2014年に設立され、原宿の中心地にオフィスを構える「株式会社Rebase」。全国のレンタルスペースを検索・予約できるサービス「インスタベース」を立ち上げ、会社を成長させてきた。代表取締役の佐藤海氏に、創業の経緯や事業の魅力、今後の展開について話をうかがった。
IT業界で活躍する父の背中を見て――海外留学を経て起業するまで
ーーいつごろから起業をお考えだったのでしょうか?
佐藤海:
Yahoo! JAPANの社長室で経営戦略部長を担っていた父の存在が大きいです。小学3年生頃に描いた絵のテーマは「社長」でした。幼少期にIT業界の方々が集う場によく連れて行かれ、「世の中を動かしている人たちはかっこいい」と感じ、「いつか自分もインターネット関連のビジネスで世の中に貢献したい」と考えるようになりました。
「在学中に起業する」と決めて大学へ進んだため、3年生の半ばにインターネットのメッカであるアメリカ西海岸へ留学しました。ビジネスの勉強をする傍ら、複数のスタートアップでのインターンを経験しました。人との出会いも楽しかったことから1年間の留学の予定を3年間に変更し、経営や起業の知見を得ました。
ーー現在の事業を創った経緯をお聞かせください。
佐藤海:
2013年9月に帰国してからは共同創業者の髙畠と毎日のように会い、事業の種を探しました。半年ほど経過し、父に「いつになったら腹をくくって本格的にビジネスを始めるのか」と問われて立ち上げたのが「株式会社Rebase」です。
当時はどこのカフェでも当たり前のようにネットに接続できる環境があったわけではなく、ネットや電源が使える場所を探すことにいつも苦労していたので、その経験が事業の決め手となりました。
ーー大きなターニングポイントはありましたか?
佐藤海:
資本金25万円で始めたこともあり、オフィスを借りるお金もなかったため、間借りをさせていただけたことが創業間もないときの転機だったと思います。ご厚意で空いているデスクを貸してくださった方がいたのです。
それから3年半後の2017年に、自分たちのオフィスを手に入れたことで仲間が増えはじめ、より事業に注力できるようになりました。最初の頃はスペースを掲載いただいていても、なかなか集客に貢献できていないスペースも多々あり「掲載しても集客されない」というご意見が多く大変でした。
「場所」と「体験」を提供して人の「和」を広げる事業
ーーサービスや会社の強みをお話しいただけますか。
佐藤海:
インスタベースは、日本最大のレンタルスペースの予約プラットフォームです。特定の利用用途に特化したり限定したりせずにスペースの種類と数を増やしてきました。打ち合わせやレッスン、パーティーなど用途は多岐にわたり、幅広いニーズに対応できるプラットフォームを目指してきたことで、満遍なく集客できるという強みが生まれました。
コロナ禍では大人数での利用が激減した一方で、少人数での利用は増加しました。多様な利用用途でバランスよく集客していたため、ダメージを最小限に食い止められたのだと思います。また、コロナ禍でのリモートワーク需要をいち早くキャッチし、少人数のワークスペース獲得に動けたことも業績を大きく伸ばすことにつながりました。
ーー「TOIRO(トイロ)」を立ち上げたきっかけもお聞かせください。
佐藤海:
創業間もない頃、ヨガインストラクターの女性がレンタルスペースを利用して「ヨガ教室を開く」という夢を叶えました。1回目のレッスンに立ち会わせていただいた際には生徒さんが2名しかいませんでしたが、1年後に再度様子を見にうかがった際には、生徒さんが10名以上に増えていて驚きました。インストラクターの女性の方からは、「インスタベースに出会っていなければ今の私はありません」という言葉をいただき、とても衝撃を受けました。その時に改めて、自分たちの事業の本当の価値を認識したのです。
インスタベース事業は、行動した人のもとに人が集うことで成立します。コミュニティやイベントの情報を発信・管理できる「TOIRO」は、主催者の思いを広めて集客を促すツールとして誕生しました。十人十色の「といろ」に由来し、一人ひとりが夢だったことややりたかったことで日本中至るところでその一歩を踏み出し、日本中に様々な活動が生じているイメージを込めています。
サウナ事業をスタート――日本中が活気に満ちた未来を目指して
ーーリバティシップ様との取り組みについてもうかがえますか。
佐藤海:
弊社は2024年5月末に「株式会社Libertyship(リバティシップ)」の株式を取得しました。早期から効果を期待できる取り組みとして、Libertyship社が手がける「SAUNA PARKING」や「ONE SAUNA」といった魅力的なサウナプロダクトの展開を進めています。IoTサウナシステムとインスタベースを連携することで、集客から予約、さらには利用までを一貫して提供できます。さらには、サウナという分かりやすいコンテンツでインスタベースの認知拡大に繋げることができると考えています。
将来的には、両社の強みを活かし、新たなプロダクトの創出・市場拡大を目指します。Libertyship社は、宮崎県青島にてエリア開発・施設運営を行っています。このような事例もその一つとして、郊外及び地方特化型スペースの展開や、地方の遊休エリアのプロデュースなど、人が集まる「きっかけ」をつくり続けます。
ーー今後の展望をお聞かせください。
佐藤海:
弊社は「Where It Starts / ことのはじまり」というビジョンと、「Get Together / 和をひろげる」というミッションを掲げています。誰かがはじめた「こと」がきっかけとなり、また新たな「こと」が生まれる、そのような様々な「こと」が日本中に溢れる未来が実現できれば、日本はより活気を帯びると信じています。
僕は、誰もが「生まれてきてよかった」と思える世界、そして人生の最期には「いい人生だった」と思えるような世界を願っています。日本の人口が減少しても、個々の生産性が向上すれば今以上のGDPを実現できるはずです。その生産性が向上するような環境を構築していくことが重要だと思っています。弊社も成長を続けながら、数十年後の活気ある国づくりに貢献していきたいと思います。
編集後記
少年時代から経営者に憧れを抱いていた佐藤氏。高い志があっても、成長を期待できる事業の種探しは容易ではなかった。「まずは行動してみる」とも言える生き方は、Rebaseのサービスを利用する人たちと共通しているとも言える。このポジティブな和の広がりは、日本を良い方向へと導くはずだ。
佐藤海/法政大学キャリアデザイン学部に入学後、休学しシリコンバレーへ渡米。De Anza Collegeにてビジネスを学び、さまざまなスタートアップにインターンとして参加。約3年間の留学生活で経営や起業の知見を得る。留学中に法政大学を卒業し、帰国後の2014年に株式会社Rebaseを設立。2022年、東京証券取引所グロース市場へ新規上場。