※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

「国民食」と言われて何を思い浮かべるだろうか。伝統的なものとしては、寿司や蕎麦が真っ先に連想される。また、海外が起源のラーメンやカレーなど、日本に入ってから独自の進化を遂げたものもある。そして、鶏の唐揚げも代表的な国民食のひとつとして、広く認知されている。

今や唐揚げは専門店からコンビニエンスストアまで、さまざまな店舗で買い求めることができるようになった。この確固たるポジションを確立した唐揚げ業界をけん引する専門店「がブリチキン。」を運営するのが、名古屋市に本社を置く株式会社ブルームダイニングサービスだ。代表取締役社長の杉村明紀氏に、飲食業界が抱える課題に対する取り組みや、次のステージに向けた展望をうかがった。

未経験からの挑戦と成功、飲食業界の改革者としての成長の軌跡

ーー杉村社長が飲食業界に進んだ経緯を教えてください。

杉村明紀:
以前は飲食業界に関心がなく、学生時代のアルバイト先でも飲食店を選ぶことはありませんでした。大学卒業後は物流会社へ就職しましたが、26歳のときに家業である飲食業を継承することになったのです。まったくの未経験分野への挑戦であり、大きな決断でした。最初は調理もまったくできずに大変な思いをしましたが、チェーン展開していた会社を存続させるために懸命に働き続けましたね。

次の転機が訪れたのは30歳を過ぎた頃です。引き継いだ会社を軌道に乗せた後、仕事を通じて身につけた力を試したいと考えていたところ、有名ラーメンチェーン店の当時の人事部長と知り合い、今後の展望を聞くうちにその会社に入社したいという気持ちが芽生えました。力が及ばず失敗した場合は潔く諦めようと考えていましたが、会社をさらに発展させたい一心で仕事に打ち込み、専務を任されるようになりました。

ーー当時の仕事を通して嬉しかったエピソードをお聞かせください。

杉村明紀:
新規事業を中心としたさまざまな業務に携わる中で、個性豊かな仲間と一緒に仕事をすることができ、彼らと新しいフィールドで結果を出す喜びを分かち合えたことがとても嬉しく感じられました。また、労務環境の改善にも取り組み、社員のご家族からお礼の手紙をいただいた際には、会社としてひとつの幸せを届けられたと実感したことをよく覚えています。

社員の幸せを追求する組織改革で未来を切り拓く

ーーその後、ブルームダイニングサービスに入社し、前職とのギャップはありましたか?

杉村明紀:
弊社には、新たな挑戦をする決意で入社しました。前職に比べて事業規模が小さく、組織の管理体制が整っていない点にギャップを感じましたが、社員の前向きな姿勢や職場の雰囲気の良さがあり、「関わるすべての人、すべての街に幸せの花を咲かせる。」という企業理念も大変素晴らしかったため、それを踏襲しつつ組織のレベルアップを目指しました。

ーー組織編成に着手したそうですが、具体的にはどのような取り組みをしましたか。

杉村明紀:
個人への依存度が高く、権限のある社員が休職や退職をすると業務が停滞することがしばしばありました。そこで、業務分掌の観点から組織編成を見直し、リスクマネジメントを強化したのです。その結果、個々の社員のスキルが向上し、組織力も確実に高まりました。

飲食業界を輝かせる!未来へのビジョンと新たな挑戦

ーー現在進めている社内改革について詳しく教えてください。

杉村明紀:
まず前提として、社員が私たちの会社に入って良かったと思える改革を進めることを大切にしています。2023年に始めた社内独立支援制度もその一環で、社員のキャリア形成の選択肢を増やすことが目的です。それぞれのライフスタイルや家庭環境に合わせて、柔軟な働き方ができる勤務形態の整備も進めています。

また、飲食業界に進みたいと考える人材が不足しているという課題に対しては、どうすれば業界自体の魅力を高められるかを常に意識しています。まずは、私たちのブランド「がブリチキン。」が持つ確固たる力を活かして、多方面にブランドを展開することで、飲食業界の新たな道筋を示したいと考えています。

さらに、今後は国内事業の拡大や東南アジアへの進出を検討しており、外国人の採用にも力を入れていきます。国内の労働力不足という課題に対して、外国人労働者を積極的に採用し、国籍や性別を問わないリベラルな組織にすることが目標です。

先日ベトナムで開催された合同企業説明会に参加し、ハノイ大学の学生に弊社を紹介したところ、熱心に話を聞いてくれて、労働意欲も非常に高いと感じました。人材発掘の点でも非常に魅力的な機会でした。

ーー在日外国人の学生もいますが、海外まで足を延ばして採用活動をする利点は何でしょうか?

杉村明紀:
国外で生活している外国人は、日本への憧れや尊敬を抱き、生活水準を高めたいと願う人が多いと感じています。人生を左右する大きな決断をして来日する人材は、会社にとっても心強い存在です。私たちの会社で働いて良かったと思ってもらえるように、取り組みを続けていく所存です。

編集後記

常に前向きで、チャレンジスピリットを忘れない杉村社長。社員とともにプロジェクトを成功させたエピソードを嬉しそうに語る姿から、サービス業の根底にある人々の関わり合いの大切さが伝わってきた。社員一人ひとりの幸せを願う気持ちは、さまざまな形で幸せの輪を広げていくだろう。飲食業界の旗手として未来を開拓し続ける、株式会社ブルームダイニングサービスの今後のさらなる発展に期待したい。

杉村明紀/1979年、愛知県生まれ。大学卒業後、物流系企業に就職。その後、親族が経営する愛知の飲食企業で調理、接客からマネジメント業務、購買業務、開発業務などを経てCOOに就任。2012年に現在の国内外に展開している某ラーメンチェーン店に入社し、専務取締役として国内事業や上場・M&A・JVなどを経験。2020年に株式会社ブルームダイニングサービスに専務取締役として入社し、2021年に代表取締役社長に就任。