2020年のコロナショックで一時的に落ち込んだ日本の広告市場は、2022年から回復の兆しを見せ始めている。特にデジタル広告が広告市場全体の中で占める割合は年々増えており、今後も市場規模が拡大すると予測されている。
株式会社サンクスは、1989年の創業以来、大阪を中心に関西の2府4県で広告代理店業を営む会社だ。パンフレットやダイレクトメール(DM)、折込チラシなどの紙媒体の広告制作から、Webサイトやランディングページ(LP)、バナー作成などのデジタル広告まで、幅広く手がけている。同社が考える広告代理店の仕事とはどういうものなのか。同社代表取締役である清水亮氏に今後の展望も含めて、話をうかがった。
野球で培ったコミュニケーション能力が仕事に生きた
ーー当初から家業の会社を継ぐことを考えていましたか。
清水亮:
いいえ。弊社の創業当時、私は高校3年生で「大学でも野球を続けたい」と両親に話していました。起業したばかりの大変な時期にもかかわらず、野球を続けさせてくれて非常にありがたかったですね。
大学卒業後は、仙台の銀行に就職し、実業団で野球を続けていました。仙台で12年過ごしましたが、父から「そろそろ帰ってきてほしい」と頼まれたことをきっかけに大阪に戻り、弊社に入社することになりました。その後、10年の修業期間を経て、2012年にサンクスの社長に就任しました。
ーー野球で培ってきた経験は、現在の仕事にも活かされていますか。
清水亮:
前向きな姿勢とコミュニケーション能力、空気を読む力などは、現在の仕事の役に立っていると思います。社長の息子としてのプレッシャーや、挫折を「負けるものか」と乗り切れたのは、野球で培ったメンタルのおかげでしょうね。取引先の方とお話する際も、スポーツの話を通じて打ち解けることができ、深いレベルのコミュニケーションがとれることがよくあります。
会社としても個人としてもクライアントから期待される存在を目指す
ーー事業に関して、どのような考え方や価値観を大切にしていますか。
清水亮:
皆さまへの感謝の気持ちを大切にしていますね。弊社は「新たな価値と満足を提供し、常に感謝(=サンクス)の気持ちを胸に抱く」ことを社是としています。広告の仕事は、デザイナーや印刷会社、ノベルティ会社、折込会社、ウェブマーケティング会社など、各方面と協力しなくては成立しません。
また、私は自ら営業に携わり、広告だけでなくいろんな方面の情報を集めるようにしています。仕事に直接関係ない情報でも、困ったことや知りたいことがあれば「サンクスの人に聞こう」と、クライアントから一番頼りにされる存在になることが目標です。
ーー特に力を入れているところを教えてください。
清水亮:
広告代理店の仕事は、消費者へ商品の魅力を伝えて、購入までご案内することです。「この商品を買ってみたいな」というイメージを持っていただくため、商品とお客さまのことを考え抜く。この「考える」ことには特に力を入れています。また、弊社は関西圏の2府4県で広告代理店事業を35年続けており、各地域の土地柄や、クライアントの特性まで把握しています。全国規模の広告代理店総合会社の営業マンが3、4年で転勤していく中で、地場に密着した仕事ができることが弊社の大きな強みです。
前述のように、弊社の営業は仕事以外の分野でもお客さまの信頼を得られることを目標にしています。「採用のことで困ってないかな」など、常にクライアントに対して関心を持ち、「お困りごとがあればお力になります」というスタンスで仕事に臨んでいます。信頼の積み重ねで、一人ひとりがクライアントから期待され、「この人が言うならやってみよう」と思われるようになりたいですね。
より効果的なデジタル広告の手法を生み出し新規顧客を増やしたい
ーー今後はどのような分野に注力していきたいとお考えですか。
清水亮:
今後は、デジタル領域を強化したいと考えています。弊社は現在、業務全体のうちデジタル領域が占める割合が3割程度で、まだ発展途上の状態です。デジタルでもアナログでも大切なのは企画力なので、「こういう業界がこういうことをしていて、とても集客力がありますよ」という情報を集めて、企画提案に結びつけていきたいと考えています。より効果的に、かつ安価な形で実施できる広告手法を生み出して、デジタル領域の強化につなげたいと思っています。
ーー最後に、今後の展望をお聞かせください。
清水亮:
「1年間ずっと忙しく動き続ける会社」になりたいですね。現在は繁忙期と閑散期があるので、ずっと繁忙期のような状態にするためには、既存のクライアントに加えて新規のクライアントを見つけて仕事を増やす必要があります。仕事を増やすためには、デザイナーやウェブマーケターなどの人員も増やさないといけません。
特に、今後は「なんのために広告をつくり、どこに企画を告知したらいいのか」を考え、より効果的な広告手法を編み出してくれる、ウェブマーケターを採用する方針です。より効果的な宣伝方法を導いてくれるような頼もしい方と一緒に仕事ができたら、非常に嬉しいですね。
編集後記
清水社長は、社是の中で語られる「新たな価値」として、「デジタルとアナログの融合」を掲げている。デジタル領域を強化することで、同社の事業がどのように発展していくのか。持ち前のスポーツメンタルで明日を切り開いていこうとする清水社長と、株式会社サンクスの未来に期待が膨らむ。
清水亮/1971年、大阪府生まれ。東北福祉大学卒業後、仙台の七十七銀行に入行。2002年に株式会社サンクスへ入社。10年の修業期間を経て、2012年に代表取締役に就任。現在は社長業の傍ら、積極的に営業活動も行っている。