※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

株式会社赤尾は、消防ホースをはじめとする消防・防災用品や、消防服の製造・販売を行っている会社だ。1897年に創業して以来、120年以上に渡って災害や救助現場で働く人々の安全を支えてきた。

赤尾ならではの強みや日頃から心がけていること、今後の展望などについて、代表取締役社長の赤尾隆氏にうかがった。

中小企業ならではの対応力を活かし、お客様が求める製品を提供

ーーまずは貴社の事業内容についてお聞かせください。

赤尾隆:
弊社は120年以上の歴史を持つ消防防災機器の専門商社です。消防署で使用される消防ホース、救助器具や、防災用品・消防車両の販売、消防服の製造・販売を行っています。

消防服に関しては、消火活動用の防火服のほか、通常時に着用する活動服・救助服・救急服の製造も手掛けています。この会社は曾祖父が創業した会社で、私は5代目にあたります。

ーー貴社の強みは何でしょうか。

赤尾隆:
創業以来、消防署とは長い付き合いがあるため、強い信頼関係を構築できているのが強みです。また、大手の競合他社とは違い、中小企業だからこそお客様のニーズに合った柔軟な対応をスピーディーに行うことが可能です。

たとえば自社で製造している消防服は、お客様の要望に合わせて細かなカスタマイズを行っています。また、消防隊員の方々のモチベーションを高めるために、各消防署ごとに異なる色使いやデザインの消防服を提供しています。このように個別の注文に対応できるのが、弊社ならではの特徴です。

ーー貴社が大切にしている価値観やこだわりについて教えてください。

赤尾隆:
防火服は危険と隣り合わせの火災現場で使われるものであるため、製品の品質にこだわっています。社員一同が日々の仕事に誠実に向き合い、安全・安心な製品を提供しています。

製品の改善を絶えず行い、これまで培ったノウハウや技術を結集し、機能性の向上に日々努めています。

全国の消防署の情報を共有し、技術力の向上をサポート

ーー赤尾社長が後継者として貴社に入社するまでの経緯を教えてください。

赤尾隆:
大学卒業後は大手の消費財化学メーカーに入社し、研究開発に携わっていました。家業は兄が継ぐ予定でしたが、二の足を踏んでいる状態でした。

そこで先代である父がしびれを切らし、私に「会社を継いでくれないか」と相談してきたのです。その話を受け、少しでも親孝行になればと思い、赤尾に入社しました。

ーー経営者として日頃から心がけていることは何でしょうか。

赤尾隆:
自分たちがつくり上げた製品が、必ずしもお客様にとって最適なものとは限らないという気持ちでいます。決して自分たちのこだわりを押し付けることなく、お客様の意見にしっかり耳を傾けるよう心がけています。お客様の意見を反映しながら製品開発を行ってきたからこそ、今日の成長につながっていると考えています。

また、全国の消防署の情報を社内で共有するようにしています。実は消防署で働く方々は、別の消防署がどういった道具や車両を導入しているのかを把握していないそうです。

そこで私たちが消防署間の架け橋となれるように、各消防署の情報をお伝えしています。こうした取り組みにより、全体の技術向上にも貢献し、一人でも多くの方の命を救うお手伝いができればと思っています。

社員の士気を高めるためにカルチャーブックを作成

ーー経営者になってから取り組んだ事例を教えてください。

赤尾隆:
最初に、会社のビジョンや社員の行動指針をまとめた「赤尾ビジョン」を策定しました。社長に就任した当時の売上が70〜80億円ほどで、目標は売上100億円と掲げました。結果として、見事3〜4年で目標を達成しました。

こうして売上目標は達成できたため、今度は社員の満足度を高めようと、働く環境について考えるようになりました。そこでまずは会社の価値観を共有するために、カルチャーブックをつくりました。

カルチャーブックでは、「困っている人を助ける」ことに重点を置いています。災害時に困っている人を一人でも多く救うためにはどうすればいいか常に考え、社会に貢献できる会社を目指しています。これを私たちの指針とし、高い志を持って働ける職場にしたいと考えています。

さらなる発展を目指し、社員がいきいきと働ける会社へ

ーー最後に今後の目標について聞かせてください。

赤尾隆:
今後の目標は、社員が夢を持てる会社にすることです。そのために今期の売上120億円から、5年後には売上200億円の達成を目指します。目標達成を目指して社員一丸となり、士気を高めたいと考えています。

また、これから5年かけて毎年20名ずつ採用し、社員数を今の約120名から倍に増やす予定です。マンパワーを増強し、各社員の仕事量を今の8割にまで抑えるのが目標です。

余力分の1割で既存の仕事を効率化する方法や新商品開発を検討し、残りの1割を新規事業の企画や立案に費やしてもらいたいのです。新規事業に関しては、社会の役に立つことであれば、防災とは関係のない分野でもいいと思っています。

今後も、自分たちに何ができるか社員同士で意見を出し合うことで、活気のある楽しい職場をつくっていきたいと思います。

編集後記

赤尾社長からは物腰が柔らかく、穏やかな印象を受けた。一方で、話が深まるうちに、現状に甘んじることなく、さらなる成長を目指す熱い一面も垣間見えた。高い技術力と柔軟な発想力がある株式会社赤尾は、これからも災害や救急現場で働く方々の厚い信頼を獲得し続けることだろう。

赤尾隆/1968年、大阪府生まれ。1991年、関西大学工学部卒業。1993年、関西大学大学院工学研究科修了。1993年、花王株式会社に入社。1997年、株式会社赤尾に入社。2011年、代表取締役社長に就任。2014年、一般社団法人日本消防服装・装備協会設立。初代会長に就任。2019年〜現在は、副会長として「消防服装等の普及・改良を図るとともに、防災思想の普及徹底に努め、もって火災その他の災害による被害の軽減に寄与すること」を目標に掲げ、日夜活動に励んでいる。