※本ページ内の情報は2024年9月時点のものです。

建設業界は、人手不足が深刻な問題と言われて久しいが、「お客様、協力者、仲間、家族、自分自身」の5つの社会に貢献できるように、社員一人ひとりが経営者意識を持って会社の未来を見据え、着実に業績を上げている企業もある。1948年に創業し、香川県に拠点を構える三和電業株式会社だ。同社を含め、グループは8社で構成されている。

3代目の代表取締役社長、山地一慶氏に、社員のやる気を掘り起こし、会社の業績につなげていくマネジメントについてうかがった。

業績の向上は社員の成長があってこそ実現できる

ーー2030年のグループ年商170億円が目標とのことですが、どのような取り組みをお考えですか?

山地一慶:
人材の育成に尽きますね。現場の社員が技術力や人間力で勝負し、信頼を勝ち取った結果が、会社の売上であり、利益の源泉です。

弊社は、「技術の三和」を経営理念の一角として掲げています。確かな技術と知識によって困難な仕事を解決するだけでなく、社員一人ひとりが経営者意識を持ってグループを背負って仕事に立ち向かってほしいという思いがあります。

また、エンジニアに関しては、「宝石のようなマルチエンジニア」の育成を目指しています。ここでいう「宝石」というのは希少価値が高いこと。「エンジニア」というのは技術を追求する専門家のことを指します。グループの全員が経営者意識を持ち、会社の経営理念や『三和フィロソフィ』を繰り返し学ぶことが大切です。

経営者意識で物事を捉え学ぶ社員の姿勢が、お客様や協力会社に高く評価され、「次も三和電業グループにしたい」と言っていただくことにつながるのです。

全社員が経営マインドを持っている姿勢がグループ全体を強くする

ーー貴社の特徴について教えてください。

山地一慶:
弊社では、現場の技術者が、お客様との交渉、設計、資材発注、現場管理、引き渡しまでの業務を責任を持って自らの判断で進めます。現場の技術者には、発注権などの権限があるので、皆が経営者の立場で考え、仕事をしています。

大体のところはお客様と現場の社員で話がつくからこそ、弊社に対する信頼につながっていきます。

三和電業グループは、国内5社と中国3社で構成されています。各社は、異なる専門技術をもって独自性を発揮しながら、互いに競い合って事業実績を築いています。競合ではあるものの、いざというとき連携できる柔軟性も兼ね備えています。

その結果、グループ全体としては、お客様のあらゆる要望に対応できるエンジニア集団となっており、この点が弊社の一番の強みだと思います。

生産性向上を図ることが今と未来の仕事のあり方を考えるきっかけに

ーー貴社の情報誌『SANWA』の巻頭言に生成AIを使った原稿を掲載したとうかがいました。手応えはいかがでしたか?

山地一慶:
AIには以前から関心を持っていて、本当に活用できるものかどうか自分で確かめたかったのです。AIが作成した原稿を読んでみて良い出来栄えだったと思います。

生成AIにはまだ課題もありますが、いずれは社員の相談用チャトボットやベテランのノウハウ伝授などに使えるかもしれません。建設業界は人手不足が深刻な業界なので、生産性の向上に役立つのであれば積極的にAIを活用するつもりです。

ーー建設業界における2024年問題への対応についてお聞かせください。

山地一慶:
2024年問題は、働き方改革と生産性の両立の問題であり、現場の時間短縮や効率化は、お客様と協力し合うことによって解決できることもあります。

たとえばお客様に提出する書類ですが、内容を盛り込んだ分厚いものにする必要はありません。作成する方も、書類に目を通す方も負担を感じることもあるので、互いに論点を確認し合って、本当に必要なことだけをまとめた内容に仕上げるべきです。時間をかけるポイントを見直そうということです。

仕事の分担も重要です。現場の技術者にしかできない仕事の割合は、弊社では全体の4割以下で、残りの6割超は、それ以外の人がフォローできると考えています。そこで、アシスタントを採用することによって、現場の技術者は業務の負担を減らせるので、本来持っている能力をこれまで以上に発揮できるようになると思います。

編集後記

「売上は社員の成長の結果として生まれてくるもの」と言い切る山地一慶社長。発注権限を現場に任せるという会社のスタンスは、社員の意欲を高めていると実感した。これこそ三和電業グループの行動指針である『三和フィロソフィ』を全員で共有している状態だと言えるだろう。

この共有があるからこそ、グループ各社はここぞというときには団結して難題を乗り越えられるのだ。山地社長の経営者マインドを持った技術者の方たちが、宝石のように輝いていくプロセスにも注目していきたい。

山地一慶/1979年、香川県生まれ、大阪学院大学卒業。株式会社ASK PLANNING CENTERに入社し、2年の修業期間を経て2004年に三和電業株式会社に入社。中国・蘇州のグループ会社に出向し、現場責任者として3年程勤務。困難な業務に苦しむ中、父 山地真人氏(当時三和電業株式会社代表取締役社長、現同社相談役)がまとめた『三和フィロソフィ』に接し感銘を受ける。2018年、三和電業株式会社はじめ、国内グループ4社の代表取締役社長に就任(2024年4月現在の国内グループ社数は5社)。