※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

​三興塗料株式会社は、東京都板橋区に本社を構える、塗料・防水材・塗装用具の専門商社だ。​創業以来50年以上にわたり、日本ペイントやエスケー化研などの国内主要塗料メーカーと信頼関係を築き、主に首都圏の塗装会社向けに製品を卸売りしている。有志によるごみ拾いや塗装ボランティアなど地域貢献活動にも注力し、若手社員の活躍も増えているという。「人を大切にする経営」を掲げる同社の清水雄一郎代表取締役に、社内におけるさまざまな取り組みや、今後の展望をうかがった。

「人を大切にする経営」を実践し、お客様も従業員も大切にする

ーー社長に就任するまでのご経歴を教えてください。

清水雄一郎:
大学卒業後は、弊社の仕入れ先である日本ペイント株式会社(以下、日本ペイント)に入社し、3年間お世話になりました。日本ペイントでは大阪の支店に配属され、塗料の研究や製造に始まり、営業や塗料の仕様選定、現場での対応、装飾、受注まで一通りのことを学びました。いずれ父が立ち上げた弊社を継ぐつもりだったので、日本ペイントでの3年間は、さまざまなことを習得できた貴重な時間でしたね。

その後、2007年に弊社へ入社し、2012年には常務に、そして2015年には代表取締役社長に就任。役員に就任した頃から「人を大切にする経営」について深く考えるようになりました。

ーー「人を大切にする経営」とはどのような考え方ですか?

清水雄一郎:
私が提唱する「人を大切にする経営」とは、目の前にいる社員とその家族を大切にするという考え方です。弊社のような人の手に大きく頼る労働集約型の会社は、人がいないと事業の継続が難しくなります。そこで、従来の「お客様第一主義」の考え方に加えて、既存社員も含めた全社員を大切にする方針を掲げました。

これを実行するために、毎年経営計画を策定して私の考えを言語化した“会社の教科書”のようなものをつくり、社内全体に共有しています。弊社は社員の平均年齢32歳という若手中心の会社ですが、経営方針の共有を徹底したことにより、ありがたいことに価値観の違いによる離職者はほとんどいなくなりました。

自社調色と自社配送で短納期を実現

ーー貴社の事業内容や強みを教えてください。

清水雄一郎:
弊社は、塗料の卸売業を営んでおりますが、自社で調色(※色を混ぜ合わせて新しい色をつくること)を行い、自社便で迅速に配送する体制を整えている点が強みだと自負しています。塗料販売店では、お客様からの注文後にメーカーへ発注し、取り寄せてから塗装業者へ届けるという流れが一般的です。しかし、弊社では取り寄せを介さずに商品をお届けできるので、発注から約1日という短期間での納品を可能にしています。

それにより、短納期で他社との差別化を図ると同時に、お客様が余裕をもって施工準備を進められる環境づくりに貢献できていると思います。

ーー本業以外に、どのような活動を行っていますか?

清水雄一郎:
若手社員を中心に、余った在庫の塗料を使って、街の公共トイレなどを塗装するボランティア活動を行っています。これは、塗料のすごさを発信したいと考えて始めた活動で、実際に扱う塗料を使用することにより、社員に商品知識が身につくというメリットも生まれました。地域に貢献する活動として、社員一同、真摯に取り組んでくれています。

沖縄の新拠点で「塗料販売店のトップ企業」を目指す

ーー今後はどのようなことに注力したいとお考えですか?

清水雄一郎:
新規取引先の開拓と採用強化に注力したいと考えています。

取引先の開拓については、既存の塗装業者に加え、現場対応に不安を抱えている施工業者の方にも弊社のサービスは有効であると考えています。現場作業で直面する課題に対し、長年の経験と組織力をもって解決策を出せるのが弊社の特徴の一つです。

その対応力を評価していただき、現場の職人の方やメーカーからの口コミで新規取引先が増えているのですが、展示会への出店なども行いながらゼネコンや工務店との取引拡大も進めていきたいです。

採用に関しては、業務に余裕をもって取り組める体制を整えるために、年間2〜3名の新卒採用を目標としています。最近は、既存社員からの紹介によるリファラル採用も増えました。社内文化と調和できる人材が入社してくれたら、嬉しいですね。

ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。

清水雄一郎:
新たに沖縄県に研究施設を兼ねた拠点をつくり、東京との2拠点体制でビジネスを展開したいですね。沖縄県は、数多くの塗料産業の研究拠点が集まる、塗料産業のホットスポットです。例えば、宮古島は東京に比べて紫外線量が3倍程度なので劣化も3倍速く、その環境を活かして、宮古島では、外壁塗料の耐久性を調べる試験などが行われています。

業界の最先端技術が詰まったエリアにも拠点を持つことで、自社でも塗料の研究を進めて、お客様に満足してもらえる商品づくりをしていき、「塗料販売店のトップ企業」を目指します。

編集後記

清水社長は「弊社では、収益率を上げて社員の給与に還元する取り組みを行っている」と語り、同業他社よりも10%以上高い給与水準を目標にしているそうだ。この取り組みが功を奏し、同社では20代〜30代の若手社員が活躍しているという。若手の柔軟な発想を取り入れ、成長を続ける同社に、さらなる飛躍を期待させる未来の片鱗を見た。

清水雄一郎/1981年、東京都出身。明治大学商学部卒業。2004年に日本ペイント株式会社に入社し3年の修業期間を経て、2007年に家業である三興塗料株式会社へ入社。2015年に同社代表取締役に就任。「人を大切にする経営」を実践しているほか、社会貢献活動としてペイントボランティアの活動にも注力している。