※本ページ内の情報は2024年7月時点のものです。

一風変わった社名の「あめりか屋」は、近畿地方を中心に活動している建築会社である。創業は1923年、およそ100年前に遡る。大正時代に和洋折衷住宅を手がける会社としてスタートした。時代を経ても変わらないアイデンティティがある。4代目社長である代表取締役の山本英夫氏に、家づくりの哲学ともいえるあめりか屋の流儀について取材した。

和洋折衷住宅を足がかりに多彩な建築を手がける

ーー事業内容を教えていただけますか。

山本英夫:
弊社は大正12年に住宅を専門に取り扱う建築会社として創業しました。あめりか屋という名前は、アメリカの洋風的な住宅様式を日本に取り入れた和洋折衷住宅を目指したことに由来します。現在は住宅にとどまらず、旅館・ホテル・店舗・工場・寺社仏閣などあらゆる建物を扱う総合建築会社として活動しています。

ーー家業を継ぐまでの経緯を教えてください。

山本英夫:
私は早稲田大学に入り建設材料の研究をしました。卒業後はセメント、コンクリートの研究ができる会社を探し、小野田セメント株式会社(現太平洋セメント株式会社)に大学院修了後に入社しました。当時は建築よりも土木構造物に関心があり、黒部ダムや青函トンネルや本四架橋のような大事業に対する憧れもありましたね。

その後しばらくして、家業のあめりか屋が人員不足という理由で入社することになり、兄から社長を引き継いだのが2011年のことです。

弊社は2023年に創業100周年を迎えました。これまで社史をつくったことがありませんでしたが、大きな節目であるため、2021年5月に社内で編集委員会を立ち上げ100年誌「あめりか屋historyー100年の道のり」を制作しました。

ーー長い歴史の中で、山本社長の印象に残っているエピソードはありますか。

山本英夫:
私が社長に就任した年は厳しかったですね。リーマン・ショックが会社の業績にも大きな打撃を与えました。営業赤字が続き、社員にも負担をかけました。それでも一致団結して乗り切り、今となっては懐かしく感じられます。

オーダーメイドでお客様の思いを形にする

ーー仕事に取り組むうえで大切にしていることは何ですか。

山本英夫:
建築は人に夢を与える仕事だと思っています。お客様の中にあるイメージや言葉を図面化して、建築物という形として実現することは大変なやりがいと楽しみがあります。そして、建築はすべてオーダーメイドで、ひとつとして同じものはありません。

一つひとつに誠実に向き合うことでお客様も喜んでいただけますし、私たちも誇りをもって仕事に取り組めます。創業当時から住宅を手がけてきたきめ細やかな技術力を基にして、お客様のこだわりを100%実現することを目標にしています。

よくお話しするエピソードがあります。あるお客様に「家が完成したときに高台のリビングから見る夜の景色が一番楽しみなんだ」と言われたのです。その要望に応えるために建築の過程で、リビングの高さに足場を設定し実際にお客様に座っていただき意見を聞きながら、設計も柔軟に変更を加えていきました。ようやく完成したときには大変喜んでいただけて、とても印象深い仕事になりました。

お客様に喜んでいただけると、それが評判になり次のお客様を紹介してもらうことができます。弊社は宣伝広報活動をほとんど行っていませんが、お客様の紹介がつながることで仕事が途切れることがないと考えています。

ーー社内の取り組みについてお聞きします。コロナ禍でIT推進委員会を立ち上げて業務のDXに取り組まれたそうですね。

山本英夫:
コロナ流行より以前からアナログな業務の進め方が課題でした。しかし大きなきっかけがなく、旧態依然とした体制から長らく脱却できなかったのです。たとえば、何らかのシステムにログインする際も「パスワードを忘れたら、電話で聞いたほうが早い」といった調子でした。

しかしコロナ禍で人と会えなくなり、Zoomなどのオンライン会議ツールが急速に普及すると、おのずとIT化が促進されました。弊社のIT化推進を先導したのは20代の社員たちです。最先端の技術に対して感度や関心が高く、彼らがさまざまなツールを使う様子を見て年配の社員も利便性に気づきました。

今後は、現場からIT化を促進するような提案が活発にあがる雰囲気づくりに取り組んでいきたいと思っています。年配の社員の長年の経験に基づく課題発見能力を活かしながら、率先して「ここを変えたらいいんじゃないか?」という提案がどんどん出てくるような会社環境を目指しています。

創業100年を迎え、新たな時代に必要なのは提案型人材

ーー今後の事業展開をお聞かせください。

山本英夫:
古くからある建物を保全する点において、日本は世界に劣っている印象があります。私たちが拠点をおく京都は戦争や震災の被害もなく、歴史的な建物が多く残っています。これらを今後も維持・保続した街並みにしていくために力を注ぎたいと思っています。古い建物をシェアハウスや建物公開として活用することなどを考えています。

また、社内の人材育成にも重点的に取り組んでいきます。まずは意欲がある人を評価していきたいと考えています。たとえば資格の保持数は評価しやすいのですが、それ以上に自身で課題を見つけ出し努力する姿勢など、目に見えない部分も総合的に評価していく方針です。なぜこの観点が重要になるかと言えば、今後は自主提案型の仕事が求められてくるからです。提案能力のある人材を育成していきたいと思っています。

編集後記

お客様の思いを住宅を通して形にする。あめりか屋の創業時から変わらないアイデンティティがインタビューを通して伝わってきた。いい仕事をすれば、その評判が次のお客様を呼ぶ好循環が生まれる。このシンプルだが強固な仕事への誇りが、あめりか屋を100年もの間支えていたことは想像に難くない。次の100年に向けてどのような歩みを進めるのか、今後も注目していきたい。

山本英夫/1958年京都市生まれ、早稲田大学大学院修了後、小野田セメント株式会社(現太平洋セメント株式会社)に入社し、中央研究所勤務。1992年株式会社あめりか屋に入社し、2011年に代表取締役社長に就任。