株式会社SALは、Web戦略・マーケティング支援やオウンドメディアの構築、企業SNSの運用支援などを請け負う企業だ。ユーザーの声に基づく戦略設計とITを駆使したソリューションに強みを持ち、現在は正社員23名と「ホームチーム」と呼ばれる在宅ワーカー122名でサービスを展開している。さらに、IT事業以外でも、国内外で多彩な展開を続ける代表取締役の魚住琢氏に、起業のきっかけや今後の展望などをうかがった。
インターネットビジネスの将来性を肌で感じ起業を決意
ーー会社を立ち上げたきっかけを教えてください。
魚住琢:
私は子どもの頃から起業をしたいという思いがあり、中央大学の商学部商業貿易学科に入学しました。当時、古着が好きだったので、海外から商品を仕入れて販売するサービスをしたいと漠然と考えながら大学に通っていました。
今の時代、成果報酬制度がありますが、私が就活していた当時は、この制度というのが世の中で流行り始めた時期でした。たくさん働き成果を出すことで、給与が増えるという成果報酬制度に心を惹かれ、チャレンジをしたいと思い、成果主義のネットインフラ上場企業に就職しました。実際に営業として成果を出し、1回あたりの取引額が億単位だったこともあり、自分の給与を着実に増やすことができたのです。
その後は新卒で不採用となったサイバーエージェントに転職し、キャリアを積みました。当時はまだiPhoneもなかったのですが、サイバーエージェントはその頃から勢いに乗っていたので、「この市場であれば、若い自分でも年上のビジネスパーソンと渡り歩ける!」と確信しました。ありがたいことに、サイバーエージェントで人脈をつくることができたので、仲間から誘われる形で会社を立ち上げる運びとなったのです。
チームの営業力の向上を目指し、業務改革に取り組む
ーー起業してから重点的に取り組んだことを教えてください。
魚住琢:
会社を立ち上げた頃、広告と制作の両方を理解し、ディレクションやコンサルティングできる人材がまだ少なかった時代でした。当時は、ネット広告代理店が広告運用をしても、ランディングページやWebサイトといった制作物が悪いと成果が上がらず、代理店は成果の悪い原因を制作会社のせいにしていたのです。一方、制作会社はかっこいいものしか興味がないので、成果を出すというロジックがありませんでした。このようなよろしくない状況を鑑みて、ビジネスとして広告も制作の両方で対応できるよう取り組みたいと思い、会社を立ち上げようと決めたのです。
地道に営業をした結果、とある大手新聞社さんと取引が成立できたので、大企業という肩書きがなくてもインターネットビジネスで収益を得られる可能性があると感じました。
その後、一緒に立ち上げた仲間には今でも感謝をしていますが、ビジネスの方向性が異なっていたので、その仲間とは離れ、弊社を立ち上げました。
在宅ワーカーの活用で生産性のさらなる向上を
ーー在宅ワーカーの活用に踏み切ったきっかけと、実際に採用してみて、貴社にどのような効果がありましたか?
魚住琢:
ITに関する知識を持った方を採用するのが難しいと感じたことがあり、募集をかけても採用が行き詰まった時期がありました。
新規事業を立ち上げても、マンパワーが足りず、現状のスタッフだけでは業務をこなすがの難しい状態。さらに既存の社員を新規事業に割り当てると、他の業務に支障が出てしまいがちでした。
そんなときに別の企業から、ママさんたちを中心とした在宅ワーカーを活用する方法を提案していただきました。実際に在宅の枠で採用してみると、一生懸命働いてくれるママさんと、キャリアがあるママさんが多かったので、社員の生産性が向上したのです。募集をかけて大正解でした。
かつての弊社のように、中小企業でも人材活用のことでお悩みを抱えていることかと思い、在宅チームと正社員が連携し合える組織づくりができるサービスとして立ち上げました。それが、『remodooo!(リモドゥー)』です。このサービスの成長をはかりたく、注力をしています。
その中でも新規立ち上げの際に、集客と正社員の業務の割り当てが課題になることが多く、正直なところ、正社員のみでコンサルティングし業務を回すのは難しいです。そこで、ママさんを中心に在宅チームをつくり、正社員が対応しきれないテレアポや細やかなチェック、バナーの変更などの対応を依頼するようにしました。結果的に業務の質を上げ、弊社と契約企業を成長させるという良いサイクルになり、携わる方全てが、Win-Winになりました。
在宅チームのおかげで、今まで踏み込めなかった業務にも取り組めるようになったので、集客や営業においても人員を増やし、組織を大きくすることができました。たとえば、依頼されたコンテンツの資料の変更や追記といった作業を在宅チームに依頼すればすぐに対応してもらえますし、インタビュー記事のアポや執筆も請け負ってくれます。おかげさまで業績も伸びていますね。
ーー今後の展望や目標をお聞かせください。
魚住琢:
最近、太陽光パネルを扱っている会社や印刷会社など、IT会社以外の企業との商談、契約も増えています。
今後、受注後のカスタマーサクセスの支援業務の質の向上につなげ、お客様に対し的確なサービス提案ができる正社員が必要です。そのためには、採用活動に力を入れなければなりません。採用に関しては、ダイレクトメールでは反応を得ることが難しい時代になってしまったので、コンテンツマーケティングなどを活用して、採用のための集客方法をさまざま活用するので、面接の日程調整など細かい業務を在宅チームにお任せをしています。併せて、社員の定着率を向上させるために、評価制度の効率化も行っています。業務フローを明確にして、自分でできる仕事はどんどん委任して、自分にしかできない仕事にチャレンジする環境が弊社にはあります。
採用活動と評価制度のブラッシュアップによって、社員の成長を実現し、その成長がクライアントに対する価値を生み出せるように日々改善を行っています。
編集後記
株式会社SALは、ITに直接関連性のない企業に対するアプローチにも成功し、多彩な業務を展開している。子育て中の母親を対象とした在宅ワーカーに活躍の場を設け、生産性がさらに向上したという成功例からは、今後の新しい働き方の先駆を拓いたとも言えるだろう。ITを活用した多角的な支援で、企業の課題を解決につなげる株式会社SALのメンバーの今後の活躍を引き続き着目したい。
魚住琢/2004年株式会社サイバーエージェントに入社。営業に従事した後、2008年、株式会社SALを設立、代表取締役社長に就任。