※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

日本製の自動車は海外からの人気が高く、中古車の輸出市場も活気を見せている。そんな中、海外向けに日本製の中古自動車を販売しているのが、株式会社エスビーティーだ。社員およそ1,200人のうち海外拠点に約1,000人が勤務しており、現地でのきめ細かなサービスを行っている。

同社に入社した経緯や、コロナ禍で気付いた社員の結束力、今後の目標などについて、代表取締役社長の稲見太郎氏にうかがった。

世界32カ所超に拠点を置き、世界150カ所以上でサービスを提供

ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。

稲見太郎:
弊社では日本の中古自動車を海外へ輸出する事業を行っています。創業者がたった1人で1台から車の輸出を始め、現在は150ヶ所以上の国や地域で販売するに至っています。

弊社の特徴は、海外向けの営業部隊が集まるコールセンターを海外数か所に設けていることです。また、主要販売地域にもオフィスを設け、現地でお客様のサポートを行っています。

現地のオフィスでは、たとえば車のデリバリーサービスや、現地通貨での決済サービスなど、現地に拠点があるからこそできる細やかなサービスを提供しています。

ーー稲見社長の経歴とエスビーティーに入社したきっかけを教えてください。

稲見太郎:
アメリカに留学し、そのままアメリカの中古自動車販売店でアルバイトをしていました。そこで店舗の立ち上げや販売、店舗の管理責任者などを経験しましたが、リーマン・ショックの影響でビザの更新ができなくなり、帰国することになりました。

そして転職活動の際に、「ここから大きなチャレンジをする」というキャッチフレーズが書かれたエスビーティーの求人広告を見つけたのです。これを見て「発展途上の会社だからこそ自分が活躍できる余地があるのではないか」と思いました。中古車の輸出事業については素人でしたが、むしろどのような業界なのか興味が湧き、入社を決めました。

ーー入社してから社長就任まで異例のスピードで出世されていますね。

稲見太郎:
入社して3、4年で営業統括部長になり、その後社長に就任したため、スピード出世と言えるかもしれませんね。ただ私は「できるできないではなく、まずはやってみる」ことだけを考えて、任された1つ1つの業務を思い切ってやり続けてきたというだけなのですよ。

コロナ禍で改めて気付いた社員のポテンシャルと課題

ーーコロナ禍で日本は海外との貿易が滞った時期もありましたが、貴社の場合はいかがでしたか。

稲見太郎:
各国の港が閉鎖され、当日決まった新しいルールがその日の午後から適用されるなど、予測不能な状況に直面しました。こうして現場が混乱する中で、海外を含めた全社員に対して真っ先に「雇用形態を問わず、経済的な事情を理由に誰一人として解雇しない」と伝えました。

これにより社員のマインドは明日の生活を心配していたところから、「自分は何をすべきか」という前向きなものに変わったと感じています。それ以来、港が再開する情報を共有してくれたりして、不確実な状況下でもお客様との信頼関係を維持して、精力的に業務に尽力してくれました。

自分たちの役割を考え、自ら行動する現地社員たちの強さと柔軟さには驚かされましたね。これは創業から25年間かけて積み上げてきた成果だと感じました。

ーーコロナ禍で見えてきた課題についても教えてください。

稲見太郎:
この未曾有の危機を乗り越えた経験から3つの課題が明確になりました。

1つ目は、情報の共有と連携です。以前は各自が判断して必要な情報を共有していましたが、これからは会社として仕組みを構築する必要があると考えています。

2つ目は、現場の情報を吸い上げる仕組みづくりです。工程を簡素化することで、スムーズに情報を集められるようにしたいと考えています。

3つ目は、物理的な距離があるお客様や社員と緊密に、かつ円滑につながる方法です。直接会えない状況下で親近感を持ってもらうにはどうすればいいか、所属意識を持ってもらうにはどうすればいいか日々模索しています。

これらの課題を解決することで、各地で働いている社員同士が一体となり、お客様に安心感と信頼を提供できると考えています。業績が好調な今だからこそ、危機を乗り越えたときの教訓を忘れず、体制を見直していきたいと思います。

企業理念と経営理念を軸としたエスビーティーが目指す姿

ーー今後の展望についてお聞かせください。

稲見太郎:
弊社の企業理念に「Smile and Happiness to All」というものがあります。これは社員から始まり、取引先そしてお客様に笑顔と幸せを届けられる会社になりたいという思いが込められています。

特に弊社は発展途上国の取引先が多いので、生活を豊かにすることで皆さんに笑顔を届けたいと思っています。なお、今後は車の販売に限らず、多くの人を幸せにする取り組みを行う使命があると感じています。

また、私が考えた経営理念に「Be one team, Change the world」という言葉があります。これはスーパーマンを目指すのではなく、チームで世界を変えていくことを目標としたものです。

この経営理念に基づき、まずは自分のことを知り、相手のことを理解した上で信頼関係をつくるという行動指針もつくりました。一人ひとりがそれぞれの個性や能力を伸ばせる環境をつくり、チームとして一丸となれる組織を目指していきます。

「人」にフォーカスした営業の強化。求める人物像について

ーー今後どのようなことに注力していきたいと考えていますか。

稲見太郎:
お客様にとってより身近に感じられる会社にしたいと考えています。車は高価な買い物なので、お客様に安心して選んでいただくためにも、弊社ではマンパワーを重視しています。これは時代に逆行しているようですが、人に安心感を与えられるのはやはり「人」の部分だと思うのです。

具体的には各拠点の役割を明確化させ、現地でのサポート体制を強化していこうと考えています。また、現地の販売店と連携し、お客様のニーズを満たすアプローチ方法を開拓していきます。

そして認知度と信頼性を高め、取引をさらに拡大していくのが目標です。そのために海外の拠点と本社との連携を強化し、柔軟性と誠実さをもってサービスを提供していきます。

ーー採用に関して、貴社が求める人物像を教えてください。

稲見太郎:
弊社の課題である組織力を強化するため、仲間と協力しながら目標に向かって進んでいける人材を求めています。なので、人としての誠実さは大前提として、好奇心旺盛でチャレンジ精神のある人がいいですね。

自分の能力を活かせる場所を探している方や、新しいイノベーションを生み出したいという方をお待ちしています。

編集後記

海外での社会人経験を経て、新たな挑戦の場として発展途上の中古輸出会社を選んだという稲見社長。誠実さを大切にし、社員一人ひとりの意思を尊重するからこそ、ここまで多くの国や地域への進出を可能にしてきたのだと感じた。株式会社エスビーティーは、これからも世界各国のニーズに対応し、お客様に寄り添ったサービスを提供していく。

稲見太郎/1983年、千葉県生まれ。2010年に株式会社エスビーティーに入社後、営業統括部長を経て、2016年、代表取締役社長に就任。