※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

アスミホールディングス株式会社は、2022年設立の新しい会社だ。しかし、代表取締役社長の谷岡哲広氏が最初に設立した関西タクト株式会社から続く歴史は10年以上になる。同社を創業し、本社のある神戸市を中心に事業を拡大しながら積極的に他社とのM&Aも進め、現在では全国的に存在感を発揮する会社を作った谷岡氏に、これまでの経緯や人材採用・育成、今後の展望などについてお話をうかがった。

独立後、M&Aで事業の幅を広げて全国規模の会社へ

ーー設立当時のお話を教えてください。

谷岡哲広:
私は中学を卒業してすぐに建設現場で働いていました。現場経験を積むなかで「自分で会社を作り、経営してみたい」と思い、33歳で独立したのが経営者としてのキャリアの始まりです。

設立当初は、まだ実績がないため銀行融資を受けることも難しく、建設会社から大規模工事を任せてもらえるような信用もなかったので、本当に苦労した思い出があります。そうした中で、どんなに小さな仕事でも引き受けてコツコツと実績を積み上げていき、少しずつ大きな仕事を任せてもらえるようになりました。

ーーその後、どのように事業を拡大してきたのでしょうか。

谷岡哲広:
強みである神戸市内の公共工事と港湾工事を軸に、鉄道関連工事にも領域を広げて事業の拡大を進めてきました。弊社が設立当初から手がけている公共工事と港湾工事は、需要のなくならない仕事です。弊社が特別な技術を持っているわけではなく、これまでの積み重ねや、チームで取り組み成長する経営方針などを打ち出すことでお客様から選ばれています。

一方で、やはり実績のない分野の工事には新規参入が難しい面もありました。そこで、鉄道関連工事で40年以上の歴史を持っている尾藤建設に、弊社グループの一員となってもらったのです。これにより、弊社がこれまで手がけてきた建設工事に加え、鉄道関連工事という強みが増し、成長が加速しています。

社会人野球チームの発足を通して、会社も周囲も豊かになる地域活性

ーー社会人野球チーム(一般社団法人アスミビルダーズ)を作ったきっかけについて教えてください。

谷岡哲広:
主に2つのことがきっかけとなりました。「建設業界は、不人気業界だ」「建設業界は、人材が定着しなさそうだ」という声をしばしば耳にしたことが1つ目のきっかけです。そのため私は、業界内では比較的歴史の浅い弊社だからこそ、新しい強みを作り、業界を変えていけるのではないかと思いました。

そこで、弊社にとって必要な人物像を考えたときに、野球というチームスポーツに目をつけ、採用を進めてきたのです。全国の野球部員は、暑い日も寒い日も練習をしています。礼儀を学んだり、チームワークを学んだり、時には大変な思いもすることで人として成長していきます。これらの経験が仕事にも活かせると考えたのです。

2つ目のきっかけは「弊社だけが得をするのではなく、地域全体の未来を考えて若者を育てたい」と思ったことです。今では、アスミビルダーズに入団した選手が、弊社だけでなく、同じく地域を支える建設会社にも入社し、活躍しております。弊社に関わる方全員が豊かになることで、地域活性を実現したいと考えています。

ーー今後の事業展開について教えてください。

谷岡哲広:
M&Aを繰り返してきた会社ですので、まずはグループ会社共通の人事評価制度を作りたいと考えています。また、3年後には、売上高を現在の63億円から100億円に伸ばしていきたいです。そのために現在、グループ各社で目標を立て、必要な人材を採用しているところです。

既存事業と新入社員のアイディアの融合で新たなステージへ

ーー社員の育成で大切にしていることについて教えてください。

谷岡哲広:
弊社の育成は「なんでも優しく教えます」ではなく、「社員として必要なスキル」「部長になりたいなら、部長に必要なスキル」を伝えていくスタイルです。明確に役割分担を行い、その役割を責任を持って遂行しようと伝えています。

役割に応じた責任を持たせると、「自分はこれだけやれば良い」と限定せずに自ら考えて行動し、結果として責任以上の成果を出せることがあります。それは本人の成長であり、さらに上のポストへ行ける道筋となっていきます。実際に、入社3年目で執行役員になった者もいるんですよ。

ーー今後、どんな方と一緒に働きたいですか。

谷岡哲広:
野球経験が必須というわけではなく、チームワークや結果にこだわる気持ち、成長意欲のある方を弊社は歓迎します。また、弊社は現在「多くのチャレンジができる職場づくり」を進めています。具体的には、新入社員の能力を見極め、少し背伸びが必要な仕事を任せています。

それにあたり、周りの先輩社員には「新入社員に成功体験を積んでもらいたいので、失敗して萎縮してしまわないように、きちんと確認してください」と伝えていますね。

チャレンジできる風土を作ったことで、既存事業と新入社員のアイディアの融合が起き、「地域の子どもたちに野球を教え、その後そのまま勉強も教える場所を作ったら、地域活性につながるのではないか」といった新しいアイディアも出てきています。

現状にこだわりすぎて、社員に「これをしなさい」「これをしなければならない」と指示するのではなく、全員で柔軟に変化していきたいですね。

編集後記

「自分なりの方針を立てて、会社を経営してみたい」という思いから起業をした谷岡氏。さまざまな方に助けられた経験を通して、自社だけが良いという状態ではなく、関わる人全員で豊かになっていきたいという信念を持つようになった点が印象的だった。この信念が同社の人材を成長させ、現在では新しい取り組みを次々と生み出す原動力になっている。同社はこれからも、周囲の関係者と力を合わせてますます成長していくことだろう。

谷岡哲広/33歳で独立し、前身である関西タクト株式会社を設立。総合建設会社として港湾工事や公共工事を手掛け事業を拡大。2019年に鉄道関連工事の尾藤建設株式会社を買収。2020年に建設業界の若手人材不足という課題解決に向け社会人野球チームアスミビルダーズを設立。2022年にコンクリート二次製品の製造販売の富士コン株式会社を買収。同年、アスミホールディングスを設立し、2024年に東京証券取引所 TOKYO PRO Marketに上場。