※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

カメラや家電を気軽にレンタルできるECサイト「Rentio(レンティオ)」。2015年の創業以来、「気になる商品を試してみたい」という消費者のニーズに応えてきた。レンタル事業としての構造はシンプルながら、このサイトがレンタル業界でひときわ存在感がある理由はなぜか。代表取締役社長の三輪謙二朗氏に事業の裏側をうかがった。

需要の変化を読み取って成長してきたレンタルサービス事業

ーー創業から現在に至るまでの経緯をお聞かせください。

三輪謙二朗:
弊社はカメラのレンタル事業からスタートしました。創業当時は、スマートフォンの普及によってカメラのニーズが落ちる一方で、「大事な場面は良いカメラで撮りたい」と思う人が増えていました。とはいえ買うのはもったいないという状況が生まれ、レンタルのニーズが上がったのです。

その後は、高級家電など、取り扱いジャンルを広げていきました。そして、レンタルサービスがあることで商品の購入量がどう変化するのかを分析した結果、レンタルする人が増えれば購入者数も増えることがわかり、驚きました。商品を試せることは、取引先にあたるメーカーにとっても非常に良いことだと確信しました。それを機に、自分の中でも、事業に対する思いが徐々にレベルアップしていった気がします。

ーー事業を進めていく中で、ターニングポイントはありましたか?

三輪謙二朗:
外出が制限されたコロナ禍では、カメラのレンタル数が激減するという困難に直面しましたが、キッチン・美容家電など、取り扱いジャンルを広げたことで新たな利用者を得ることができ、事業を成長させることができました。

また、もともとは大量の在庫を保有してレンタルしていましたが、メーカーに在庫を預けていただき、レンタル料金の一部を還元するというビジネスモデルを始めてからはキャッシュフローも良好となりました。

ITシステムで差をつけ、「頼れるプラットフォーム」の構築へ

ーー貴社のサービスの強みは何でしょうか。

三輪謙二朗:
独自のシステムやカスタマーサポートが大きな強みです。ジャンルの異なるお問い合わせに素早く対応できるのは、オペレーターの数が圧倒的に多いからです。細やかな製品メンテナンスやお客様対応が、顧客満足度の高さにつながっています。

現在6000種類・19万点ほどの在庫がありますが、レンタルビジネスは在庫の稼働率を維持することが大切です。レンタル価格やサイト上で展開する場所を、ジャンルごとにコントロールしている点も強みの一つと言えます。

ーー事業を成長させるために行っている取り組みを教えてください。

三輪謙二朗:
「買う前に借りる」という新しい消費行動をさらに広めるためには、「レンティオ」というサイトにこだわらなくても良いと考えるようになりました。メーカーがレンタル事業を始める際に、レンティオと連携するだけではインパクトが弱い側面があります。そこで、「メーカーの看板を掲げた新規事業」として世間に印象づけたい企業のレンタル事業を、裏側からサポートする取り組みを始めました。

2024年4月にリリースしたサービス「Rentify(レンティファイ)」は、弊社のノウハウを詰め込んだレンタルECサイト構築のプラットフォームです。レンタル事業のシステムを企業が一から作るには数億円を必要とするため、「Rentify」を活用することで開発費用を大幅に抑えられると思います。

ユーザーを第一に考え、メーカーとWIn-Winの関係を築きながら事業を展開

ーーメーカーと力を合わせて解決したい課題はありますか?

三輪謙二朗:
大量生産・大量消費・大量廃棄が定着していた家電業界が、徐々に変わりつつあります。使用頻度の低い商品まで売り、結果としてユーザー満足度も低くなるという状況からメーカーは抜け出すべきです。本当に良いものだけが提供され、優れた製品を求めるユーザーにきちんと行き渡る世界を作ることが目標です。

消費行動の変化はメーカーにとってもメリットがあります。1つの商品を3人にレンタルしてもらえれば、販売するよりも収益を得られるのです。レンタルサービスのメリットを発信し、経営判断をガラッと変えるメーカーを増やしたいと思います。

ーー今後のビジョンや、事業に対する思いをお聞かせください。

三輪謙二朗:
ユーザー数が現在の100万人を超えた程度では「消費行動を変えた」とは思えません。昔は家電が欲しい時には量販店へ行きましたが、今はネット通販やフリマアプリでの購入が主流です。「それらの次の選択肢にレンティオが来る」というレベルに到達したいと思っています。

5年後のユーザー数が500万人を超えれば、「新しい消費行動」が当たり前な世界に近づいたと言えるでしょう。ユーザーを増やすためにもサービスの存在を広め、より多くのメーカーと共業関係を築いていくことが重要ですね。

購入前に製品を試すことで、本当に自分に合うものが見つかります。無駄な買い物をなくすことで人生がより豊かになるでしょう。「試してから買う」という消費行動が当たり前になれば、ユーザーのことを考えていない商品は淘汰されていくはずです。

「返却作業が面倒くさい」と感じる方もいますが、レンティオの返却システムはとても簡単で郵便局・コンビニ・宅配便ロッカーなどに対応しています。非常に良いユーザー体験を提供しているという自信があるので、まずは一度サービスを利用していただけると嬉しいですね。

編集後記

「自分にとって不要な物は買わなくて良い」と語った三輪社長。メーカーにとっては気に障る話かもしれないが、レンティオが目指しているのはメーカーと消費者の双方が満たされる世界だ。「購入前に試す」という消費行動が、ものづくりの未来にまで作用する可能性を実感させられた。

三輪謙二朗/1984年生まれ、東京都大田区出身。明治大学を卒業後、楽天株式会社に入社。楽天市場事業編成部モバイル推進グループにて、ECコンサルタント業務に3年携わったのち、家電EC企業を経て、2015年に株式会社カンパニー(現:レンティオ株式会社)を設立。