※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

キャッシュレス決済の利用が広まる一方、クレジットカードの不正利用の被害額は年々増加している。そんななか、商品の受け取り後に料金を支払う「後払い決済サービス」を提供しているのが、株式会社ネットプロテクションズだ。クレジットカード番号などを入力せずに購入手続きができ、商品を確認してから支払いができる安心さが評価されている。

ネットプロテクションズの強みや、事業の立ち上げに関わるまでの経緯、社員の意欲を引き出すティール型組織の魅力などについて、代表取締役の柴田紳氏にうかがった。

与信管理でサービスの基盤を固め、リーディングカンパニーの地位を確立

ーーまず貴社の事業内容について教えてください。

柴田紳:
弊社の主力サービスは、通販利用者向けの後払い決済サービス「NP後払い」です。商品受け取り後にコンビニなどで支払いができるため、安全にネットショッピングを楽しめることが特徴です。

また、国内における後払い決済のリーディングカンパニーとして、企業間取引向けの「NP掛け払い」や、リフォーム、家事代行などのサービス業向けの「NP後払い air」も展開しています。さらに台湾やベトナムでも事業展開を進めています。

ーー貴社ならではの強みは何でしょうか。

柴田紳:
20年以上にわたって蓄積してきた与信データを活用するノウハウを持っている点です。事業者に代わって立て替え払いをする後払い決済では、顧客からきちんと代金を回収することが必須となります。弊社では独自の与信管理を行うことで、料金の未払いリスクを抑止し、利益を生み出しています。

なお、未払いリスクが参入障壁となり、競合が少ないのもメリットです。特にBtoBで後払い決済サービスを提供しているのは、世界でもかなり数は少ないと思います。他社と競争する必要がないため自社の活動に専念でき、次々と新しい手を打てるのです。

キャリアを捨て、再起をかけた後払い決済サービス事業の立ち上げ

ーー柴田社長の経歴とこれまでの経緯を教えてください。

柴田紳:
新卒で入った商社では、煙草事業部に配属されました。ただ、タバコメーカーと単独で売買契約を結んでおり、販売ルートも限られていたため、ほとんど仕事がない状況でした。その間は能力を発揮する機会もなく、とてもつらかったですね。

とにかく行動に移そうと思い、IT事業のプレゼンをしたり、社内プロジェクトに参加したりしました。そうしているうちに、IT関連の事業に携わりたいという思いが強くなっていったのです。それならばいっそ自分で会社を立ち上げようと思い、修行のためにIT系の投資会社に転職しました。

そこで、後払い決済事業会社の買収に携わることになったのです。ところが、アイデアだけで事業の実態がないことを知り、さらに役員を一掃したことで社内から反感を買いました。このような逆境からのスタートでしたが、自分の意思で決断できることに楽しさも感じていました。

ーー何もないところからどのようにサービスの提供までこぎ着けたのですか。

柴田紳:
カタログ通販で各事業者による後払い方式が定着していることに着目し、EC市場で同様のサービスをスタートしました。はじめはアップロード画面で情報を取り込み、Excelにまとめられた情報を一つひとつチェックする人海戦術でした。

とにかく人手が足りないので、私も営業や問い合わせ対応、与信審査を行っていました。この時期は本当に大変でしたが、会社が潰れることになっても最後までできることをしようと血眼になって喰らいつきました。

自身の苦い経験をもとに、社員の自律性を引き出す「ティール組織」を構築

ーークチコミサイトの会社評価ランキングではインターネット業界で1位、総合評価ランキングで上位1%にランクインされていますね。

柴田紳:
私自身、若手時代に思うように仕事ができず苦しんできたため、社員が活躍できる環境づくりに注力してきました。社内の縦割りを排除し、社員が各々の判断で行動し、対等な関係性の中で目的達成に向けて運営する「ティール組織」を構築することで、社員の成長意欲を高め、創造性を発揮しやすいよう意識しています。

また、マネージャー職を廃止し、リーダーではなく経験豊富な社員が支える体制をとっています。チームや事業単位で同じ目標を掲げ、参加者全員で話し合い、常に組織をアップデートし続けています。

このように各自の意思を尊重し、一定の成果を上げ続けているからこそ、幅広い分野でサービスを提供することができ、また企業の価値が高く評価されているのだと思います。

ーー貴社が求める人物像を教えてください。

柴田紳:
成長意欲が高く、本質を追求した思考ができ、組織に貢献したいという気持ちが強い人です。特に学生時代から自発的に行動し、ひとつのことに取り組んだ経験がある人がいいですね。誰もが心地良く働け、成果を出せる組織にするためにトライし続ける人を求めています。

自社のサービスを世の中に浸透させ、日本を代表する企業を目指す

ーー最後に今後の展望をお聞かせください。

柴田紳:
2024年度内にスタートする「atoneプラス」で集客力を強化したいと考えています。atoneプラスは月額300円の有料サービスで、決済時にはポイント還元率が常時1.5%となり、分割払いも可能です。さらにオンラインストアや実店舗を含め、約110万店舗で利用できます。

こうしたメリットをアピールし、サービスの利用頻度を高め、メインの決済手段となることを目指しています。

またBtoC以外にBtoB、海外事業でも成長の余地が大きいため、将来日本を代表する企業になるポテンシャルがあると思っています。ティール組織で成果を挙げられることを証明し、世の中の会社の枠組みを根底から変えるムーブメントを起こしていきたいと思います。

編集後記

自分の実力を発揮できない環境に苦しんだ経験から、会社も社員もともに成長できる組織をつくり上げてきた柴田社長。リーダー職を撤廃することで、それぞれの社員が課題を自分ごと化し、新たな発想が生まれやすい環境を構築している。株式会社ネットプロテクションズは、安心して買い物を楽しめるサービスを提供し続け、これまでの働き方を変える先駆者にもなることだろう。

柴田紳/1998年一橋大学卒業後、日商岩井株式会社(現・双日株式会社)に入社。2001年、IT系投資会社であるITX株式会社に転職し、株式会社ネットプロテクションズの買収に従事。国内で初めて後払い決済サービスを立ち上げ、2004年に代表取締役に就任。世の中を変革する事業を創造するとともに、メンバーの可能性をひらく組織づくりを通じて、事業・組織ともに「つぎのアタリマエをつくる」というミッションの実現を目指している。