※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

不動産業界の中で独自の存在感を放つ株式会社CAST-UDは、「建設のことなら何でもやる」をスローガンに掲げる企業だ。開発設計から建築設計、さらには工事まで、建設に関わるあらゆる業務をワンストップで提供する。開発設計と建築設計の両方を手がけられるという強みを活かし、物流倉庫や大規模施設の建設で実績を重ねている。同社代表取締役社長の中村哲哉氏に、これまでの道のりと、今後の展望について話をうかがった。

「何でもやる会社」の誕生秘話

ーー最初にこれまでのご経歴を教えてください。

中村哲哉:
高校卒業後、インディーズバンドのメンバーとして数年間音楽活動を続けていましたが、最終的にその道を諦めて就職することにしました。最初に就職した不動産販売の会社では2年ほど働き、早い段階で営業のトップセールスマンになりましたね。

その流れで独立を考えたのですが、当時は不動産について販売面の知識しか持っていませんでした。そこで、技術的なことをもっと学ぶ必要があると考え、大阪の設計事務所に就職したのです。その会社では、世間一般の皆様が思い浮かべる建築設計ではなく、その前段で必要となる、土地の開発を行政機関から許可してもらうための設計、いわゆる「開発設計」と、建築計画が決まった際にその計画の概要をご近隣住民の皆様にご説明差し上げる「近隣説明業務」という2つの事業をおこなっていました。

私は営業と近隣説明業務を担当していたのですが、東京支店の売り上げが低迷しており、立て直しのために東京に異動しました。実際に東京支店で働いてみると、大阪の会社という理由で仕事をいただけない場面が多くあったのです。それならば、東京に自分の会社を設立しようと考え、弊社を設立しました。今では東京・大阪・名古屋に拠点展開しています。

ーー貴社の事業内容について、お聞かせください。

中村哲哉:
設立当時は、すでに経験と実績があった「開発設計」と「近隣説明業務」の二本柱で事業展開していきました。

「開発設計」は専門性も高く社会から求められる仕事として誇りを持って仕事と向き合うことが出来ましたが、その一方で建築主に代わって「どのような用途でどのような大きさの建物を計画しているか」といった内容をご近隣にお住まいの方々にご説明差し上げる「近隣説明業務」は、計画に対して批判的なお声と同時に「なぜ建築主が説明に来ないのか?」などといったお声をいただくこともあり、この業務を代行することの社会的な意義や存在価値を実感できずにいました。

しかし、依頼してくださるお客さまがいらっしゃる以上「せめてお客さまの立場において近隣説明業務をCAST-UDに依頼する意義くらい自分たちの力で作り出してやろう。その意義を作り出すには自分たちで全ての経験をすることが必要だ」と考えました。

そして「建設のことなら何でもやる会社」というスローガンを掲げ、開発設計業務を軸に、その周辺業務にも業務範囲を拡大していきました。建築設計、建築工事、解体工事、開発工事、造成工事などが主たるところです。

さらには建築主として、マンションを建て保有し売却する、いわゆる不動産デベロッパーの立場も経験しました。現在ではこれら全ての仕事が弊社の柱として育ちつつあり、名実ともに建設のことならなんでも任せられる会社になってきたのではないかと感じています。

物流倉庫プロジェクトで掴んだ飛躍のチャンス

ーー貴社の事業で大きく成長した分野はなんでしょうか?

中村哲哉:
大きく伸びたのは建築設計の分野ですね。最初は老人ホームからスタートして、賃貸マンション、病院、ビジネスホテルと、徐々に仕事の幅を広げていきました。2013年頃からWeb通販などにより、物流倉庫の需要が高まってきました。

そのような中、とある上場企業で物流事業部門の責任者だった方が独立して新しい会社を立ち上げ、その方から物流倉庫の建築設計のお話をいただきました。

当時の弊社には物流倉庫の建築設計を行った経験はほとんどなかったうえにプロジェクトの規模は数十億円。このような大規模プロジェクトの建築設計を担う信用性が高いとは言い難い状況でしたが「責任は取ってやるからチャレンジしてみろ」と後押ししてくださり、私も「これは飛躍のチャンスだ」と思いチャレンジすることにしました。

その結果、大規模物流倉庫プロジェクトの建築設計をやり遂げることができたのです。

ーーその後、物流倉庫の案件はどのように展開していったのでしょうか?

