株式会社創建は戸建て住宅・マンションの分譲・販売を主に行うとともに、創建グループの中心的な存在として、関係会社との連携も図っている。コロナ禍を乗り越えて成長する同社代表取締役社長の吉村卓也氏に、住宅会社としての強みや、新たなシステム導入の試みについて話をうかがった。
革新と信頼の住宅づくり、その背景にある徹底した住宅性能とアフターサービス戦略
ーー貴社のサービスや強みについて教えてください。
吉村卓也:
何といっても、徹底した住宅性能と品質、さらに安心・安全を守る「家ドック」などのアフターサービスです。社員が自分でも発注したいと思う自信のあるものをつくらなければ、お客様にはその魅力が伝わらないと考えています。
実際にご来場いただいたお客様がどのように感じられたかをよりリアルに知るために、毎週土曜日、日曜日は私も販売中の現場に行き、お客様に直接お会いしたり接客をすることもあります。
また、「社長直通110番」という、お客様が社長や会長に直接声を届けられる直通電話受付サービスも用意しています。万が一、お客様と従業員の間にトラブルが発生した場合も、最終的には私が対応する形をとっています。
ーー住宅性能について、特に自信がある点はどこですか?
吉村卓也:
特に自信があるのは断熱性能と品質です。その分、建築コストは上がりますが、光熱費を含めてトータルで考えると弊社の物件の方が安くなるとお伝えしています。まず屋根、壁、そして基礎の断熱を徹底し、すき間をできるだけなくす工夫をしています。(外断熱工法)
そのすき間(気密性)の大きさについても弊社では1棟1棟の材料や建物の大きさ、間取り等により異なると考えているため、「型式適合認定」を採用せず、全棟気密検査を実施しています。
また、施工確認についても施工箇所の工事業者様から施工写真を受け取り確認しますが、工事監督自身も自ら出向いて、再度確認を行っています。
ーー性能の良さを伝えるために気をつけていることを教えてください。
吉村卓也:
弊社の性能と品質は、同業者の方も購入していただけるほど高い性能です。ただ単に間取りの希望を叶えるだけでなく、住みやすさも考えた家を提供できるということをしっかりと伝えていく必要があります。
しかし、住宅性能は一般のお客様には伝わりにくいことが多いです。断熱材の種類や厚み、熱伝導率数値の差等、専門的で分かりにくい部分をいかに分かりやすく伝えるかを工夫し、営業担当者にも徹底させています。
ーーコロナ禍を経て、経営においてはどのような取り組みを行っていますか?
吉村卓也:
弊社はコロナ禍で各社が活動を縮小する中、積極的にテレビCMを中心とした広告を展開しました。家にいる方が多い時期に、低コストで広告を打ち出せた上に、大きな反響が得られました。ご来場いただいたお客様には、しっかりと感染症対策をした上で、モデルハウスで実際の住宅の性能や品質を体験していただくことで、弊社の住宅の良さを実感していただけたと思います。
コロナ禍が落ち着いた後は、テレビCMだけでなく、SNSをはじめとしたWEB媒体を中心に宣伝の方法を転換してきました。
また、以前は既存のお客様のアフターケアを全分野で引き受けてきましたが、特に得意な塗装分野に注力し、2023年からは外壁塗装事業「創建ペイント」を始めました。10年目のアフターケアとして始めたこの取り組みは成功し、一般のお客様に向けた広報活動も開始しています。その結果、新たな柱となる事業として成長しつつあります。
ーー今後、さらに性能を向上させる計画について聞かせてください。
吉村卓也:
弊社では、最高等級の耐震等級3を標準とし、断熱等性能等級においても最高等級7の性能を持つ住宅も建てることができます。住宅性能(断熱性、気密性)とデザイン性を両立させるために、更なる高性能な住宅設備等の標準化を目指して努力してまいります。
多様な職種と挑戦を支える株式会社創建の社内体制改革と理想の人材像
ーー社内体制や人材育成において注力していることは何ですか?
吉村卓也:
弊社は、土地の仕入れから物件の販売までをすべて自社で行っており、多種多様な職種や部署があります。その中で、数字での成果が見えやすい部署はジョブ型の評価制度に転換し、業務成果に応じて給与が上がるようにしました。全体としての賃上げや、休日を増やす取り組みも積極的に行っています。
さらに、毎月15日に会長・社長に直接疑問をぶつけられる「15日レポート」や、毎年年末には匿名で意見が言える目安箱の設置も実施しています。とりまとめた意見は役員会や各部門長会で対応を協議し、良い案はすぐ採用、ルールを変更したりと会社がより良くなるよう改善し、協議結果をすべて全社内に公表しています。
ーーどのような人を採用したいですか?
吉村卓也:
まずは与えられたポジションの業務をこなすモチベーションがある方を歓迎しています。加えて、チャレンジできる方にも入社していただきたいですね。弊社は挑戦を歓迎しています。失敗したときは原因を考え、それを次に活かせる方が理想です。
革新的システム導入で実現するグループ連携と効率化戦略
ーーシステム導入の現状について教えてください。
吉村卓也:
株式会社創建は分譲住宅を得意とする企業ですが、グループとしては注文住宅を専門とする小林住宅株式会社、北海道の株式会社木の城たいせつ、住宅の点検「家ドック」を展開する株式会社日本戸建管理、それに外壁塗装事業の「創建ペイント」ブランドもあります。
グループ内でそれぞれの強みを活かし、連携を強化しています。例えば、創建で購入した土地についての販売を小林住宅が担うなど、連携体制が円滑に機能するようになりました。
ーー社内向けのシステム導入はどのような状況ですか?
吉村卓也:
弊社でご契約いただく約9割のお客様は建売ではなく、ある程度の仕様が決まっていますが、一から図面を作成していく自由設計の方が多いです。検討段階から3DCADシステムを利用してご提案し、ご契約後は弊社の設計担当と外部の設計事務所とが連携し、プランのご提案をさせていただいています。
また、創建ペイントでは自社で開発したタブレット端末用のリフォーム受発注システム「即決革命」を利用しており、同システムは他社へも販売中です。
さらに、現在は社内の管理システムの数が増えすぎたため、自社用の一括管理システムを開発しています。このシステムは2025年末までの完成を目指しています。
編集後記
性能やサービスについて語り出すと、止まらなくなる。自社の住宅とサービスに心からの自信を持ち、徹底して追求しているからこそだ。その一方で社内に対しても、積極的なシステム導入による効率化や、賃上げなどの地道な取り組みを続けている。
社内外を問わず徹底して良くしていく姿勢を貫いていることが、株式会社創建の成長の背景にあると感じた。吉村社長のもと、柔軟にそのときどきの最善を打ち出していく同社の今後に注目したい。
吉村卓也/1980年大阪生まれ、滋賀大学経済学部卒業。みずほ信託銀行に入行後、2006年に株式会社創建に入社。2018年に同社代表取締役社長に就任。