※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

株式会社アイスリーメディカルは、日本でも数少ないリモートリハビリ・運動療法を提供している会社だ。「ヘルスケア × テクノロジー」の力で予防・未病改善・疾患改善を行うサービスを提供し、医療問題の解決に貢献している。

同社の代表取締役社長である久保田明史氏に、ヘルスケア事業に取り組み始めたきっかけや社長に就任するまでの経緯、自社サービスの特徴、今後の展望などについて話をうかがった。

革新的なリモートリハビリ・運動療法の会社の社長に就任するまで

ーーアイスリーメディカルの代表取締役社長に就任するまでの経緯を教えてください。

久保田明史:
31歳のときにリンクマネージというECのASP(現在のクラウドサービス)を提供する会社を設立しました。とても順調に成長したのですが、体調不良が原因で辞めることになり、40歳を前に「体が資本」という言葉が身に沁みました。

その後は身体を休ませつつ働いていたのですが、その期間にいろいろな人と出会いました。その中で、東洋医学のカリスマ先生との出会いがきっかけとなって、設立した会社がスマイルアンドサンキュー株式会社です。治療院の店舗運営を主事業としていましたが、コロナをきっかけにヘルステック事業に取り組み始め、2023年にその事業を株式会社アイスリーメディカルへと分社させ、同年に代表取締役社長に就任しました。

ーーヘルステック事業に取り組み始めた背景を教えてください。

久保田明史:
スマイルアンドサンキューでは、「一人でも多くの患者さんを幸せにする」という目標のもとに業界内で1番早いスピードで店舗数を増やすことができました。

しかし、その後にコロナが到来して、店舗ビジネスのみを行うことにリスクを感じました。そこで元々持っていたITノウハウと人を治すノウハウを組み合わせたヘルステック(遠隔リハビリ)事業がイメージできたので、システム開発に取り組み始めたのです。

ーー遠隔リハビリの事業が上手くいくと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

久保田明史:
コロナ禍で遠隔医療が急速に進みました。そんな中、私はリハビリは遠隔医療に向いていると考えましたが、一向に進みませんでした。そして調べてみるとアメリカやヨーロッパでは遠隔でリハビリや運動療法を行うことが一般的であり、市場が大きく成長していることがわかりました。リアルで行うよりも利点が多い遠隔リハビリは日本でも必ず普及すると確信しました。

また最初は健保組合をターゲットに営業をしたのですが、そこでの反響が良かったので、このまま続けていけば売れるだろうと実感できました。営業開始してまだ1年半ですが、今でも健保組合は大切な業界の一つですし、多くの健保組合様にご利用いただいています。

遠隔リハビリとセルフケアアプリで予防と治療のサポートを行う

ーー貴社のスマリハシリーズについて教えてください。

久保田明史:
弊社のサービスには現在、「スマリハ」と「スマリハPRO」がありますが、最初に立ち上げたのはスマリハPROです。スマリハPROは、ウェアラブルセンサーを使った最先端のリモートリハビリサービスで、リハビリを遠隔でありながら医療レベルでかつ手軽に受けられるようにと開発したものです。

リハビリには、腰痛や糖尿病、うつ病や認知症など、多くの症状を治す力があります。
しかし、病院やクリニックなどでリハビリを受けると、移動時間が長い、予約するのが大変という理由で頻度高く、長く続けることが難しい人が多いのです。

その問題を解決するためにスマリハPROをつくりました。スマリハPROを活用してリハビリを続けやすくすることで健康体で老後を迎えることができます。また、皆様が長生きすることや医療費を抑えることにも貢献できるサービスです。現在は、糖尿病、肩痛、腰痛用の3つのプログラムがあります。今後、さまざまな疾患改善や予防のためのプログラムを追加していきます。

一方、スマリハはリモートセルフケアアプリです。スマリハPROは症状改善の方向けのサービスですが、スマリハは未病の方向けのアプリです。未病とは、発病には至らないものの健康な状態から離れつつある状態を指します。最初は肩こりと腰痛予防から始め、新たに糖尿病の重症化を予防するプログラム、メタボ改善プログラムも追加しました。また、メンタル疾患改善用として睡眠障害への対策と、疲労回復プログラムもリリース済みです。

現代では、うつ病の患者が急増しています。それにもかかわらず、ストレスチェックに引っかかって産業医面談が必要となった方の8割以上が面談を拒否するのです。これでは予防も改善も難しいので、その対策としてメンタル疾患改善用のメニューを追加し、企業向けに提供することにしました。これは弊社独自のアプローチであり、メンタル疾患を画期的な方法で改善出来ると自負しています。

今後もアプリのバージョンアップを進め、さらにメニューを増やしていく予定です。

スマリハ導入介護施設を増やし、介護現場の問題解決に取り組みたい

ーー現在健康保険組合をターゲットにしていますが、「将来的にこういったターゲット層にも攻めていきたい」といった構想はありますか?

久保田明史:
病院・クリニック経由での販売、消費者へ直接のご提供(D2C)を進めています。その他さまざまな業種で健康関連サービス・商品を提供しているような企業様でコラボできるところを増やしたいと思っています。その中でも、介護施設は相性がいいと思っています。

たとえば介護施設では体を動かすことが大切であるため、運動を行いますが、全員が同じ内容に取り組みます。しかし、手が痛む人や足が動かせない人など抱えている問題は人それぞれであるため、効果的であるとは言いにくいという問題が起こります。

そこでスマリハPROを使えば、個々人に合わせたリハビリプログラムに取り組んでもらうことができるのです。これにより間違いなく個々人のQOLは向上します。スマリハを導入した介護施設を増やし、1人でも多くの方の問題を解決できればと思っています。

遠隔リハビリ業界の「デファクトスタンダード」を目指したい

ーー今後目指していくビジョンがあれば教えてください。

久保田明史:
主に2つあります。

1つ目は、「遠隔リハビリといえばアイスリーメディカル」といわれるようなデファクトスタンダード(事実上の標準)の企業になることです。日本のリハビリや運動療法のほとんどは、オンラインに置き換えられるものばかりです。

しかし、遠隔医療は進んでいるにもかかわらず、遠隔リハビリはいまだに浸透していません。リハビリは遠隔で行うのに一番向いているものだと思っているので、弊社が日本に浸透させたいと思っています。

2つ目は、スマリハを未病改善のナンバーワンアプリに成長させることです。
国も医者も、未病対策や病気予防が大事であるという情報は発信していますが、弊社のような予防アプリを持っている企業は少ないでしょう。

弊社は、病気にかかった方や未病の方をサポートするサービスを提供し、その健康状態をマイナスからプラスにし続けていける企業でありたいと思っています。

編集後記

一時は体を壊し立ち止まるも、その中で縁もありヘルスケア事業に取り組んできた久保田社長。

日本では数少ない遠隔リハビリ事業を確立させ、日本の予防・治療に大きく貢献している。今後は、遠隔リハビリのデファクトスタンダードとなることを目指し、さらなる事業の成長を進めていく株式会社アイスリーメディカルから、今後も目が離せない。

久保田明史(くぼた・あきふみ)/1965年、静岡生まれ。九州大学経済学部卒業。株式会社神戸製鋼所、プレクスター株式会社(現シナノケンシ株式会社)を経て、1997年、日本初の本格的ECのASP(月額制で手軽にECサイトを構築できるシステム)を手がけた株式会社リンクマネージを設立。同社を上場企業へ譲渡後、2006年に東洋医療を提供するスマイルアンドサンキュー株式会社を設立。そして2023年、ヘルステックを推進する事業を株式会社アイスリーメディカルへと分社させ、代表取締役社長に就任。