※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

2022年の時点で、日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は22.7兆円と、前年比9.91%増の成長を見せている。その中でも特に物販系分野の市場規模は大きく、その売上は13兆9,997億円に上る。EC化率も前年の8.78%から9.13%に増加するなど、物販系分野のEC事業は成長の一途をたどっている。

株式会社フォレストは2009年の設立以来、大手ECモールを通じて国内外の多様な商品を販売し、急成長を遂げた会社だ。代表取締役の石田奈緒哉氏に、起業に至った経緯や同社の取り組みについて、詳しく話をうかがった。

お金がなくても将来に希望が持てた創業期

ーー起業に至るまでのご経歴を教えてください。

石田奈緒哉:
私は高校生の頃から、「いずれ起業したい」と考えていました。大学卒業後は金融系の会社に就職。当時はコミュニケーションが得意でないと感じていたため、「苦手なことを克服するために時間を費やそう」という考えをベースに営業職を選ぶことにしました。苦手を克服するために、一生懸命仕事をしていくうちにどんどん出世し、結局10年ほど働きました。前職の会社を退職後は、1〜2年ほどデイトレーダーをし、2009年に株式会社フォレストを立ち上げるに至りました。

ーーなぜEC通販事業の分野で起業しようと考えたのですか。

石田奈緒哉:
EC通販事業は、もともと妻が家計を助けるために行っていました。事業の規模が大きくなったので法人化したのですが、会社設立当初に社長を務めていたのは妻でした。私はプログラミングが得意だったので、物販を効率的に行うためのソフトウェアを製作したり、仕入れを自動化する仕組みをつくったりしました。妻が福祉関係の仕事に携わるようになったため、現在は私が社長を引き継いでいます。

ーー会社設立時に苦労されたことなどはありますか。

石田奈緒哉:
大変だと思ったことは特にありません。難しいことがあっても、将来に希望を持っていました。お金には困っていましたし、心に余裕がない時期でもありましたが、面白い体験だったと思っています。お金ではなく信頼関係で結ばれたメンバーと出会うこともできました。この時期に人と人とのつながりを実感できたことは、私の一生の財産です。

役職者をつくらず自由に働ける環境づくりを心がける

ーー貴社の事業内容について教えてください。

石田奈緒哉:
一言で言うと、インターネット通販事業を展開する会社です。一般的にインターネット通販の会社は、自社で企画開発した商品を販売していることが多いですが、弊社は輸入品の物流に力を入れています。基本的に「いかに安く商品を流通させていくか」という考えに軸を置いて、物流の仕組みづくりに時間やコストを割いているところが弊社の特色です。できるだけ人手を使わず、在庫管理などもコンピューターで自動化しています。

ーー事業に取り組む上でどのようなことを心がけていますか。

石田奈緒哉:
社員が自由に仕事ができる環境づくりを心がけています。私が起業したいと考えた理由は、私自身が自由に働きたいと思ったからです。会社の方針なども特に決めず、それぞれの社員が自分のやりたい仕事ができればいいと考えています。

弊社には中国事務所の社員も含めて200名のスタッフがいますが、役職者は1人もいません。会社側から抜擢するのではなく、その仕事をやりたい人が手を挙げて仕事をするというやり方です。上司や部下という関係性もありません。

このやり方は自由度が高く働きやすい反面、新卒でまだやりたい仕事や得意な仕事が何かわかっていない人には難しいかもしれません。自分から学びに行くスタンスで仕事に臨み、自分で目標を決められる人は、弊社に向いていると思います。

今後は新卒採用と人事評価制度の見直しに着手したい

ーー今後の採用や人材の育成について、どのようにお考えですか。

石田奈緒哉:
弊社では、社員の自由と自主性を何よりも大切にしているので、従来の階層型組織とは異なり、役職者を置かないようにしています。これにより、社員一人ひとりが自分の裁量で仕事を進められる環境を構築していますね。新卒採用については、今後取り組むべき課題だと認識しています。会社の持続的な成長のためには、新しい力も必要です。ただし、従来の新卒採用とは異なる、弊社の文化に合ったアプローチを模索していきたいですね。

また、私の後継者については、柔軟に考えています。社内から自然とリーダーシップを取れる人材が育つことを期待していますが、外部からの人材登用や、場合によっては会社の売却なども選択肢として視野に入れています。重要なのは、会社の理念と文化を維持しながら、最適な形で事業を継続していくことなのです。

ーー最後に、貴社の今後のビジョンについてお聞かせください。

石田奈緒哉:
人事評価制度の構築と見直しを考えています。弊社のバイヤーは在庫や利益、売上などを客観的に測る数値を出しています。その数値をコンピューターで管理して、どのバイヤーがどのくらい利益を出しているか出力できるようにする。客観的な評価基準の仕組みをつくることができれば、より働きやすくなるでしょう。他社の人事制度を勉強しながら、弊社の人事評価制度をどう構築するか考えていきたいと思います。

編集後記

自分自身が自由に働きたいと望んだ経験から、社員が自由に働ける環境を提供しているという石田社長。「あえて役職者をつくらない」という、他社には類を見ない取り組みがユニークだ。自ら学び仕事に取り組む姿勢が要求されるという社風も、やりがいがありそうだ。「ぜひこの会社で働いてみたい」と感じたインタビューだった。

石田奈緒哉/1973年山口県生まれ。1997年、九州産業大学経営学部を卒業。岡地株式会社に入社し、2009年に株式会社フォレストを設立。2014年に同社代表取締役社長に就任。