンド個別指導アプリ「manabo」を自ら開発、ベネッセ、Z会など、国内大手各社との業務資本提携を主導。2018年、このサービスを駿台グループに売却。2019年、AgeTech領域に着目。信託DXで家族の資産に関わる課題を解決する株式会社ファミトラを創業し、代表取締役CEOに就任。