※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

1995年に創業し、2001年に有限会社化した株式会社グラマラスフード。カジュアルイタリアンを楽しめるレストラン「ダニエルズ」の経営元として、30周年を迎えた企業だ。大きな特徴は、生パスタの製造・販売やOEM事業を発展させた自社工場。代表取締役社長の赤松佐知子氏に、開業した経緯や工場機能の強み、今後の展望についてうかがった。

経営不振のイタリアンを引き継ぎ、黒字化に成功

ーー経営者になった経緯をお話しいただけますか。

赤松佐知子:
21歳の頃、大学時代からアルバイトしていたイタリアンレストランを買い取る形で開業しました。私自身は楽く働いていたのですが、経営状態は芳しくなく、廃業も検討していた当時の店主から「経営者にならないか」という話をいただいたのです。

準備期間を含めて1年後に正式にお店を買い取れたものの、赤字経営を立て直すことは簡単ではありませんでした。共同経営者となった先輩が、半年で辞めてしまってからが特に大変でしたね。しかし、イタメシブームの影響で少しずつ回復の兆しが出てきたのです。

ーー経営が安定するまでの取り組みをうかがえますか?

赤松佐知子:
当時としては非常にめずらしかった、生パスタの提供を売りにし続けました。設備の維持費や仕込みの人件費を考えたら、乾麺の方が圧倒的にコストが低いのですが、やはり生パスタならではのおいしさがあります。イタリアから直輸入したパスタマシーンが壊れた時も、諦められないほど愛着がありましたし、今につながって本当に良かったです。

また、2007年に出店した、「イタリア展」というデパート催事も転機となりました。生パスタがお客様に大好評だったため、レギュラー商品として店頭に置いていただけるようになったのです。

以前から「生パスタを自宅でも味わってもらいたい」と思っていたほか、いろいろな種類のパスタをグラム売りするイタリアのパスタ屋さんに憧れていたこともあり、販売事業を始める良いきっかけになりました。

京小麦を使った生パスタと自社工場が強み

ーー現在の事業内容と強みを教えてください。

赤松佐知子:
生パスタを軸にしたカジュアルイタリアンのお店として、京都市内で「ダニエルズ」を展開しています。オリジナルパスタ・ピザを作る自社工場を持つことから、百貨店や飲食店に向けた生パスタの卸売も行い、近年は幅広い食品のOEM事業も承っています。

企業としての強みは、「ダニエルズファクトリー」というセントラル機能です。店舗での仕込み業務を軽減するなど、飲食業界における労働面のデメリットを解消できました。

さらに、自社工場は食肉加工における厳しい認定をクリアしたため、ハンバーグやパティといった肉製品のOEMに対応できることも強みの一つです。他社の製品づくりに携わることで蓄積される学びやノウハウが、自社の商品開発にも生きています。

ーー新店舗の「ダニエルズ ポルタ店」はどんな特徴があるのでしょうか?

赤松佐知子:
京都駅直結の商業施設内に、2024年にオープンした「ダニエルズ ポルタ店」は生パスタに特化したお店です。京小麦と新鮮な生卵をたっぷりと使った、特製生パスタの魅力を最大限に引き出したメニューを、お酒と共にお楽しみいただけます。

仕込みのほとんどを工場で済ませて、店内で生パスタを仕上げる業態は、自社工場がなければ生まれませんでした。商業施設への出店という新しい取り組みもできたほか、今後の店舗展開に役立つモデル店を構築できたと思います。今後も専門店というコンセプトで、2030年までに2〜3店舗を増やしていきたいと考えています。

現場の声を聞き、仕事にプライドを持てる環境を構築

ーー経営において大切にしていることを教えてください。

赤松佐知子:
働く「人」が何よりの業界ですので、現場の声を大切にしています。「次はピザの専門店を作ろう」と社内で声が上がるなど、社員が自分の意見を言いやすい風通しの良さも重視してきました。

私も月に1回、食事会を開いて社員の話を聞いたり、毎週各店舗の店長と会議をしたりと、改善点や方向性を話し合う場を大事にしています。

ーー社風もうかがえますか。

赤松佐知子:
社風を形成しているのは企業理念です。全店で共有している働き方に関する「10のこだわり」の中でも、私は特に「愛とプライドを持って仕事をする」というこだわりを重視しています。

スタッフたちには、料理や接客を含めて「ここは自分の店だ」と思いながら働いてほしいのです。そのくらいプライドを掲げないと、仕事は身につかないものだと考えています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

赤松佐知子:
「グラマラスフード」という社名にこめた、「魅力的な食」を通して人生を豊かに、という思いを実現していきます。組織としては、近いタイミングで社長を交代する予定です。

創立30周年を迎えた企業がアクションを起こすことで、主に銀行様など、社外での見え方を変える狙いがあります。私自身の仕事は、これまでとあまり変わらないでしょう。私は「ダニエルズファクトリー」の強化を、新たに社長となる現専務は店舗経営を主に担う形で、店舗とセントラル機能の両方を押し上げていこうと思います。

編集後記

21歳で赤字の店を買い取るという、非常に思い切った決断をした赤松社長。当時経験した金銭面での苦労は計り知れない。利益だけを追い求めるのではなく、生パスタのおいしさと接客の楽しさを純粋に守り続けた結果、多くの人に愛される「ダニエルズ」となったのだろう。この先もグラマラスフードは、前向きな変化を取り入れながら「魅力的な食」と向き合い続ける。

赤松佐知子/1973年生まれ。同志社女子大学を卒業。学生時代にアルバイトで働いていた店を引き継ぐ形で、1995年に1号店「ダニエルズ」をオープン。代表取締役社長に就任。2007年より生パスタやピザ等の販売・卸を開始。2015年に陶器の輸入販売を開始。2022年に「ダニエルズファクトリー」をオープンし、加工食品の製造も展開している。