世界初の買い手の顔が見えるM&Aマッチングプラットフォーム「M&Aクラウド」。サービス開始から6年で買い手利用社数は3,000社以上、売り手企業も10,000社以上の登録があり、国内IT上場企業の約35%が同サイトを利用している。M&Aにかかわる領域において多岐にわたる事業を展開する稀有な企業が、株式会社M&Aクラウドだ。
多くの業界・業種でのM&A実績を上げ、特にIT業界における実績はトップクラス。高い評価を集めている。そんな事業が持つ可能性と将来像について、同社の代表取締役CEO、及川厚博氏に話をうかがった。
夢中になれる仕事こそが、自らを大きくする
ーー大学在学中に起業されているのですね。
及川厚博:
「歴史に名を残したい」という思いがずっと胸にあり、起業家か政治家になりたいと考えていました。いずれかの道を選ぶときに、より個人の努力や戦略が結果に結びつきやすい起業家の道を選びました。そこで、アプリ開発会社を学生で起業し、社員30名・売上数億円規模に成長できましたが、「この事業で一番手になれるだろうか」と考えて売却を選択したのです。
ーー次の事業を探す際、どんな考えがあったのでしょうか。
及川厚博:
歴史に名を残すような企業になるには、その時代が抱える課題の解決に取り組み、主役となるような企業を目指しました。そうして当時、着目したのがM&Aの分野です。M&Aには社会課題の面でも大きなニーズが存在し、マーケットも大きい。そして何より私にとって夢中になれる分野だと感じました。
そうして立ち上げたのが弊社です。創業後、IVSというスタートアップ企業向けのカンファレンスに参加する機会があり、M&A支援事業が高評価を獲得し、ファイナリストに選ばれたのです。当時、私は別の事業にも並行して携わっていましたが、M&A支援事業に100%で取り組めば、私たちはどれだけ活躍できるのかと考え、今の事業に集中することにしました。
成長性に富む業界で、M&Aクラウドが持つ優位性とは
ーーM&A市場の現状について教えてください。
及川厚博:
M&Aには大きく分けて「スタートアップM&A」と「事業承継M&A」のふたつがあります。現在、日本国内ではこのどちらも支援サービスの拡充が急務の状態です。
たとえば2025年には約245万人の経営者が70歳を超え、その約半数にあたる127万人の後継者が不足するという中小企業庁の試算があります。この状況により2025年までに累計で約650万人の雇用と、約22兆円のGDPが失われる可能性があることを示唆しているのです。
こうした背景を受けて、M&A支援の業界は大変過熱しており、プラットフォーマーやM&Aサービスが右肩上がりで増えている現状があります。
ーーその中で、貴社はどのように事業を展開してきましたか?
及川厚博:
弊社は「テクノロジーの力でM&Aに流通革命を」というミッションを掲げ、ITを駆使する経営者が多いスタートアップM&Aの支援からサービスをスタートさせました。売り手・買い手双方のM&A支援ができるプラットフォームを構築。ダイレクトマッチングやプラットフォームアドバイザーの支援を通じて売り手と買い手のマッチングを行っています。
いち早くサービスをスタートさせたことで、スタートアップM&Aの分野では先駆者として、多くの実績とそれに基づく信頼を築くことができました。今後は、そのノウハウを生かして、事業承継M&Aの分野でもサービスの拡充を図りたいと考えています。
ーー貴社の強みをお聞かせください。
及川厚博:
お客さまにとってはプラットフォームでマッチングしても、アドバイザーから紹介を受けてでも、マッチングがうまくいけばどちらでも構いません。理想とするM&Aを実現できるなら、方法は問わないのです。そこで、弊社はお客さまのどのようなニーズにも対応できるよう、M&A周りのさまざまな事業を展開してきました。データは一元化しつつ、多様なサービスでご要望をカバーできる体制がある点が大きな強みだと自負しています。
事業の今を分析し、目線はすでに「次」へ
ーー今後の事業展開について、注力したい点を教えください。
及川厚博:
私たちは独自のプラットフォームを強みとし、取引先の新規開拓を継続しながら市場での差別化を図っています。この優位性を活かすには、マーケティング戦略の継続的な見直しと強化が欠かせません。事業拡大には、経営資源の最適な配置も重要です。特にM&A業界では専門知識と経験が重要なため、適性のある人材の採用と育成に注力していますね。営業体制の強化と企業文化の浸透にも力を入れ、組織全体の底上げを図っていきます。
今後も最適な支援サービスを提供し続けるために、私たちは情熱を持って事業に取り組む人材を積極的に求めています。ともに成長し、業界をリードする存在となるべく、情熱ある人材をお迎えしたいですね。
編集後記
「歴史に名を残す」そうした思いが生まれるきっかけには、幼いころに触れた偉人の伝記本があったという。特に、父親の書棚で出会った司馬遼太郎氏の『燃えよ剣』からは、主人公である土方歳三の生きざまに強く感銘を受けたと語ってくれた。大きな目標を楽しみながら、自然体で将来に向けて進む勢いを感じた。今後、M&Aクラウドの名がどんな風に歴史に名を刻んでいくのか、飛躍が楽しみだ。
及川厚博/2011年、大学在学中にマクロパス株式会社を創業。オフショアでのアプリ開発事業を展開し、4年で年商数億円規模まで成長させる。2015年に同事業を2億円で事業譲渡。売却経験から、M&A分野でのテクノロジー活用の必要性を実感。その後、株式会社M&Aクラウドを設立し、代表取締役に就任。Forbes NEXT UNDER 30に選出される。