※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

医療・福祉分野を中心に人材派遣や学習・研修事業を展開している日本教育クリエイト。現在社長を務めている鳥居敏氏は、父である創業社長から経営のバトンを継いだ2代目社長。三幸グループの学校運営を柱に置きながらも、その事業の内実は時代とともに変化を繰り返してきたという。今回は鳥居氏の経営者としての歩みを中心に、未経験から挑んだ人材サービス提供の軌跡を取材した。

「父の会社を支えたい!」銀行での修業と会社継承への決意

ーーなぜ、大学卒業後に銀行に入社したのですか。

鳥居敏:
背景をお伝えすると、弊社はもともと父が創業した会社です。私のような2代目社長の場合、まずは同業他社で修業を積んでから自社に入社するパターンもありますが、弊社の場合はそれが有効に働かないことも多くあります。なぜなら、学校ごとに強い個性やカルチャーがあるため、他社での経験が自社の経営に活かせないことが多いからです。

その状況を前提に、将来会社を継ぐということを見据えたとき、「最初の就職では幅広い業種を知ることができる仕事が良いのではないか」と考えるようになりました。その点で検討した結果、多くの企業と取引をする「銀行が適切だ」と判断し、最初の就職先を決めたのです。

ーー「会社を引き継ぎたい」と考えたきっかけは何ですか。

鳥居敏:
私が小学生の頃、当時社長だった父が頻繁に「良い人材がいない」とつぶやいていました。当時は中小零細企業だったため、人材採用に苦労していたことは容易に想像がつきます。父は自身の右腕となる人材を求めていたのでしょう。そのような父の姿を幼少期から見ていたため、「将来は会社を継いでサポートしたい」と自然と考えるようになりました。

教育の先へ行く!会社の発展と学校法人という新たな挑戦

ーー貴社の事業内容やこれまでの歩みについて聞かせてください。

鳥居敏:
日本教育クリエイトの成り立ちをさかのぼると、主婦向けに医療事務の講座を提供したことが始まりです。そこから派生して、ビジネスマナーなど社会人の基礎力向上のための講座、パソコン教室、そしてペン字など、高校を卒業した方を主な対象として講座を広げていったのです。

当時は18歳の人口が増加を続けていた時代で、大学への進学率も低く、専門学校の事業が受け入れられやすい環境にありました。やがて事業が拡大し、校舎を東京、大阪、名古屋をはじめ全国に展開するようになったのです。

このような背景から、現在でも医療分野の学習支援や研修、そしてスキルをもった人材の派遣事業などを展開しています。

ーー貴社に入社されてから、どのような仕事を経験しましたか。

鳥居敏:
入社してからは、企画広報部に所属し、ウェブ媒体やホームページの作成、パンフレットの制作、新しい講座の企画など、学校法人のマーケティングに関わる業務を担当していました。また、入学者を増やすために、全国の高校を訪問してパンフレットを配布する活動にも力を入れました。

ーー専門学校を立ち上げた時の話を聞かせてください。

鳥居敏:
横浜リゾート&スポーツ専門学校と横浜ビューティーアート専門学校を立ち上げた際の話ですが、当時の私は責任者として学校を運営するのは初めてだったため、若手の優秀な社員を加えて一緒に運営を進めることにしました。

この頃に携わった仕事で印象深いのが、学生の管理や応募者の履歴管理などを行うシステムの構築ですね。当時はあらゆる部署が非常に忙しく、総務部や広報部からも担当者を派遣できない状態であったため、私自身がNECと協力してスクラッチからプロジェクトをつくり上げました。初めての試みだったため苦労もありましたが、そこから多くの学びを得ましたね。

ーー社長就任の経緯を教えてください。

鳥居敏:
学校運営に集中する日々を送っていた中、日本教育クリエイトが4年連続で減収減益となり、立て直しが必要という状況で、父から社長就任を打診されました。学校運営を一から学んだように、会社経営の基礎を学ぶところからスタートしました。

社長として会社を指揮する中で、時代の変化にも直面しましたね。たとえば、医療事務学習の需要は最盛期の1/3以下にまで低下しましたが、事業改革を行い、新たなビジネスモデルである育成型人材派遣事業などを確立し、乗り越えている最中です。

新たな事業展開に向けた取り組みと展望

ーー今後の事業展開において、どのようなところに注力したいですか。

鳥居敏:
派遣先や紹介先となる病院や介護施設との取引拡大に力を入れています。特に、多くの施設を有する大手企業との法人取引をさらに増やしていきたいですね。

また、提供するサービスの深化と開発にも取り組んでいます。現在、人材派遣、人材紹介、研修、コンサルティングの4つのサービスを提供していますが、病院や施設など多くの取引先では人材派遣と人材紹介の依頼が中心です。これらの取引先に研修という3つ目のサービスを提供する試みを始めています。

このサービスの当面の課題は営業担当者のスキルアップですね。特定のサービスに偏らず、トータルでお客様に価値を提供できる知識・技能を身につけることが重要です。

さらに、新規事業として、既存の教育事業に加えてITの育成型人材派遣にも注力していこうと考えています。また、教育以外の新しい商品やサービスも模索しており、教育に限定せず、多岐にわたる事業展開を行っていきたいですね。

編集後記

インタビューを通して印象的だったのは、鳥居社長の仕事を楽しむ姿勢だ。20代の頃は、一週間出張を続けて全国の高校へ宣伝活動に回ったこともあり、学校法人の運営では未経験の仕事にも取り組んできた。さまざまな事業に取り組む中で、失敗もたくさん経験したようだ。

過去の苦労も前向きに捉えて語れるのは、まさに仕事を楽しんでいるからだろう。教育という柱を支えに、今後も時代の変化を捉えながら活動を続ける日本教育クリエイトに今後も注目したい。

鳥居敏/1973年生まれ。法政大学卒業。2年間の銀行勤務を経て、1998年三幸グループへ入社。主にマーケティングを中心にキャリアを積む。通信制高校の立ち上げや、新分野の専門学校の設立などを行った。2015年より株式会社日本教育クリエイト代表取締役社長。