※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

今から約40年前、日本では歯科矯正はさほど広まっていなかった。そんな時代に単身アメリカで技術を学び、現在に至るまで国内で歯科矯正の必要性を広め続けた歯科技工所の社長がいる。株式会社アソインターナショナルの代表取締役、阿曽敏正氏だ。

アソインターナショナルは、今や日本中の歯科医師に矯正装置を提供する、業界に欠かせない存在となっているが、一体どのようにポジションを築き上げたのか。阿曽社長の経歴やアソインターナショナルの強みなどをうかがった。

アメリカで学んだ歯科矯正の技術を日本で広めた第一人者

ーー阿曽社長の経歴をお聞かせください。

阿曽敏正:
私が歯科矯正の世界に飛び込んだのは40年以上前のことです。日本歯科大学付属歯科技工士学校を卒業した私は1982年に歯科技工所ASO DENTALを起業しました。

当時の日本では歯科矯正が一般的ではなく、需要も低かったため、周囲からは「なぜわざわざ歯科矯正を?」と不思議がられていました。しかし、私の中では「アメリカから来たマクドナルドのように、歯科矯正も広まる」という確信があったのです。

とはいえ、事業に苦戦する日々が続く中、あるときアメリカの歯科矯正界で有名な先生が講演に来日します。その場で先生とのご縁に恵まれた私は、アメリカのサンフランシスコへ数カ月の修行に行きました。

その後も先生は講演を重ね、次第に国内にも歯科矯正の重要性が広まっていきました。すると、先生の弟子である私のもとに多くの相談が舞い込むようになりました。今では歯科矯正は広く認知され、子どものうちから歯科矯正している人も珍しくありません。おかげで事業が順調に進むようになり、歯科技工所初の東京証券取引所上場を果たすまでに成長しました。

国内シェアは約30%以上!さまざまな矯正装置に完全オーダーメイドで対応

ーー貴社の事業内容を教えてください。

阿曽敏正:
歯科矯正を診療科目にしている歯科医院に、オーダーメイドでつくった矯正装置を提供する事業を行っています。

歯の矯正方法は1種類ではなく、さまざまな手法があります。ワイヤーによる従来型の矯正、それも歯の表に装着するタイプ、裏にするタイプ等です。アライナー(マウスピース型)の矯正は比較的新しい矯正方法です。

また子供のころから少しずつ対応する予防矯正など、その人に合った方法を選ぶことが大切です。同じように、矯正装置にもいろいろな種類がありますし、歯の並びやあごの形によってもつくりを変えなくてはいけません。

弊社はそれらすべてに完全オーダーメイドで対応します。その対応力の高さから国内ではシェアの約30%以上を占めるまでになっており、国内の歯科矯正を支える、重要な役割を担っていると思います。

事業の広がりを加速させた「恩師の存在」と「株式上場」

ーー事業に取り組む中で、転機となったことや影響を受けたことはありますか?

阿曽敏正:
35歳の頃、矯正歯科の先生方が日本で繰り返し講演を行った影響で、国内に矯正の重要性が一気に広まり、それと同時に業績が一気に好転したことです。当時は先生からの紹介がとにかく多かったので、顧客対応や講演会への登壇など、とても忙しかったことを覚えています。

また、2022年に株式上場したこともビジネスに大きな影響を与えました。歯科技工所で上場しているところは唯一なので、上場という行為自体にインパクトがあります。おかげで知名度や注目度が高まり、さまざまな場面でビジネスがスムーズに進むようになりました。

総合力の高さと海外の生産拠点を生かし、世界で活躍できる体制を確立

ーー貴社独自の強みは何ですか?

阿曽敏正:
対応力と技術力、そして納品のスピードなど、矯正装置を作成する総合力が高いことです。もちろん国内には別の企業もありますが、技術力の高さや納品の早さでは追随を許さないと自負しています。

これらの強みは歯科矯正の本場であるアメリカにおいても、同等かそれ以上と評価いただいております。例えば、弊社のマニラにある製造工場から、日本国内なら早くて1日、アメリカでも数日以内に送れる体制を整えています。

50年の節目までに「ASO」の名を世界にとどろく歯科技工所に育てる

ーー今後のビジョンを教えてください。

阿曽敏正:
海外進出をさらに進めていき、創業50周年を迎える8年後までに世界一の歯科技工所になりたいと考えています。

「アソインターナショナル」という名前は、あえて「デンタル」という言葉を除き、世界中で「ASO=歯科矯正」というイメージが定着する思いを込めたものです。厳しい道ではありますが、この課題をクリアしてこそ事業は成功したといえるでしょう。

そのためには、国内外の企業との協力体制を築くことが大切です。弊社には日本で歯科矯正の歴史を切り開いてきた実績と、それに違わぬ技術力があります。世界中のメーカーに弊社の技術を掛け合わせれば、革新的な装置を生み出していけるはずです。

現時点で海外進出の目標達成率は10%にも満たないと考えています。世界一の歯科技工所を目指し、「世界中に胸を張れる会社」という厳しい課題に今後も取り組んでいきます。

歯科矯正には「歯並び」だけでなく「人生」を変える可能性がある

ーーこの記事の読者にメッセージをお願いします。

阿曽敏正:
歯科矯正とは単に歯の並びを整えるだけではありません。歯並びをキレイにすれば心持ちが変わり、自信をもって笑えるようになり、髪型やファッションも変わる。そんな、人生を変える可能性が秘められています。

人生100年時代となった今、健康寿命を延ばすことは社会の命題でもあります。私の使命は、歯科技工所として世界一になること。それと同時に、人々を歯並びから健康に導くことです。この両方に全力を注いでいきます。

何も怖がらずに進んでいく「勇往邁進」という言葉があるように、生きている限り新たなチャレンジに突き進んでいく次第です。これからの時代をつくる皆さんにも、歯科矯正の大切さ、人々の人生を良くしていくことの尊さ、そして絶えず挑戦し続ける大切さを知ってもらえればと思います。

編集後記

先見の明があっても、信じて歩み続けなくては結果はついてこない。阿曽社長が周囲に惑わされず技術を磨き続けたからこそ、今の歯科矯正業界があると言っても過言ではないだろう。もはや日本に欠かせない存在となったアソインターナショナルが、世界に名をとどろかせる日はそう遠くないはずだ。

阿曽敏正/1960年東京都生まれ。歯科医師である叔父の勧めから日本歯科大学付属歯科技工士学校へ進学。卒業後、同校のインストラクターとなる。米国の巨大な歯科矯正マーケットに魅了され1982年歯科技工所ASO DENTALを起業、88年アソデンタルを設立し代表取締役就任、矯正専門技工物のパイオニアとして歩み続け、約3割以上の国内シェアを誇る。2022年には業界初の東証スタンダード市場へ上場。