※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

今や多くの産業で専門家が不可欠となり、急速に進化を続けているデータサイエンス。昨今では課題解決の手法として主流になりつつある同分野の歴史は、意外にも浅い。

代表取締役社長の高山博和氏は、京都大学大学院卒業後、金融系コンサルタントとして当時まだ世の中に浸透していなかったデータサイエンス技術に携わり、2016年にセカンドサイト株式会社(現:セカンドサイトアナリティカ株式会社)を設立した。

最先端のデータサイエンスを駆使して業績を伸ばす一方で、「データサイエンスはあくまで手段の1つ」と話す同氏に、起業の経緯と業績を伸ばす手法についてうかがった。

コンサルタント時代に感じた、データサイエンスの可能性

ーー会社設立の背景について教えてください。

高山博和:
コンサルタントとして働いていた時代、当時のお客様が後払いビジネスによる負債に直面していました。

そこで、お客様が持っていた膨大なデータを活用し、機械学習を⽤いて審査判断を高度化した結果、劇的に債権の回収率が改善しました。「大企業がデータを有効活用できていない」という実例です。このような経験から、「同じようにデータ活用ができていない企業が日本にはたくさんあるのではないか」と考え、起業に至りました。

ーーデータサイエンス・AI分野でビジネスをすると決意したのはいつごろですか。

高山博和:
「データサイエンス・AIの領域でビジネスをしたい」という気持ちよりは、お客様の課題解決を支援していた時に、お客様から「ありがとう」などの、感謝の言葉をいただくことが多く、それが一番やりがいを感じる、気持ちの良い瞬間だったことが大きいです。その時から、データを用いて企業の課題解消をするビジネスをしようと考えていました。

AIはあくまで課題解決の1つの手段、課題に合わせて最適な解決策を提案

ーーお客様からの相談と貴社からの提案はどちらが多いのでしょうか。

高山博和:
最近は「データを使って何かできないか」「AIを使って何かできないか」などの技術トリガーで相談を受けることが多いですね。

しかし、結局のところは「課題が何であるか」が一番重要です。課題によっては、高度な技術を使わなくても解消できることもあるので、弊社ではその課題部分を明確にすることを重視し、得意としています。

高度なデータサイエンス技術はあくまで課題解決のための1つの手段でしかありません。データをエクセルで集計するだけで問題が可視化できることもあり、高度な技術が必要ない場合もあります。いずれにせよ、手段にこだわりはなく「企業の問題が解消すればそれで良い」と考えています。

ーー課題に対して貴社からどのような提案を行うのか、教えてください。

高山博和:
例を挙げると、建設現場での課題です。建設現場でAIを使うという入り方ではなく、建設業の業務フローを全て見て、改善点を見つけるところから始めました。当該業務で大きく労力を使う部分は、工事を開始する前の安全面の確認作業です。たとえば、カラーコーンやバーの位置から車のラインが少し出るだけでもアウトになるなど厳しい基準が設定されており、作業を開始するためにはその現場写真を撮って本部に送り、本部が基準を満たしているか安全チェックをする業務があります。

しかし、1日に数千件もの工事が動き、業務に莫大な時間がかかっているだけでなく安全チェックの品質も落ちておりました。それだけではなく、あってはならないことですが、実際に⼈命に関わる事故が発生することもあり、「このままでは良くない」と、業務をAIで⾃動化しました。

写真や映像を基にAIがリアルタイムで安全状態を判別し、開始の許可を出します。工事が終わった後も、品質確認のために写真を本部に送って確認する業務がありますが、そちらもAIで⾏えるようにし、効率化を行いました。

⾦融機関で蓄積されているデータは比較的構造化されたモノが多く、データの利活用が進んでいたのですが、今ではディープラーニング(深層学習)の進化により、⽂章や画像、⾳声などの⾮構造化データの解析技術もどんどん進歩しています。

そのため、データサイエンス・AIの適用範囲は⾦融やネットECといった分野から、建設や鉄道などのリアルな世界にもどんどん広がってきています。

ハイブリッドな人材を求めて。尖った部分がある人にこそ可能性がある。

ーー採用強化の現状と今後についてお聞かせください。

高山博和:
弊社でもいろいろなAIプロダクト・モジュールを持っていますが、結局のところ会社の資産は人です。そのため、人材に対して求める水準や要求事項も多いのです。

まず、データサイエンスの技術や学術に明るいことと、それを基に実際に手を動かせるITのリテラシーも持っている必要があります。ビジネスコンサルタントのようなスキルも必要で、ビジネス・データサイエンス・システムを分業制で⾏っている会社もありますが、弊社ではそれらを同時に1⼈で⾏えることを目指しています。

初めから全てを兼ね備えている人材はなかなかいないので、どこか尖っている部分を持った人材を採用し、残りはトレーニングで補完しています。分業制も、それはそれで上手くいきますが、どうしても摩擦が生じてしまいます。

ビジネスの課題解消を提案する人材は、「それをどうやるか」という実現方法の技術領域を深く理解していないと適切なアドバイスができないので、やはり1⼈で完結できることが理想です。

弊社では、分業体制ではない分、かなり広い領域でスキルを身に付けられるので、そこは他社との違う部分かもしれません。

ーー社風について教えてください。

高山博和:
風通しがよく、フラットです。好奇心旺盛な人が多いので、自然に勉強して周囲と共有することが社内で活発に行われています。勉強に前向きな人材には、全面的に支援するようにしているので、学びやすい環境だと思います。

ただし、「学んだことはアウトプットしなければ意味がない」とよく伝えています。知識をインプットするのは楽しいことですが、それをビジネスに対してアウトプットして、最終的にしっかりと”価値に変換する”ところまでやらなければ意味がありません。価値に落とし込まないと、ただの作業になってしまいます。

ーー学生に向けてメッセージはありますか。

高山博和:
社会の話題に対してアンテナを張り、「なにが課題か」「それをどうすれば解消できるか」を常々意識して生活するとよいかと思います。

その解決手段がAIかもしれないし、全く違うことかもしれないですが、そのソリューションを実現する術は後から身に付けることも可能です。

社会の本質的な構造を理解して「どこに問題があるのか」と、課題点を見つけようとする姿勢がとても大切だと思います。その上で、社会に対してインパクトを残したいという思いがある方には、是非お会いしてみたいです。

編集後記

コンサルタント兼エンジニアというハイブリッドな人材の育成を目指す高山氏。会社で実際に活躍している人は、技術探求心が高く、「世の中にインパクトを残したい」という熱い思いを持っている人だと語る。

「インプットだけでなく、最終的にビジネスでの価値に落とし込むまでが仕事」をモットーに、探求心の強い社員たちは、今日もお互いに切磋琢磨を続けている。熱量を持った社員たちこそが、同社の最大の武器であると感じた。

高山博和(たかやま・ひろかず)/京都大学大学院卒業、複数のコンサルティング会社を経て、2016年セカンドサイト株式会社(現:セカンドサイトアナリティカ株式会社)設立、取締役就任。2020年4月より代表取締役に就任。設立当初より、アナリティクス技術を活用したクライアントの課題解決支援を推進。