中村哲哉:
先ほどの物流倉庫のプロジェクトは業界のニュースでもとり上げられ、建築設計で弊社の名前が出てくるようになりました。ニュースを見た企業、中には上場企業からも反響があり、次々と案件のご相談をいただけるようになりましたね。次第に、物流倉庫の建築設計のノウハウが蓄積されていき、より効率的な設計ができるようになっていきました。

さらに、同じプロジェクトの中で建築設計のみならず付随する解体工事や造成工事なども併せて任せていただけるようになり、弊社の強みがはっきりと見えてきたんです。

開発設計と建築設計の両立が生む独自の強み

ーー貴社の強みについてお聞かせください。

中村哲哉:
一番の強みは開発設計と建築設計の両方ができることです。外注に頼らずにどちらもできる会社は珍しいのではないでしょうか。開発設計は開発許可、建築設計は建築確認というように、「許可」と「確認」とで全く異なる性質を持っています。

このことから開発設計に携わる会社と建築設計に携わる会社は同じプロジェクトであるにも関わらず、どこか他人事のような認識でそれぞれの業務を遂行してしまった結果、後になって開発設計と建築設計の整合性が取れなくなり余分なコストが発生したりすることがあります。

私たちは、建築設計をする人の気持ちになりながら開発設計をおこない、許可を取得していきます。そうすることで、建築設計もスムーズに進められ、結果的に無駄なコストが抑えられるのです。開発設計は非常に専門性が高く、経験が物を言う世界です。この開発設計と建築設計の双方の視野で俯瞰したサービスを、提供できることが弊社の強みですね。

ーー今後はどのような分野に注力されますか?

中村哲哉:
昨今の物価高や人件費の高騰などによる建築費の高騰に多くのお客様が頭を抱えられています。弊社はこれまで積み重ねてきた建築設計の技術力やノウハウから品質を下げることなく建築費を削減できることを確信しています。

ゼネコンに設計と施工を一括で発注する形態が経済合理性に優れているというのが世間一般の風潮ですが「CAST-UDだけは例外だ」ということを業界に突きつけたい。建築費坪単価2万〜3万下げることは設計提案で比較的容易に達成できます。

例えば施工面積1万坪だとしたら2億〜3億円のコストダウンになりますし、ここに元来から持つ「開発設計と建築設計の両方を担える」強みを加えることにより更なるバリューを生み出すことが可能となります。

実際に設計施工のゼネコンと弊社とタッグを組んでくださったゼネコンとでの見積り金額の競争で負けたことはこれまで一度もありません。ゼネコンの設計施工にケチをつけたいわけではありませんが、建築費削減の選択肢の一つとして多くのお客さまに認知していただく。こうした活動を通じ新規取引先の開拓と既存取引先との関係強化に力を入れていこうと思っています。

上場企業から提携のお話をいただいていることもあり、多くの企業とパートナーシップを築いていきたいと考えています。事業においては、今後、地方創生の流れの中で、データセンターや半導体工場など、さまざまな大型施設の建設需要が高まってくるでしょう。これらの施設は物流倉庫での経験が活きてくると考えていますし、積極的にプロジェクトに参画していきたいです。

健全経営と事業拡大の両立を目指して

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせください。

中村哲哉:
独自調べではありますが昨今開発設計を高いレベルで完遂出来る人材が高齢化の波によって急速に減りつつあります。労働人口が減少していく現実的な未来と照らしても弊社に対する需要はますます高まっていくでしょう。その需要に応えるべく現在、会社の足元の強化、具体的には社内人員の若返りを進めています。人材育成には特に力を入れていて、社員一人ひとりの成長が会社の成長につながると考えています。

しかし、一気に人数を増やすのではなく、じっくりと時間をかけて少しずつ採用し育てていく方針です。経験の積み重ねで価値が上がっていく仕事なので、人材を育てる速度のバランスをとっていきたいですね。

今後はデータセンターや国内工場などへの参画も視野に入れ、会社を成長させていきたいと考えていますが、急速な拡大は目指していません。健全な経営状態を保ちながら、着実に事業を展開していきたいと思っています。

また、社員に対して、常に新しいことに挑戦する姿勢を示し続け、ワクワクする環境を提供したいと考えています。「社長が何をしているかわからないけど、きっと何かやってくれているんじゃないか」という期待感を持ってもらえるような会社でありたいです。

編集後記

中村氏の「建設のことなら何でもやる」という言葉には、たくましさと同時に、どこか楽しんでいるような雰囲気も感じられた。社員を「ワクワクさせ続けたい」という言葉からは、自身の挑戦心を会社全体に波及させようとする姿勢が垣間見える。建設業界にエンターテインメント性をもたらすような存在として、同社が歩んでいくことを期待せずにはいられない。

中村哲哉/1979年兵庫県西宮市生まれ。高校卒業後、3年間バンドマンとして音楽活動を行う。その後、サラリーマンとして不動産業、開発許可申請業、建築設計業に携わる。2010年に株式会社CAST-UDを設立し代表取締役社長に就任。