※本ページ内の情報は2024年8月時点のものです。

リックス株式会社は、製品を仕入れて販売する商社機能と、自社製品の製造機能を併せ持つ老舗のメーカー商社だ。日本だけでなく7か国12か所に進出し、国内外合わせて45を超える拠点を構えている。

リックスならではの強みや入社したきっかけ、「世界のものづくりの課題解決屋」を目指す思いなどについて、代表取締役社長執行役員の安井卓氏にうかがった。

販売・技術・製造・サービスで産業界の課題解決をサポート

ーーまずは貴社の事業概要を教えてください。

安井卓:
弊社は製造現場で使われる設備や部品、消耗品などの仕入れと販売、また自社製品の販売を行うメーカー商社です。

一方で、技術開発センターでは自社製品の根幹を成す、水や気体、油などの流体を制御する「流体制御技術」の開発も行っています。さらに、ものづくりの現場で生じる困りごとをお聞きし、お客様の課題解決をサポートしています。これまで培ってきた経験やノウハウ、ネットワークを活かし、適切な対処法を提案しています。

これら「販売商社」「メーカー」「研究開発」「サービス」の4つの機能を融合した事業を展開しています。

※【3分でわかる】もっと知りたい!リックスのこと

ーー貴社の強みは何でしょうか。

安井卓:
現場密着型の営業スタイルが強みです。先方の工場へ出向き、お客様と対話を重ねながら適切な商材を提案しています。なお、営業だけで解決できない場合は、開発部隊が受け皿となり、最善策を提案できる体制が整っています。

また、弊社はメーカー機能も持ち合わせているため、お客様の課題解消につながる製品を自社でつくれるのもメリットです。さらに商社として、メーカーの垣根を超えて適切な製品を提案できるのも大きな強みです。

義父からの誘いを受け入社。英語の習得に苦労した留学経験

ーー貴社に入社したきっかけは何だったのですか。

安井卓:
妻と結婚する際、5代目社長を務めていた義理の父から「うちで働かないか」と誘っていただいたのがきっかけです。

前職では電線メーカーで技術職をしていたので、商社に入って活躍できるのかと躊躇しました。しかし、製造部門があると聞き、それなら技術者出身の私も役に立てるかもしれないと思い、入社を決めました。

ーー入社後は社内の方々とどのようにコミュニケーションを図ったのでしょうか。

安井卓:
前職では仕事だけではなくて、職場の野球チームに参加し、コミュニケーションをうまく築いてこれました。リックスに入ってからもそれに倣って、仕事では色々な会議に顔を出したり、様々な部署の懇親会などに積極的に出て、社内の人脈を構築してきました。仕事以外でも一緒にイベントを企画したり、参加したり、また一緒にスポーツをやったり、観戦したりしながらコミュニケーションを図ってきました。

また、さまざまな部署を経験させていただいたのもよい経験になっています。普段から、円滑な社内コミュニケーションを意識していたので、仕事がスムーズに進むようになりました。

ーー経営者になることを意識し始めたのはいつごろですか。

安井卓:
入社から1年経った頃に、先代から海外へ留学し「経営」について学んでくるように言われ、その時に薄々ですが将来的には私に経営を任せるお考えなんだと察しました。

その後イギリスに渡り、英語を身に付けながら経営学の勉強に励みました。ただ、基礎となる英語を習得するのに苦労し、この時期がこれまでで一番つらかったように思います。

しかし、結果的には、さまざまな国籍の方々と触れ合えた経験は貴重でしたし、最先端の経営手法を学べて、私自身とても刺激になりました。先代から「現地に行って本物に触れた方がいい」と言われた意味がよく分かった経験でした。

プライム市場へ上場後、コロナ禍に抱えた大きな不安

ーープライム市場への上場を決めた理由を教えてください。

安井卓:
海外展開する際にアドバンテージになること、人材採用のアピール材料になると考えたからです。また、審査基準が厳しいプライム市場の上場を目指し、会社としてチャレンジする姿勢を社員に見せたかったのも理由のひとつです。

ーー社員の働き方改革ではどのような取り組みをしてきたのですか。

安井卓:
仕事をしながらプライベートの時間も充実させる、ライフワークバランスを意識した改革を行いました。

勤務時は服装を自由に選べるようにし、テレワークも取り入れてライフステージに合わせた働き方を推奨してきました。また、給与にあらかじめ残業代を含むみなし残業を撤廃し、残業時間の削減にも努めています。

当初は社内から反発もあり、理想と現実のギャップに苦労しました。今は残業ゼロを強制するのではなく、できるだけ労働時間を短縮できるよう模索しています。

ーーコロナ禍では先行きが不透明ななか、不安も大きかったのではないでしょうか。

安井卓:
当時はまるで出口が見えない暗闇の中にいるような感覚でしたね。創業から110年以上続いてきた黒字の記録を途絶えさせてしまうのではないかと、不安で押しつぶされそうでした。

そんなときに、先代社長でもある義理のおじから「明日は晴れ」と前向きな言葉をかけてもらったことが、大きな支えになりました。そして、コロナ前から積極的に海外展開していたことが功を奏し、中国事業が早く立ち直ったことで光が見え始めました。

世界のものづくりの課題を解消する企業へ

ーー今後注力していきたい点を教えてください。

安井卓:
オリジナル製品の販売構成比率を高めることです。2023年度までに40%まで伸ばすことを目標としていましたが、30%程度に留まっています。この差を埋めるため、外部の知恵を借りながら新製品の案を出すなど、種まきをしている段階です。

また、2024年11月から稼働する「リックス協創センター」を活用し、他社や国の機関、大学などと連携しながら製品開発を進めていく予定です。このように体制を更に強化し、お客様の課題の解決につながる新製品開発に力を入れていきます。

ーー海外展開についてはどのように考えていますか。

安井卓:
これまでは本社主導でアジア、ヨーロッパ、アメリカに拠点を築いてきました。今後は現地主導で拡大していきたいと考えています。また、海外展開にあたっては、組織のトップが各国の状況を把握することも大切です。管理職では海外経験がない人が多いので、現地に行って国の情勢や生活環境などを自分の目で見てきてもらおうと考えています。

ーー最後に今後の目標を教えてください。

安井卓:
私たちは「世界中のものづくりの課題解決屋」になることを目指しています。「リックスに頼めば何とかしてくれる」と、お客様から信頼していただけるよう尽力します。この目標に少しでも近づけるよう、まずは中期経営計画の施策を着実に実行し、業績の向上を目指します。

編集後記

結婚を機に、創業から110年以上黒字化を維持してきた企業のトップを任された安井社長。プライム市場への上場やリックス協創センターの設立など、新たな挑戦を続ける姿勢には、現状に甘えず成長を目指す思いを感じた。産業界の課題解決を支援するリックス株式会社は、これからも自由な発想でものづくりの現場を支えることだろう。

安井卓/1978年佐賀県生まれ。九州大学大学院総合理工学府物質理工学専攻修了、古河電気工業株式会社に入社後、2006年4月にリックス株式会社に入社。事業企画、営業本部などを経て、2019年より現職。