2004年に創業し、16,000施設への導入実績を持つ千株式会社。幼稚園・保育園のスクールフォト撮影をシステム化したサービス「はいチーズ!」をリリースし、現在も事業や取引先の幅を広げている。起業のきっかけや成功の要因、今後の展開について代表取締役社長の千葉伸明氏に話をうかがった。
経営一家で生まれ育ち、起業のアイデア探しの旅へ
ーー社長のご経歴をうかがえますか。
千葉伸明:
父や祖父母をはじめ、親族のほぼ全員が経営者という家系で育ちました。幼少期からの夢はサッカー選手でしたが、高校時代にビジネス教養本『ユダヤの商法』(藤田田・著、ベストセラーズ)を読み、起業を意識するようになりました。高校卒業後は、まずフルコミッション(完全歩合制)の営業職に就いたのですが、忙しそうな父をずっと見てきたので、「働く」とはがむしゃらに仕事をすることだと思っていましたね。
ーー起業のタイミングは計画していたのでしょうか?
千葉伸明:
初めて立ち上げた会社が成功しなかったため、有線ブロードネットワークス(現:株式会社U-NEXT HOLDINGS)に入社して学ぶ時間をつくりました。宇野社長には「会社をつくるなら新しいことをしなければ意味がない」と教わり、アイデア探しに対する認識が改まりました。
法人向けに営業をする中で、約300人に及ぶ経営者と会話する機会を得ました。特に印象に残ったエピソードが、「子どもの行事を録画して、DVDに焼いて配ったら保護者に喜ばれた」というものです。そこから今の事業の着想を得て、2004年に弊社を設立しました。
Amazonの最新テクノロジーを活用したブルーオーシャン戦略
ーー現在の事業内容をお聞かせください。
千葉伸明:
2006年に「はいチーズ!」という幼稚園・保育園向けブランドを立ち上げ、スクールフォト撮影とインターネット写真販売を開始しました。当時は完全なるブルーオーシャンで、先発企業としてのポジションを勝ち取れたと思います。
撮影カット数は一般的な撮影枚数の5〜10倍で、集合写真や複数人の構図よりも個人にフォーカスしているのが特徴です。「うちの子の写真が少ない」というクレームを抑えられるほか、保護者からの集金・写真のプリント・配送・問い合わせ対応も弊社が行うため、先生方の負担を大幅に減らせます。
また現在は、卒園式・卒業式のアルバム作成サービス、保育業務を支援するICTシステムの提供、給食の食材配達・食育サービスといった事業も行っています。
ーー事業が軌道に乗った秘訣を教えてください。
千葉伸明:
AIを活用した画像および動画分析サービス「Amazon Rekognition」を日本で初めて導入しました。当時、技術責任者をアメリカ国外に呼んだのも弊社が初であり、アマゾンジャパン合同会社の社長も「Amazonの人工知能を一番活用しているのは『はいチーズ!』の千だ」と言っていました。システム面の強化により、創業当初の課題だったマネタイズもうまくいくようになりました。
ーー独自の社風はありますか?
千葉伸明:
「みんな、笑顔になぁれ。」というスローガンがあり、「トップ会議で笑顔がある会社はめずらしい」とよく言われます。昔は会議中に冗談を言う人が私は苦手でしたが、自分の会社を始めてからは笑いで場が和むことの良さがわかりました。他社とは異なる形で成長しようと思うようになったこともあり、しっかり全社でけじめをつけつつも、私たちは笑顔のあるオフィスで仕事ができています。
子ども・社員・会社の「成長」にフォーカスした未来予想図
ーーお取引先の幅も広がっているのでしょうか。
千葉伸明:
保育園や幼稚園、学校だけでなく、スポーツクラブや習い事など、各種スクールとのお取引も増やしています。「先生方の負担を減らして教育・保育に集中してもらう」という目的を少しずつ達成できたと思う一方で、サービスを展開する中で見えてきた現場の課題があると感じています。出生数が減る日本国内で事業を分散しつつ、既存サービスのアップデートを続けて、これまでの感謝の気持ちを形にしていきたいですね。
ーー強化したい採用部門はありますか?
千葉伸明:
僕も含めて社員もさらに成長する必要があるので、1人当たりの生産性アップに力を入れていきたいですね。子どものためになる環境づくりにあたっては、新卒社員にも「成長にフォーカスする」という価値観を持ってもらいたいと思います。
スペシャリストの集団をつくるためには、フォトグラファー・ビジネス・システムと各部の採用強化も必要です。最新のテクノロジーを使い、幼稚園・保育園の業務効率を上げるサービスを前提としているので、優秀なエンジニアを最も求めています。
「焦らずに力をつけてほしい」――未来の起業家と仲間への思い
ーー起業を目指す方や入社志望の方へメッセージをお願いします。
千葉伸明:
僕は25歳で起業しましたが、焦らなくてもいいと思います。一生懸命に目の前の仕事をこなして、いろいろな経験を積んでから行動した方が、起業時のストレスを減らせるでしょう。やると決めたら業界のことを徹底的に調べて、ともに働く仲間を大切にしてください。
今後はさらに深いところを追求していき、会社の仲間やお客様が幸せになれる日本一の会社を目指していこうと思います。やる気がある人にとっては、こんなに面白いことが残っている市場は他にないかもしれません。子どもにかかわる仕事をしたい人は大歓迎です。
編集後記
経営者として成功するべく、常に新しいことに挑戦してきた千葉社長。事業の種を見つけたエピソードからも、精巧なカメラのような感度の高さがうかがえる。教育・保育の現場で働く人々を手助けすることが、子どもの成長と思い出を守ることにもつながる。画期的なビジネスを通じて生まれる幸せの連鎖に、心が温かくなった。
千葉伸明/2004年に千株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2006年より園向けサービス「はいチーズ!」としてスクールフォト撮影とインターネット写真販売を開始。2021年、別ブランドとして提供していた保育業務支援ICTや動画サービスを「はいチーズ!」ブランドとして統一。さらに「はいチーズ!ベジ」を開始し、事業を拡大する。各サービスの連携を強め、快適なサービス提供を目指した総合保育テックサービスへと成長させ、現在に至る。