※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

肥料の国内市場規模はメーカー出荷金額ベースで2021年、前年比5.7%増の3450億円。2022年はさらに前年比23%増の4244億円と見込まれ、原料の価格高騰を反映した大幅アップが予想されている。肥料メーカー各社の肥料関連売上高も拡大しているが、製造コストや物流費の上昇も相まって収益性は悪化してきている。

2022年4月に創立60周年を迎えた株式会社ハイポネックスジャパン(1962年設立、大阪市)は肥料の製造・卸を手がける、園芸業界の裾野を広げ業界をけん引してきた有力企業だ。

近年は次世代農業向けの商品拡充やSNSを活用した園芸ユーザーのサポートや宣伝強化を行うなど、つねに最先端の経営を展開する同社。

トップに就任して30年の代表取締役社長の村上恭豊氏に、製品開発や経営方針についてインタビューを行った。

肥料メーカーの先駆者として常に業界をリードしてきた60年間

ーー貴社の事業概要をお聞かせください。

村上恭豊:
弊社は1962年に創業して以来、肥料、農薬、培養土、活力剤の製造販売を手がけています。早くから園芸肥料の輸入販売や液体肥料の開発に着手し、海外メーカーと独占販売の契約を結ぶなど、肥料の一般普及に貢献してきました。

私たちの企業活動によって園芸業界の裾野を広げ活性化することを目指し、他社よりも一歩先駆けて行動することでさらなる社会貢献に努めていきます。

60年以上の歴史と信頼。顧客からの信頼がもたらす成功の秘訣

ーー長年選ばれ続けてきた要因はどういった部分にあると思いますか?

村上恭豊:
多くの支持をいただける理由としては、長い時間をかけて築いた信頼ではないかと思います。

60年以上にわたって品質をしっかり管理したうえで、新たな製品開発に取り組み、また流通面で欠品させない方針を守りながらコツコツと実績を積み重ねてきました。

近年、SNSやYouTube上で、多くの方が弊社製品に高い評価をつけてくださったり、製品の使い方、良さを発信いただけることは大変ありがたいことです。

その中には家庭での園芸需要だけでなく、大学の研究で使用されることもあり、さらに信頼を高めることにつながっていると思います。

農業の改革に対応したバイオスティミュラント商品を拡充

ーー現在注力する商品や企画についてお聞かせください。

村上恭豊:
現在ますます注目を集めているのが、高温、低温、乾燥、多湿など非生物的ストレスによる収量減少を軽減する「バイオスティミュラント」の新しい分野です。

温暖化が続く昨今、特に夏場に激しい環境ストレスにさらされることが多い中で、植物が本来持っている抵抗力や免疫力などを引き出す資材です。

最近では農林水産省が提唱する生産力向上と持続性の両立を目指した「みどりの食料システム戦略」により、業界を取り巻く環境が大きく変わってきています。2050年に肥料は30%カット、農薬は50%カットが提唱されていますが、私たちがすでに取り組んでいるバイオスティミュラント資材は、まさしくそれにふさわしい製品だったのです。

生産者も今まで栽培してきた作物が環境の変化により不作になる事象が年々増加しています。そうした時代の流れに私たちが販売するバイオスティミュラント資材がマッチしてきていると実感します。

私たちは農薬を100%否定はしないですし、必然とは思います。しかし、これから「減農薬」を中心とした市場が形成されることを意識し、日々製品開発を進めてきました。

このバイオスティミュラント資材は環境保全につながることも後押しとなり、すでに多数の関連製品を取りそろえ、これから更に拡充する方針です。

販路としては当初、花卉の生産者が中心でしたが、種苗会社の協力や口コミや紹介による広がりのおかげでトマトやキュウリといった野菜生産者にも納めるようになり、徐々に裾野が広がっています。

そのほかにも、循環型資源の再生リンサンを使用した『マグァンプeco』をはじめ、環境に配慮した製品開発に注力して取り組んでいます。

ーー今後のテーマや経営方針についてお聞かせください。

村上恭豊:
最近では原料の高騰、為替の上昇を反映した動きも活発化しています。国内の肥料資源推進という名目で、原料を国産で調達する施策が進んでいますが、弊社はこうした取り組みに早くから参入してきました。

生活排水から回収した「再生リンサン」を原料の一部に配合した肥料の開発がそのひとつです。各企業はプラスチック原料を減らしたりしていますが、私たちは初期の段階から原料にまで踏み込んだ製品開発を行ってきました。優秀な技術者とともに、ゼロからではなく過去の実績をもとに応用をきかせて開発できるのが弊社の強みです。

また、ハード面だけでなくソフト面も合わせて提供していきます。製品開発にとどまらず、お客様が求めている情報を従来のメディアと時代に合ったメディア(YouTubeや各種SNS)も取り入れて積極的に発信していく方針です。

編集後記

村上社長について「つねにコミュニケーションを持ち話しやすい環境の中、営業部では毎週のフォローアップで現場の話を聞いていただいています」との社員談も聞かれた。

社員が親しみやすい社長というだけでなく、「第一走者になっている部分については、絶対に追い越されないよう力を緩めずにやっていく」と、アグレッシブさも持ち合わせた頼もしい経営者でもあった。園芸業界のリーディングカンパニーとして進み続ける同社に、ますますの活躍が期待される。

村上恭豊/1957年兵庫県神戸市生まれ。成城大学卒業。1982年丸和化学株式会社(現株式会社ハイポネックスジャパン)に入社。1993年、同社代表取締役社長に就任。