共働き世帯の増加に伴い、日本でもIoT住宅の需要が増えることが予想される。2021年12月に市場調査会社のREPORT OCEANが発行したレポートでは、アジア太平洋地域のスマートホーム・ヘルスケア市場は、2021年から2030年にかけて年率31.9%で成長すると予測されている。
そんな中、最新のAI・IoT賃貸住宅を強みに業績を伸ばしている不動産会社がある。それが株式会社robot homeだ。DXによって成長を遂げた同社の事業とはどのようなものなのか。代表取締役CEOの古木大咲氏に、同社の事業内容と今後の展望についてうかがった。
成長率の高い「AI・IoT」と「robot home」の2本柱で事業を展開
ーー貴社の主な事業内容について教えてください。
古木大咲:
弊社はあらゆるクライアントへDX総合支援サービスを展開し、長年培った不動産業とIT開発・運用の経験を活かしたサービスを行っています。主な事業内容は、AI・IoT事業とrobot home事業の2つです。特にrobot home事業は営業利益率50%で売上が非常に伸びています。
テクノロジーを扱うノウハウがあることが、弊社ならではの強みといえるでしょう。AI・IoT事業では、IoTシステムを自社開発して物件へ実装し、その後も保守を手がけたり、他社に対してITのコンサルティングをしたりしています。
ーー具体的にどのような商品やサービスを提供していますか。
古木大咲:
AI・IoT事業では、インターホンシステムやスマートロック、開閉センサーなどIoT商品の開発・販売と保守のほか、賃貸経営を自動化するためのプラットフォーム「robot home」の継続的な開発と運用を行っています。
他にも、IoT賃貸住宅を管理する入居者アプリ「robot home kit」を開発しています。これにより、物件の付加価値や防犯機能が高まり、入居者の満足度を高めることができます。また、家賃を高めに設定できるなど、物件オーナーにもメリットが生まれるシステムとなっています。
robot home事業の内容は、IoTデザイナーズアパートの販売・管理で、会員向けに、オンライン上で投資用不動産を閲覧、購入できるサービスです。賃貸経営による安定した収入の確保や、物件の売却、再投資などができるシステムを運用しています。昨年度の売上は81億円で、営業利益は16億9000万円でした。現在、弊社の事業はrobot home事業だけで黒字化している状態です。
仲介業者向けシステムの運用と好立地で驚異の入居率98%をキープ!
ーー貴社の中長期的な目標について聞かせてください。
古木大咲:
robot home事業でアパートを販売して管理物件を増やし、ストックを拡大することですね。しっかりとマーケティングして、ターゲット選定を行いながら販売促進し、見込み顧客を獲得していきます。具体的には、robot homeのオーナーアプリに会員登録しているオーナー会員に対する物件販売の促進です。
現在、robot homeの会員数は3200名以上で、その内2200名弱のオーナー会員が弊社の管理物件を2万6500室ほど所有しています。棟数に換算すると約3000棟で、1人あたり約1.5棟を購入していただいている計算で、この会員の中からさらに有力な見込客が生まれます。
ーー物件の入居率が98%と驚くほど高いのですが、その理由はどこにあるとお考えですか。
古木大咲:
全国の主要都市の駅から徒歩10分圏内という好条件の立地に、デザイン性の高い賃貸住宅を建てていることが大きいと思います。加えて、他社と差別化したIoT機器を設置していることも、付加価値を高めているといえるでしょう。
また、弊社では「robot home for agent」というシステムを運用しており、8700社以上のリーシング業者が弊社管理の物件を検索、申し込みから内見の予約、契約までできるシステムです。仲介業者が使いやすいように、幅広く情報提供できていることも、入居率の高さに大きく影響していると考えられます。
ZEHの賃貸物件を普及させエネルギー問題にも配慮
ーー貴社の今後の展望を聞かせてください。
古木大咲:
弊社はDXにより進化した賃貸住宅を、オーナー会員や入居者の方がアプリで管理できるシステムを構築してきました。コンセプトメッセージは「テクノロジーで、住宅を変え、世界を変えていく。」です。
次のステップとして、エネルギー問題にも取り組みたいですね。具体的には、太陽光発電によって生み出すエネルギーと消費するエネルギーの差分が、25%くらいに収まるような設計をしていきたいと考えています。そして、エネルギー収支をゼロ以下にするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を賃貸物件の標準にしていきたいですね。
編集後記
2022年の段階でインターネットに接続できる家電の普及率はわずか15.8%で、日本におけるIoT住宅の普及率はまだまだ低い。そのような中でもいち早くDXに取り組み、自社開発によってIoT住宅の市場開拓に乗り出した古木社長の先見の明に感服する。
普及率が低いということは、将来的に市場が活性化することの裏返しでもある。ZEHの賃貸物件の普及を目指すなど、時流に沿ったビジネス戦略を掲げる同社の取り組みは、今後不動産業界を席巻するといっても大げさではないだろう。
古木大咲/1979年、鹿児島生まれ。飲食店・コンビニなどのアルバイトを経て、福岡県内の不動産会社に就職。2005年に独立した後、2006年に株式会社インベスターズを設立。現在は株式会社robot homeに商号を変更し、同社の代表取締役CEOとしてAI・IoT事業とrobot home事業を展開している。