※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

請求書の回収から振込までを自動化するサービスや、請求書をもとに現金化するサービスを展開しているペイトナー株式会社。同社は、AIやOCR技術を活用し、最短10分での審査や自動振込など、革新的なサービスで急成長を遂げている。創業から5年足らずで、すでに約7万人のフリーランスユーザーを抱える同社。

その成長の裏には、大手企業からベンチャー企業へ、そして起業へと歩んできた代表取締役社長兼CEOである阪井氏の、独自の経験と視点がある。フィンテック業界の新星として注目を集める同社の軌跡と金融サービスについて、阪井氏にうかがった。

好奇心が導いた、フィンテック業界への挑戦

ーーNTTドコモからベンチャー企業へ転職した経緯を教えてください。

阪井優:
当時は、iPhoneが初めて出てきた時期で、インターネットの過渡期のようなタイミングでした。内定をいただいた株式会社NTTドコモに入社し、ショップで3ヶ月間研修を受けたり、法人営業の研修を受けたりしていました。

半年後に支店へと配属され、そこで3年ほど働いていると、ベンチャー企業のような環境で挑戦してみたいという気持ちがどんどん強くなっていきましたね。そのタイミングでNTTドコモを退社して、フィンテック業界でカード決済をやっていたコイニー株式会社(現:STORES株式会社)という、当時20人ほどの従業員数だったベンチャー企業に飛び込んだのです。

ーーその後、起業を決意したきっかけは何だったのでしょうか?

阪井優:
コイニーに入社して1年ほど経ったころ、たまたま知り合いの方から「週末に投資家向けのプレゼン大会があるので、参加してみないか」と誘われました。気軽に参加し、実は現在、展開しているサービスの構想についてプレゼンしたところ、インキュベイトファンド 代表パートナーの赤浦徹さんが「面白いビジネスだ」と興味を持ってくださったのです。「来月、起業しよう」と言われたことは、さすがに予想外でしたね。

そこからコイニーでの引き継ぎや起業の準備などを経て、翌年の2019年4月に独立。最初の資金調達を8月に終え、9月末にサービスをリリースしました。そのリリースには多くの反響をいただき、2020年に入ってさらなる資金調達を計画していた矢先、コロナ禍に見舞われたのです。

多くの投資家が新規出資をストップし、窮地に立たされました。起業の声掛けをしてくれた赤浦さんが追加で出資してくださったおかげで、なんとか乗り越えることができました。激動の1年でしたね。

個人事業主に特化したサービス展開

ーー現在の主力事業について教えていただけますか?

阪井優:
現在、請求書に関連するサービスを2つ展開しており、1つはフリーランス向けの前払いサービス「ペイトナーファクタリング」、もう1つは2022年から始めた請求書の回収と振込のサービス「ペイトナー請求書」です。「ペイトナーファクタリング」は、最短10分で審査し、フリーランスが取引先に送った請求書の未入金分を即時に前払いするサービスですね。

一方、「ペイトナー請求書」は、登録された請求書をOCRという文字を認識する技術でデータ化し、期日に自動で振込をおこなうサービスです。月額無料から利用でき、振込手数料も1件300円という低価格で提供しています。お客様からは「業務がとても楽になった」という声をいただくことが多いですね。

ーー他社との違いはどこにあるのでしょうか?

阪井優:
「ペイトナーファクタリング」はフリーランスや個人事業主にフォーカスしているのが特徴です。法人向けのサービスは他社にもありますが、私たちは調達手段が限られている個人の方々を対象にしています。最短10分という圧倒的な審査の速さと、簡単であることが強みです。

また、請求書の振込サービスでは、私たちが全ての振込をお客様に代わっておこないます。送られてきた請求書の登録から振込サービスまで、一気通貫のサービスは、国内ではまだ珍しいと思いますよ。お客様は管理画面で全ての請求書を一元管理でき、振込の手間からも解放されるのです。

ベンチャー企業ならではの瞬発力で、想いを形に

ーー今後の事業展開についてお聞かせください。

阪井優:
私たちのミッションは「成長する全てのビジネスの、お金のストレスをなくす」です。現在の2つのサービスだけでなく、フリーランスや個人事業主の方々が抱える、さまざまなお金にまつわるストレスを解消できるサービスを展開していきたいと考えています。決済サービスなど、新たな分野への参入も視野に入れており、時間をかけて良いものを提供していきたいですね。

具体的な目標としては、3年後に年間の利益を10億円とすることを目指しています。現在、「ペイトナーファクタリング」は約6〜7万人のフリーランスの方に使っていただいていますが、これを60〜70万人規模まで拡大したいですね。「ペイトナー請求書」も現在の数百社から、100倍の規模を目指します。

ーー最後に、求める人材像について教えてください。

阪井優:
好奇心が旺盛な方を求めています。ベンチャーならではですが、さまざまな業務があるので、自分の専門外のことにも興味を持ち、積極的に取り組める方がマッチすると思います。私自身、大企業からベンチャーに転職した経験がありますが、大企業からの転職も大歓迎です。小さな組織で、何か新しいことにチャレンジしたいという方にぴったりだと思います。ぜひ一度、お話したいですね。

編集後記

現金を毎回下ろすのがめんどうで、クレジットカードを駆使していた当時。キャッシュレス決済が主流ではなかったときから「今後、絶対にキャッスレスの時代が来る」という肌感覚を持ち、大手企業からベンチャー、そして起業へと歩みを進めた阪井氏。

時代を読む力と、根本にある「人々のお金にまつわる悩みをなくしたい」という思いを愚直に体現している姿には心を奪われる。AIやOCRなどの技術を活用したサービスによって、お金のストレスがなくなる日もそう遠くないだろう。

阪井優/1989年、大阪府堺市生まれ。智辯学園高等学校、大阪教育大学を卒業後、株式会社NTTドコモを経て、コイニー株式会社(現:STORES株式会社)に入社。事業開発として地域金融機関との提携、テンセント・ホールディングスの決済代行サービス「WeChat Pay」に関する業務に従事。2019年にペイトナー株式会社を設立。「TechCrunch Tokyo2019」ファイナリスト、「2021 Forbes JAPAN 100」に選出される。