※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

ものづくりの現場ではファクトリーオートメーション(以下、FA)が不可欠とされ、高性能な機器に加えて昨今はロボットが台頭。技術者の高齢化や人手不足、働き方の変化といった課題から、FAや産業用ロボットの市場規模はさらなる拡大が予測されている。

そんなFA機器や産業用ロボットの老舗商社として、多数の現場から信頼されているエヌシーオートメーション株式会社。自らを「技術商社」と呼び、製品導入だけでなく、課題解決やコンサルティングを行っていることが特長だ。3代目である代表取締役・西垣圭悟氏に、経営や人材にかける思いを聞いた。

宿命を背負い、「技術商社」の誇りを持って歩む

ーーもともと、家業を継ぐことは考えていましたか?

西垣圭悟:
実は会社を継ぐつもりはなく、大学に進学し、卒業後は音楽関係の仕事を希望していました。しかし、長男である私の宿命のようなものを感じ、弊社が正式販売店を務めるオムロン株式会社に就職。制御機器などの営業販売を通じて、機器や現場について学びました。

弊社に入社後は現場からスタートし、製造会社や工場にルート営業する日々でした。その中での最大の成果は、販路がなかった三重県のお取引先を開拓したことです。1年以上かけて、いくつもの新規契約を結び、「三重オフィス」の開設に至りました。

ーー「技術商社」という呼称の意図をお聞かせください。

西垣圭悟:
一般的な商社の仕事は、注文された商品をメーカーから仕入れて納品することですが、弊社は違います。私たちの最大の特長であり、強みは「SE(セールスエンジニア)」の存在です。SEは各事業領域の専門性を持ち、技術によっては国家資格も有するスペシャリストたちです。営業スタッフと共にお客様のご要望を直接ヒアリングし、最適な製品と生産ラインのプランニングをご提案してはじめて購入いただきます。

もちろん、機器のセッティング、メンテナンス、新たな課題解決へのご提案など、導入後もお客様に寄り添い続けます。単なる製品販売ではなくコンサルティング的な役割を担い、「技術」という付加価値を加えて、課題解決のソリューションを提供する。だから、弊社は「技術商社」なのです。

「技術」とともに、もう1つ大切にしていることがあります。今は大きな機械ですら、人と接することなくインターネットで簡単に購入可能です。

ただ、私は人と人が顔を合わせて話をし、お互いが納得して売る・買うことが本来の商売の姿だと思っています。価格と納期の遵守はもちろん、社員の誠実さでお客様と信頼関係を築いて、「いつ届くのだろう」といった不安を抱くことなく、安心して購入してもらう。この商売の原点を継承していきたいです。

昔ながらの互助親睦で結ぶ社員の絆

ーー技術や人材をどのように根づかせていますか。

西垣圭悟:
人材は「人財」と称されるように会社の宝なので、採用・育成・定着は私の重要なミッションに位置づけています。弊社は風通しが良く、誇りは社員の真面目さ。半期に1度の全社員参加の方針発表会と懇親会の開催、各拠点や社員の近況を伝える「社員会だより」の発行、他社では少なくなっている社員旅行の実施、各種イベントを企画する社員会、環境や安全衛生の向上を図る委員会など、社員の交流、主体的な活動も活発です。

私の執務室のドアはいつも開けっ放しなので、よく社員が相談に来ますね。

また、弊社は代表取締役CEOと取締役社長のツートップ体制を採用しています。私が経営全般を統括し、社長は営業本部長を兼任して事業推進・強化に注力することで会社運営や意思決定の迅速化を図っています。

加えて「技術商社」として社員のスキルアップにも注力し、新入社員研修、メーカー研修、リーダー・管理職研修と経験や能力、業務内容に沿ったプログラムを随時実施。成果や目標達成に応じて報酬を支給し、士気向上を図っています。

お客様も社員も「したい!」を叶えていく

ーー今後の展開や目標をお聞かせください。

西垣圭悟:
ロボティクスやAIといった新たな技術への施策として、「ロボット事業」に着手し、協働ロボット市場をリードするオムロンのロボット製品契約販売店、ユニバーサルロボットの正規代理店として製品の提案、販売を開始しました。

また、事務系の定型作業を自動化するRPAと経営資源を一元化して有効活用するERPによって、社内システムを刷新しました。全社的な生産性の向上を目指して業務の平準化にも取り組んでいます。

2024年からの中期経営計画では、“「したい!」を叶える企業へ!”というスローガンを掲げました。お客様のご要望はもちろん、社員がやりたいことを実現する意味も含まれ、もちろん弊社は積極的にチャレンジできる環境が整っています。

事業に関する専門性を備えているだけでなく、真面目でコミュニケーション能力が高い人、日本のものづくりを盛り上げたい、自己成長を続けたいといったビジョンを持つ人と「150億円企業」を目指していきたいです。

編集後記

クライアント、社員にかかわらず、終始、人への深い思いにあふれていた西垣氏。最先端機器を取り扱いながら、古き良き時代の商売と会社のあり方も大切にするギャップも印象的で、社員の帰属意識や定着率の高さがうかがえた。これからも心やさしき経営者と実直な社員たちが、日本の誇る「ものづくり」を支えてくれることだろう。

西垣圭悟/1980年愛知県生まれ。2003年産能大学(現産業能率大学)卒業後、オムロン株式会社に入社。4年間の修業期間を経て、2007年、実家であるエヌシーオートメーション株式会社に入社。2017年、同社代表取締役に就任。