※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

人材不足が深刻化する建設業界で、新たな取り組みで課題解決に挑むのが株式会社竹延だ。創業70年を超える塗装会社で、50人ほどの社員職人を抱え、圧倒的な機動力を武器に業界をリードしている。しかし、4代目社長の竹延和希氏は、現状に満足することなく、塗装ロボットの開発や外国人実習生の積極的な受け入れなど、新たな取り組みを次々と打ち出している。伝統とテクノロジーのバランスをとりながら、会社の未来を切り開く竹延氏に、入社のきっかけから今後の展望まで話をうかがった。

思いがけず家業を継ぐことになった

ーー貴社を継ぐことは当初から決まっていたのでしょうか。

竹延和希:
まったく決まっていませんでした。高校時代にはバイクに興味を持ち、別の道を考えていました。二輪の免許を取得して、バイク関係の仕事を志望していたのです。大学卒業後は運送会社で2年ほど働いていましたが、ずっとこの仕事を続けていけるのだろうかと、漠然とした不安を感じていました。そんなとき、父の背中を見て育ってきた私は、父の会社を手伝ってみたいと思い、相談したところ「やる気があるなら構わない」と言ってもらえたのです。そして、24歳のときに弊社に入社しました。

ーー社長就任までの道のりを教えてください。

竹延和希:
最初は新築の塗装工事の施工管理を担当しました。ゼネコンさんから仕事をいただき、職人さんが安全に作業しているか、綺麗に仕上げているか、工程通りに進んでいるかなどの管理をしました。

5年ほど前に前社長から社長交代の話があり、最初は戸惑いましたが、徐々に覚悟ができていきました。前社長の仕事ぶりを見て勉強できたので、5年間の準備期間があったことは非常にありがたかったです。社長になった最初は不安が大きかったですね。しかし、半年くらい経つと、自分で物事を決める楽しさや、やりがいを感じるようになり、今では「社長になって良かった」と思えるようになりました。立場が人を育てるという感じでしょうか。

300人の職人を抱える塗装のプロ集団

ーー貴社の事業内容について教えてください。

竹延和希:
主に新築の塗装工事の施工管理を行っています。ゼネコンさんから仕事を請け、職人さんに作業していただく、中間的な立場ですね。安全管理や品質管理、工程管理など、さまざまな面に気を配っています。他には、一式工事を含めたリニューアル工事も手がけています。

弊社は、新規開拓をあまり行っておらず、お客さまとの長期的な関係を大切にしています。今やっている現場が終わるころに、次の現場の話をさせていただくようなサイクルです。長いお付き合いのお客さまが多いので、信頼関係ができてくるのです。しかし、だからこそ甘えることなく営業していかなければなりません。「親しき仲にも礼儀あり」ですね。

ーー貴社の強みは何でしょうか。

竹延和希:
圧倒的な機動力です。現場に出入りしている職人さんは約300人います。この数の職人さんが出入りする塗装会社は、大阪で数社しかありません。さらに、弊社では社員職人が50人、及び年末に20人増員予定の在籍数ですが、これは他社を圧倒する規模です。これだけの人員を抱えられるのは、仕事を切らさないよう常に営業活動、及び現場調整を行っているからです。たとえば、ある現場が雨で作業できない場合は別の現場に行ってもらうなど、柔軟に判断して、より多くの案件に対応できる体制を整えています。

また、優秀な職長を多数抱えているのも強みです。職長の力量で現場の成否が決まると言っても過言ではありません。彼らは会社の顔であり、トップセールスマンのような存在です。

職人の技と新技術の融合で描く未来像

ーー貴社が力を入れている取り組みについてお聞かせください。

竹延和希:
塗装ロボットの導入です。5年前から鹿島建設様と共同開発に取り組んでおり、ようやく実用化の段階にきました。このロボットを使えば、誰でもベテラン職人と同じ品質の塗装ができます。ただし、これは職人さんの仕事を奪うものではありません。誰にでもできる分野を機械化し、職人さんにはより専門的で高度な作業に集中してもらうためのものです。また元々建築に興味のない方や、他分野の人材を呼び込めるイメージアップにもつながるかと思っています。

他には、外国人実習生の積極的な受け入れも行っており、現在は30人の実習生が働いています。彼らに対しても、専門の通訳を介して定期的にミーティングを行い、安全教育や技術指導を行っています。彼らの力も借りながら、会社全体の生産性を上げていきたいですね。

ーー今後の展望についてお聞かせください。

竹延和希:
私自身、今もプレイヤーとして現場に出ることが多いのですが、これからは経営に専念したいと考えています。本業をしっかりと継続しながら、新しいことにも挑戦していく。そのためには、現場を任せられる人材が必要です。自分の担当業務をこなすだけでなく、会社全体のことを考えられる人材を育てていきたいです。「プラスアルファ」のことをしていかないと、会社は成長できません。従業員一人ひとりが主体的に動き、会社全体で成長していける組織をつくっていくことが、私の目標です。

編集後記

伝統ある家業を受け継ぎながらも、新しい技術や考え方を積極的にとり入れようとする竹延氏。塗装ロボットの開発や外国人実習生の受け入れなど、業界の課題に真正面から取り組む姿勢は印象的だ。同時に、職人の技術を大切にし、人材育成に力を入れる姿勢も強く印象に残った。竹延氏のリーダーシップのもと、同社の未来を切り開いていくことを期待せずにはいられない。

竹延和希/1982年京都府生まれ、帝塚山大学卒業。2年間、他業界で働き、2006年に株式会社竹延へ入社。2022年に代表取締役社長に就任。