※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

競争が激しい通信インフラ業界において、1965年の創業から長く活躍を続ける株式会社三技協。主力は電気工事や通信工事だが、近年では電波を使わない通信システムやドローンを活用した再生可能エネルギー事業など、新しい技術やサービスで社会を支えている。

同社が顧客に信頼される理由の1つに、代表取締役社長の仙石泰一氏が大切にする「最適化」へのこだわりがある。仙石氏に、同社の強みと経営者としての価値観を聞いた。

会社員として充実している絶頂期に退職し社長の道へ

ーー今までの経歴と社長就任の経緯を聞かせてください。

仙石泰一:
三技協は祖父が創業者で父が2代目になりますが、私が子どもの頃、父はソニーでサラリーマンをしていました。大学卒業後に石油会社へ入社したのは、会社員の家庭で育ち、海外赴任をする父の姿を見て、私も海外と関わる仕事をしたいと思ったからです。

石油会社での仕事は本当に楽しく毎日が充実していました。目の前の課題を解決するだけでなく、次なる可能性をかけた新たな領域への取組みにも従事していました。この石油会社には11年間勤めましたが、父からの誘いがあり、悩んだ末2007年に退職。

「楽しかった」という達成感だけで終わっていたら、新たなことへの興味も、知らない業界で新たな学びを得ようとする意欲も湧かなかったかもしれません。

現状に満足することなく新たな目標を掲げ、常に向上心を持ち挑戦し続けていたからこそ、三技協という新しいステージに進むことが必然であるかのようで、最高のタイミングだと思いました。

入社後は子会社の社長を任され、経営管理や営業、マーケティングなど、幅広い業務を経験させてもらいました。この時の経験は、初めての業界でゼロからスタートする自分にとって新鮮な学びであったと同時に、組織を前進させる使命と責任を強く感じる瞬間でもありました。

常に「最適であり続けること」を目指すから顧客に信頼される

ーー事業内容について教えてください。

仙石泰一:
弊社は、無線技術を基盤とした情報インフラのプロフェッショナルとしてお客様の課題を解決するサービスを提供しています。三技協という社名には、無線・伝送・交換の通信事業における3技術全ての領域で協力できるという意味があります。主に携帯電話や衛星通信、企業内Wi-Fiやビーコンなど無線事業をコアビジネスとして展開し、総務省管轄のみならず防衛省、国土交通省管轄の仕事も行っています。

宇宙関連の事業も40年以上にわたり手がけており、弊社だけで地上局の設計・設備施工ができるということで、官公庁や政府関連機関の案件にも関わっています。たとえば、通信機器やアンテナ付帯設備の設置、資材調達、工事、メンテナンスなどを行っており、グループ会社の三技協イオスは人工衛星の打ち上げ支援事業にも参入しています。

また、昨今は割り当てられる周波数領域が逼迫しており、新たに参入できるスペースがほとんどありません。弊社は電波を使用しないLEDを光源とした可視光通信システムの事業にも力を入れており、光無線に情報を乗せて届けられる強みを最大限に活かしたサービスを提供しています。

そのほか、国が取り組むトラックドライバーの2024年問題(※)にも当社の技術が採用されています。2018年と2019年に、牽引する先頭車にのみドライバーを乗せ、電子牽引することで後続の車を無人化する実証実験が行われました。車両間の通信部分に弊社の光通信システムが使われ、実際に「プロジェクト期間中、通信がほぼ途絶えなかった」という評価をいただいています。

(※)2024年問題:トラックドライバーの労働時間に上限が課されることで発生するさまざまな問題。

ーー貴社ではどのような考え方を大切にしていますか。

仙石泰一:
私たちは「The Optimization Company」と自らを標榜しています。Optimization(最適化)は、通信業界ではよく使われる言葉ですが、無線通信という目に見えない世界での最高位の言葉と私たちは信じています。

最適な仕事をするためには、最適であり続けることを望まなければいけません。私たちはお客様にとって最適なサービスを提供できるよう常に努めていますし、それがお客様からの信用につながると考えています。

進化を続けるお客様と一緒に成長分野へ挑戦していくこと、お客様に負けないくらい技術を磨くことを大切にしています。

地域創生やスタートアップ支援を通して社会を下支え

ーー今後はどのようなことに注力していきたいですか。

仙石泰一:
地方創生の一役を担っている企業として、地域が何を解決したいのか、何を優先したいのかを一緒に考えることが私たちには求められています。その地方創生の取り組みの1つとして、風力発電所のブレード点検用のドローンを開発しました。人間の作業をドローンに代わってやらせることが狙いで、すでに多数の特許を取得しています。

また、最近はスタートアップ企業への支援にも力を入れています。スタートアップ企業には、ビジョンがあり資金も調達できているけれど、目標を実現するための具体的な機能が足りていないというケースが少なくありません。

そのため弊社では、通信事業においてスタートアップ企業が免許を取得する支援をしたり、省庁に掛け合ったりといったサポートをしています。

ーー最後に、求める人材像を教えてください。

仙石泰一:
私たちは、Optimization(最適化)の考え方を重視しています。「最適でありたい」という向上心は未来にもつながっていくので、未来を見据えて邁進できる人とぜひ一緒に仕事がしたいですね。また、弊社は世の中が便利になるのを下支えする仕事を続けたいと思っているので、その点に共感してくれる方々に来ていただけると嬉しいです。

編集後記

取材の最後、仙石社長はこれからを担う若手人材へ「未来は今の積み重ねでしかない」とメッセージを送った。未来と今は表裏一体であり、今取り組んでいることが未来につながるということを意識して日々邁進してほしいという思いが込められている。

未来に向かって発信し続ける「Our Future is Now(未来は今)」という考え方を大切にしている株式会社三技協。高い技術力に加えて、未来を見据えて高みを目指し続ける情熱が、同社の強さなのだと取材を通して感じた。

仙石泰一/1972年東京都生まれ、学習院大学卒。コスモ石油株式会社に入社し、11年間石油業界の職務を経験。2007年に株式会社三技協へ入社。2015年に代表取締役社長に就任。新規事業獲得の活動に注力している。また、2012年〜2014年慶應義塾大学大学院経営管理研究科に在籍し修士MBAを取得。