※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

今や当たり前となった中古不動産販売。この業界でAIを駆使し、急成長している会社がある。ビッグデータを活用して進み続ける株式会社property technologiesだ。

今回は代表取締役社長の濱中雄大氏に起業のきっかけや、これまでの困難、今後の展望などについて話をうかがった。

「自分でやらなきゃ」という薄れることのない強い思い

ーー会社を立ち上げようと思ったきっかけを教えてください。

濱中雄大:
小さいころから両親が商売をしていたので、父親の会社の跡を継ぐという感覚でいました。私は広島県の尾道市という造船業が盛んな地域の生まれで、父親は造船関連の仕事をしていました。

ところが、高校三年生の受験のタイミングで父親の会社が倒産したのです。造船業が不振に陥るという時代背景があり、そのとき初めて「自分でやらなきゃいけないな」という思いを持ちました。

その後、東京での大学生生活を経て就職したのですが、時代はバブルで不動産業は花形といわれていました。土地がどんどん値上がりしていく中、不動産業が伸びている背景があったので、「不動産会社を自分でやりたい」と、短絡的に儲かっている業種を選択し、1988年に株式会社ミヤマ(現:レオパレス21)に新卒で入社しました。

入社時は、富裕層向けの節税効果を目的としたアパート販売を行っていました。しかし、バブル崩壊後、税制改革が一気に進んだため、ぱったりと不動産が売れない厳しい時代が数年続きました。そこで、土地の有効活用提案を目的としたアパート建築事業へ方針転換します。

私は当時24歳くらいでしたが、トップセールスだったので支店長を任され、27歳くらいのときに広島支店を皮切りに全国の支店長を任されました。その後、最年少で営業本部長となり、各エリアの立ち上げにほぼすべて関わりました。

当初からの「自分でやろう」という気持ちが沸々とわいてきて、レオパレス21で培った不動産業での経験を活かし、2000年に株式会社ホームネットを設立しました。

時間のかかる仕事は危険

ーーこれまでの、困難な壁にぶつかった経験、乗り越えた経験をお聞かせください。

濱中雄大:
自分で会社を起こして一番「ピンチだな」と感じたのは、2008年のリーマン・ショックです。これが起こったのはホームネットが賃貸の仲介業からスタートし、2003年くらいからは新築戸建の建売業も始めて年間30棟から40棟を販売し、年間売り上げも20億円を超えてきた頃でした。現在を含めても一番厳しい時代でした。ひとつの教訓として「時間のかかる仕事は、経済環境が変化していく中では危険だ」と学びました。

新築の建売業は土地の仕入から考えると1年から1年半かかり、その時間はリスクだと考えました。「すでにある建物をリノベーションし、付加価値を高めて再販売をしていく事業に切り替えていこう」と、中古住宅再生事業を2010年にスタートしました。

しかし、東京には既存マンションも多く、どうしても競合がひしめき合います。そこで、地方展開をしていくことに決めました。前職での経験もあり、「地方でやっていける」という思いがあったため、支店を立ち上げていくことに関して全く違和感はありませんでした。

他社に先駆けて地方展開を進め、現在では15拠点まで増えました。その後、2020年に株式移転により株式会社ホームネットホールディングスを設立し、2021年に株式会社property technologiesへ社名変更いたしました。

AI査定ーーどんな人でも何度でも気軽に住み替えができる世界の実現

――AI査定や、話題の顧客向けサイト「KAITRY(カイトリー)」について教えてください。

濱中雄大:
お客様のライフスタイルはどんどん変わります。「住み替えたいな」と思ったときには、「今住んでいるところがいくらで売れるのか」ということから始まります。

多くの方は、直接不動産会社へ相談に行きますが、なかなか売れない時期が3〜4ヶ月続くと値下げ交渉があり、またしばらくすると「キッチンだけでもリフォームしませんか」といわれて取り組んだ結果、1年がかりになってしまうというケースも多いのです。「誰もが」「いつでも」「何度でも」「気軽に」住み替えることができる、そのような世界を私たちはつくりたいと思い、始めたのがAI査定です。

弊社グループは年間33,000件を超える不動産価格査定実績や、グループ累計約13,000件の不動産販売実績があります。現在、全国に建っているマンションのうち、91%のマンションデータを保有しております。弊社の顧客向けサイト「KAITRY」では、お客様の物件情報を入力後、最短5秒ですぐに当社グループの買取金額をお伝えし、最短3日で現金化が可能です。

弊社サービス利用者の中でも約2割は、相続や離婚が理由で売却を急がれるお客様もいらっしゃいます。「とにかく早く売却をしたい方には有効だ」というご意見もいただいております。仲介業者向けにもサービス展開しており、現在5,500社を超える仲介会社、全国約9,000人の営業社員の皆様にご活用いただいております。

また、札幌から沖縄まで支店展開しているので、地域ごとに多くの金融機関とも取引させていただいております。その中で、取引金融機関からのご要望をきっかけにAI査定を活用した金融機関向けサービス「KAITRY finance(カイトリー ファイナンス)」の開発がはじまり、既に複数の金融機関とSaaS契約をしています。「書面で担保評価や与信をしている中、参考になる」とご好評いただいております。

仕組みでできる成果・チームの達成感を目指して

ーー教育体制を構築するための社内改革についてお聞かせください。

濱中雄大:
ここ5年程、新卒採用に力を入れています。6割強が20代で不動産の知識は少ないのですが、前述の「KAITRY」のAI査定を武器に、2年目の社員が他社のベテラン営業と同じくらいの成績を出します。「KAITRY」は、もともと顧客向けのサービスとして展開していたのですが、社内でも活用されています。仲介会社からの査定依頼に対してAI査定を使うことで、他社よりも早く返答でき、且つ営業のリードも可能となるため、知識の少ない20代の営業でも成果が出せます。

ーー貴社で活躍できるのはどのような方でしょうか。

濱中雄大:
基本的に仕組みを用いて仕事をしていくので、コツコツとまじめにやっている社員は成果につながっています。もちろん優秀な営業もいますが、全員が月1件販売することが理想です。そこで、「落ちこぼれを出さない仕組みをつくろう」という形で進めています。これからはチームで達成感を味わえるようにしていきたいですね。

ーー社長から、読者にメッセージをお願いします。

濱中雄大:
「何でもチャレンジすれば良い」と思います。私自身も、「今現在やっていることを深掘りしていくとそれがやりたいことになる」と思っています。不動産業界に興味があるなら飛び込んでみて、その中で自分がやれることを探していくと良いと思います。

編集後記

実際には時折笑いを交えて話す姿に、かつてのトップセールスの片鱗を感じさせる。しかし、それだけではない。早期にAIを導入する柔軟性、新入社員や新規顧客を取り込む仕組みづくりに目を移すと、まるで三種の神器を携えているかのようだ。その武器を手に、濱中氏は一体どこまで進んでいくのだろうか。

濱中雄大/1966年、広島県尾道市生まれ。拓殖大学政経学部卒。1988年に株式会社ミヤマ(現:株式会社レオパレス21)に入社。最年少営業本部長として全国拠点の新規展開を牽引。2000年12月に株式会社ホームネットを設立。2020年に株式移転により、株式会社ホームネットホールディングスを設立、2021年に株式会社property technologiesへ社名変更。