※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

安積建設株式会社は、大阪府枚方市に本社を構える総合建設会社だ。1973年の会社設立以来、土木・建築・舗装・電線共同溝工事などを幅広く手がけており、国土交通省の局長表彰の受賞歴もある。同社代表取締役の安積輝義氏に、社内における取り組みや事業の特徴、今後の展望について話をうかがった。

震災復旧をきっかけに経営者の道へ

ーー社長のご経歴をお聞かせください。

安積輝義:
弊社は父が創業した会社です。住まいと会社の距離が近かったこともあり、私は子どもの頃から建設業という仕事を目の当たりにしていました。そんな環境で育った私でしたが、最初は家業を継ぐつもりはなく、高校卒業後は中堅大手建設会社に事務係として就職しました。

この頃は阪神淡路大震災の直後だったため、通常業務以外にも被災地で復旧作業の手伝いなども経験。上司も含め皆忙しく動いていたため、寝る間もないほどでしたが、自分で考えて動き、非常にやりがいを感じました。

復旧作業をしている中で、家を失い、食べ物も十分に手に入らない環境の中で暮らすことを強いられている人たちとも出会いました。被災して手元に残されたものがない被災者の方たちから「手伝ってくれてありがとうね」と言ってもらえることもありました。

私が手伝ったことが誰かの役に立っていると感じたときは、とても嬉しかったですが、その反面、「もし、私が父の会社を継がずに会社がなくなってしまったら、社員たちはどうなってしまうか」。父の作った会社が多くの社員の生活を支えているということに、改めて気づかされました。

被災地での体験をきっかけに、「会社を支えてくれる社員の雇用を守ることで、生活を守る」という意識が芽生えました。そして、1998年に弊社に入社。2008年に代表取締役に就任しました。

ーー実際に入社して、どのように感じましたか?

安積輝義:
入社して会社のことを知るうちに、父の経営方針に対して次第に違和感を覚えるようになりました。私は「まわりの人たちの知恵を借りたい」「人に任せていきたい」という思いがあったのですが、創業者である父は、「俺の背中を見て学べ」という感じで、具体的な方向性を示さずに部下を引っ張るようなスタイル。その考え方にギャップを感じ、父とは何度もぶつかりました。

ですので、「私が代表になったら、しっかり方向性を見せていこう」と思っていました。経営の方向性を定めた上で、現場にしっかりと裁量を与え、従業員一人ひとりが考えて経営方針に沿った行動をしてもらいたい。そう考えるようになりました。

ーー社長就任後はどのような取り組みを行いましたか?

安積輝義:
35歳で社長に就任し、最初は「弊社の軸である建設施工管理の仕事をより良いものにしたい」と考え、建設施工管理事業の強化に注力しました。

当初は、売上目標を設定していましたが、なかなか数値目標を達成できず、計画倒れに終わることがほとんどでした。その理由は、長期間にわたり行う工事がある際、工事の完成時期によって大きく年間の売上が変動するため、売上目標が立てにくかったことなどが考えられます。

そこで、就任5年目頃からは絵に描いた餅のような売上目標を立てる代わりに、社員が働きやすく、やりがいを感じられる会社づくりに力を入れるように方針を転換。社員が良い工事、良い仕事をすることで、良いお客様が集まると考えたためです。この考え方は現在も変わらず、一貫して大切にしています。

国土交通省の局長表彰を受賞!柱は地中埋設線管路工事

ーー貴社の事業内容を教えてください。

安積輝義:
弊社は、創業以来「地中埋設線管路工事」という、電柱を地中化するインフラ整備事業に携わっています。特に、関西電力との長年にわたる協力関係を通じて、電力関連の工事案件を数多く手がけるようになりました。

さらに、変電所・発電所といった電力施設に関連する建築工事の受注も拡大しています。従来の土木工事に加えて建築事業にも本格的に参入し、さらなる成長を遂げました。

ーーそれぞれの事業にはどのような特徴がありますか?

安積輝義:
地中埋設線管路工事の分野で、弊社は高い評価をいただいていると自負しています。技術力、安全面、工期に至るまで、弊社の子会社的な立ち位置の協力会社が実力をつけたこともあり、国土交通省の局長表彰をいただくようになりました。

さらに、土木工事・建築の分野では、地域密着型の事業を展開しています。約120社の協力会社がサポート体制を構築しており、できない工事はほとんどないという状態になっているところが、弊社の大きな強みです。

実績だけにこだわらず、地域と共存共栄しながら未来を切り拓く

ーー採用についての考えをお聞かせください。

安積輝義:
人物像としては、ものづくりが好きな人を歓迎します。コミュニケーション能力が豊かで、叱られてもそれを成長のばねにするような人が理想的です。いずれも仕事をする上で大切な能力だと私は考えています。また、多様な人材を集めることが今後の課題で、年齢や性差、国籍による差別なく、採用の間口を広げていきたいです。

そして、人材育成にも力を入れ、最終的には社員から社長・経営者になれる人材を輩出することを目指しています。

ーー次世代の育成のために、どのような取り組みを行っていますか?

安積輝義:
小中学生を対象に、建設業界の理解促進のための活動を行っています。「建設業界で働く人=大工さんのような職人」というイメージが強い中、施工管理の仕事が「現場を統括するリーダー」であることを伝え、将来の進路選択の一つとして関心を持ってもらえるよう取り組んでいます。

この活動を通じて、施工管理業という仕事が認知され、就職活動をするときの選択肢の一つになったら嬉しいです。

ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。

安積輝義:
実績だけにこだわらず、地域と共存共栄しながら、未来に向かって歩きたいですね。新たな技術や考え方を積極的に取り入れ、未来のために挑戦することが、弊社の仕事だと考えています。

具体的には、これまで属人化していた仕事を、DXによって作業標準を明確にする取り組みを行う方針です。仕事を標準化することによって指導もしやすくなりますし、仕事の活性化にもつながるのではないかと期待しています。

編集後記

「安全なくして会社なし」「利益なくして安全なし」を信条とし、「社員一人ひとりが生き生きと働ける会社にすることが、最終的な目標」と語る安積社長。社内環境改善に注力する同社の取り組みが、どのような実を結ぶのか。今後の展開に注目したい。

安積輝義/1973年、枚方市生まれ。高校卒業後、4年間専門学校で勉強。1995年に大手建設会社に入社し、阪神大震災復興工事に従事。1998年に父が創業した安積建設株式会社に入社、総務業務に従事。2008年に代表取締役に就任し、現在に至る。