※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

飲食業界において、データ分析に基づく経営手法で着実に成長を遂げている企業がある。それが、食べ放題・飲み放題の居酒屋を展開する株式会社おすすめ屋だ。同社の代表取締役CEOの加藤誠庸氏は、学生時代からWebコンサルティング事業を展開。2016年に飲食事業に参入した「おすすめ屋」は、独自のビジネスモデルで注目を集めている。加藤氏に、事業の軌跡と今後の展望についてお話をうかがった。

Webマーケティングの知見を活かした飲食店経営で差別化

ーー貴社を起業した背景について教えていただけますか?

加藤誠庸:
起業を考え始めた当時は、ホットペッパーが紙媒体からWeb媒体に切り替わるタイミングで、飲食店の予約方法も変化し始めた時期でした。お客さんが紙のクーポンを持参する時代から、Webを見て電話予約をする時代に変わってきました。私はPCが得意だったこともあり、アルバイト先の掲載ページの最適化を任されていました。その経験から、在学中にWebコンサル会社を立ち上げ、飲食店に特化したコンサルティングを行っていました。

その会社は、クライアントが100社を超えるくらいになり、大手居酒屋チェーンがどういったコースをどれくらいの割合で提供しているかなどのデータに触れる機会がありました。当時は「飲み放題+単品の食べ物」が主流だったため、「食べ放題・飲み放題」に特化すれば勝負できるのではないかと考えたのです。そこで、2016年に弊社を創業し、本格的に飲食業界に参入しました。

――「おすすめ屋」という社名にはどのような意図があるのでしょうか?

加藤誠庸:
Googleで検索するときのサジェスト機能を意識しています。たとえば「新宿 居酒屋」で検索すると、「新宿 居酒屋 おすすめ」というサジェストが出てくることが多いのです。SEO対策として、店名を「おすすめ屋」にすることで検索結果の上位に表示されやすくなります。これは日本だけでなく、海外でも同様の傾向があります。Webマーケティングの知見を活かした戦略的な命名といえますね。

コロナ禍を成長の機会に変えた戦略的な出店

ーー貴社の強みについて教えてください。

加藤誠庸:
私たちの強みは、低価格と満足度の両立です。食べ放題と飲み放題を組み合わせた居酒屋で、価格は2,000円ほど。70種類以上の料理と70種類以上のドリンクを提供しており、このコストパフォーマンスが、多くのお客さまに支持されています。

また、満足度の測定にも力を入れています。コールセンターを運営し、顧客情報をシステムに入力して管理。リピート率や顧客離脱率、生涯顧客価値などを算出し、満足度の指標としています。

加えて、他社では集めていない「満席で来店をお断りしたお客様のデータ」も全て集積しています。そのデータを元に、店舗毎に曜日や日にちで最適な予約取得ルールの運用を行っています。

ーーコロナ禍にも出店されていますが、どのような戦略で臨まれたのでしょうか?

加藤誠庸:
普段なら絶対に空かないような物件が空いたので、そういった場所に出店しました。家賃交渉も行い、かなり有利な条件で入居できました。もちろんリスクはありましたが、他の企業が出店をためらうからこそ、そこにチャンスがあると思ったのです。

また、常に需要と供給のバランスを分析し、出店する地域を決めています。居酒屋を検索する人の数(需要)と、実際の飲食店の数(供給)のバランスを見て、需要が供給を上回っている地域に出店する。これにより、一店舗あたりの売上を最大化することができるのです。

フランチャイズ展開と株式上場、おすすめ屋が目指す次なるステージ

ーー今後の事業展開についてお聞かせください。

加藤誠庸:
これからは全国展開を目指していきたいですね。現在、関東だけでなく関西にも出店しており、愛知に4店舗、京都や大阪にも店舗があります。しかし、自社だけで全国展開するのは人材面で難しいため、各地方の企業と組んでフランチャイズ展開をしていきたいと思っています。

2024年7月には熊本で初のフランチャイズ店をオープンさせました。これは大手フランチャイズチェーンを運営する企業とのパートナーシップで、私たちにとっても新しい挑戦です。この経験を活かして、今後の全国展開の土台づくりをしているところなので、地元の企業とお客様の双方が喜んでいただけるように拡大していきたいですね。

また、東京プロマーケットへの上場を目指しています。その後、スタンダード市場を目指すつもりです。上場の意義としては、長年支えてくれている社員たちに報いることです。上場するときに記念写真を撮影し、彼らと喜びを分かち合いたいと思っています。

また、上場することで社員たちがローンを組みやすくなるなど、さまざまな面でメリットがあります。会社の成長が社員の幸せにつながるようにしたいですね。道のりは平坦ではありませんが、私たちの独自のビジネスモデルと成長性をアピールしていくことで、必ず道は開けると信じています。

編集後記

加藤氏の語る「おすすめ屋」の成長戦略には、デジタルマーケティングの知見と飲食業界の洞察が見事に融合されていた。特に印象的だったのは、コロナ禍という危機を成長の機会と捉え、積極的な出店戦略を展開した点だ。データ駆動型の意思決定と、リスクを恐れない経営姿勢が、同社の急成長を支えているのだろう。全国展開とフランチャイズ展開、そして上場への道のりには課題も多いだろうが、加藤氏のビジョンと戦略的思考が、これらの壁を乗り越えていくことを確信した。

加藤誠庸/1984年神奈川県生まれ、東京理科大学卒業。在学中にWebコンサルの会社を立ち上げる。2016年におすすめ屋を設立。