※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

2013年に設立された株式会社永建。優秀な鳶職人を抱える足場工事業者として成長してきた会社だ。現在は、見積りから施工管理、資材の運搬、特殊工事まで総合的にクライアントをサポートする体制を整え、経年劣化した東京都の施設をリニューアルする公共工事にも参入中。

今回、代表取締役の永井利幸氏に、創業の経緯や他者との差別化ポイント、今後の展望をうかがった。

雇用条件の見直しにより即戦力となる鳶職人の獲得に成功

ーー貴社を設立した経緯をお話しいただけますか。

永井利幸:
デスクワークより体を動かす仕事が好きなことから、建設業界でさまざまな職種を経験しました。その中でも鳶職は10年以上勤め上げた仕事です。鳶職として働くうちに、友人が起業したり、仕事上の人間関係が広がったり、独立を考える出来事が重なったので、その波に乗る形で起業しました。

私は、自分のあらゆる行動に対して「一度の人生で後悔したくない」と考える性格で、独立についても、「もっと早く挑戦すればよかった」と思うくらいなら、「失敗してもいいから今やってみよう」と考えていました。

ーー起業にあたってご苦労はありましたか?

永井利幸:
最初は人集めに苦戦したので、同業者と異なる待遇を提示して、待遇面で他社よりも頭一つ抜ける戦略をとりました。当時の工事業者は、労働日数に応じて給料が変動する日給月給制が当たり前だったのですが、弊社は、固定給制による「収入の安定化」をアピールして即戦力を採用し、生産性を高めることに取り組みました。

また、実績のない会社が、仕事を獲得するのもひと苦労でした。小さな現場を無事故で対応していき、お客様からの信用を得て、約3年後に大きな仕事をいただけるようになりました。

ーー創業後のターニングポイントはあったのでしょうか。

永井利幸:
会社が大きく変わるターニングポイントは2015年。一次請けのノウハウを持つ営業経験者が仲間に加わったことで、一次請け企業に必要な業務を学びました。そして、自ら営業を行い、今のお得意先に出会い、二次請けという立場からステージアップできたのです。

2つ目の転機は2021年。公共工事の入札方法を知る人材を雇用したことで、足場工事だけでなく、建設工事全般を担う元請け企業へ変化しました。これらの経験から、「自分が知らない領域に行く時は、ノウハウを持つ人を迎えて勉強すればいい」というのが僕のスタンスですね。

品質重視の建設会社として、建物の修繕・足場づくり事業を展開

ーー現在の事業内容を教えてください。

永井利幸:
外壁修繕工事・防水工事・塗装工事など、建物の修繕を行うリニューアル事業部と、足場の建設に特化した仮設事業の2つに大きく分かれます。

リニューアル事業は、大規模な修繕工事をメインとした公共の入札案件が9割で、1割は民間の大手企業様からのご依頼です。仮設事業に関しても公共工事が中心で、主に東京都が所有する集合住宅や施設を修繕するための足場を組んでいます。

ーー貴社の強みもうかがえますか?

永井利幸:
創業当時から安売りをしない姿勢を貫き、品質管理を重点に置いています。相場よりも高い金額であっても、かゆいところに手が届く仕事と、間違いのない品質を提供することでリピーターを増やす。この考えで、公共工事の案件も増やしてきました。

リニューアル事業は、現場監督としてさまざまな業種を統括するのですが、弊社は自分たちで足場を組むことができることで、工事全体のコストを下げて、納期を短縮できることも他社にない強みです。

また、安全性を担保しながら足場をきれいに組む方法など、長年の実績で培ったノウハウにも自信があります。応札の際も、現場で作業する方の意見と自社のノウハウ、営業担当が出すアイデアをかけ合わせた提案をしています。高品質な仕事に並ぶ企業価値として、今後も大事にしていきたいところです。

大手企業に匹敵する待遇で社員を幸せにする会社へ

ーー今後の展望をお聞かせください。

永井利幸:
10年先も建設業界で生き残るために、3年・5年スパンで若手を雇用していく必要があります。そのためにも、人材を増やして売上・利益を上げ、大手に負けない待遇を維持していくことが目標です。

どんなに会社を大きくできたとしても、「目の前にいる人を大切にする」という自分の芯は絶対にぶれないよう努めています。若手を含めて、従業員が求めることを最優先に会社づくりをしているので、この環境ならぜひ働きたいと思ってくれる人に来ていただきたいですね。

魅力的な待遇の一例として、現時点で年間休日が131日ほどあるほか、社員旅行で毎年海外に行くなど、福利厚生の充実は常に意識しています。社員が引退するときに「この会社で勤め上げて良かった」と言われることが、私が一番喜びを感じる瞬間だと思います。

今後は後継者の育成も進めていきます。昭和生まれの私は平成、令和に応じたガバナンスやコンプライアンスを意識する形で会社を成長させました。けれど、それを成功例として真似してほしいとは思いません。後継者には、時代に沿った自分なりの経営に挑んでほしいですね。

編集後記

時代にマッチするように、事業や組織を育ててきた永井氏。作業員に危険が伴う建設業だからこそ、コストをかけてでも品質を重視する姿勢を貫き、「安心感のある会社」としてクライアントからの信頼を確固たるものにした。永建の社員たちは、その背中を追いかけるのではなく、一つのモデルケースとして学びながら業界に新しい風を吹かせていくのだろう。

永井利幸/1980年生まれ。10代で建設業界に入り、さまざまな職種を経験した後に独立。2013年に株式会社永建を設立し、代表取締役に就任。