※本ページ内の情報は2024年11月時点のものです。

1936年からの歴史を持つ熊本日産自動車。新車・中古車の販売をはじめ、メンテナンス・車検・自動車保険と幅広い分野で地域のカーライフをサポートしてきた。2024年春には、熊本日産と日産プリンス熊本のホールディングス体制への移行が発表された。代表取締役社長の古荘雅教氏に、これまでの歩みや今後の展望についてうかがった。

ホールディングス化による体制強化で熊本の自動車業界を牽引

ーー会社の変遷をお聞かせください。

古荘雅教:
熊本日産自動車は、地域商社「古荘本店」の2代目である古荘健次郎が設立した熊本最古の国産ディーラーです。古荘氏は日産創業者の鮎川義介氏と交流があったことから、南九州エリアの販売権を獲得し、日産の中でも歴史あるディーラーとして産声をあげました。

その後、モータライゼーションのうねりの中で複数の販売チャネルが乱立しましたが、2011年にはメーカー直資の「日産プリンス熊本」を資本統合し、日産系で初の「地場による1県1販社体制」を確立しました。今後はさらなる日産シェアの拡大に向けて、2026年にホールディングス体制へ移行するため、2024年の11月からトライアルを実施します。

現在は「全社員の物心両面の幸福」をはじめとする経営ビジョンを掲げ、グループが成し遂げたい未来図を社内で共有し合っている段階です。

ーー合併ではなく、ホールディングス化を選んだ理由は何でしょうか?

古荘雅教:
レンタカー事業も含めて、情報・ノウハウの共有や会社機能の統合は進めますが、各社の良さを活かすためにも全統合は避けるべきだと判断しました。「競争と共創」を合言葉に、あくまで現場の部分は競い合う関係を保っていきたいですね。

異業界から来たリーダーとして、企業に新たな風を吹き込む

ーー古荘社長の経歴についてお話しいただけますか。

古荘雅教:
大学卒業後はネスレ日本株式会社に入社し、社会人の基礎を学ばせてもらいました。福岡で営業スキルを磨いたのち、アメリカのウォールマートチームに所属し、グローバル市場を舞台に面白い仕事をさせてもらいました。

30歳になった頃に日産プリンス熊本との資本統合の話があり、会長を務めていた父から事業継承について打診を受けました。まったく予想していませんでしたが、「自分にしかできない役割があるならば」とありがたく感じ入社いたしました。

ーー社長就任後の思いや変化をお聞かせください。

古荘雅教:
私は、車やお客様に精通している社員を心から尊敬しています。彼らの努力が成果につながる仕組みをつくり、働きやすい環境や体制を整えて会社の収益を上げることが自分の役割だと思っています。

メーカーで自動車業界について学んだのち、各県の販売会社を巡ることで歴史の重みも実感しました。異業界に長くいたからこそ、「熊本日産が守るべきもの・変えるべきもの」の判断に自分のキャリアが活き、良い意味で今までにない風を吹かせられていると思います。

ーー経営ビジョンはどのように浸透させているのでしょうか?

古荘雅教:
新しいリーダーが一番やってはいけないことは「旗を掲げないこと」です。過ちを恐れずに、自分がつくりたいチーム像と目指したい場所を明言するべきだと考えています。全社会議では、自分なりの旗を掲げた上で「みんなについてきてほしい」と話しました。

エンゲージメントにおいては厳しくも温かい職場という考えを掲げています。会社は社員の働きやすさを追求する一方で、社員には「自分たちの働きでお金を稼ぐ」という厳しさを持っていてほしいのです。「九州No.1の販売会社」というビジョンは、数値化した目標を設定しています。

車1台ごとに深まる顧客との絆、誰もが活躍できる場所づくり

ーー貴社の強みをお聞かせください。

古荘雅教:
商品(車)はメーカーがつくるので、ディーラーの価値は「スタッフの質」で決まります。たくさんのお客様とつながって愛される販売力、ご縁を広げていく力、大切なお車を任せていただける高い技術力は、どんなメーカーのディーラーにも負けない自信があります。

「車を売ったら終わり」ではなく、メンテナンスや保険など、各場面でお客様と絆を深め、1台1台に対して収益を育てていくことが大切です。現場の方々が長きにわたってつないできてくれた「信頼」というタスキを引き継いでいくことも一つの強みだと言えます。

ーー人材育成について独自の取り組みはありますか?

古荘雅教:
上司からの評価コメントは動画として残して本人が視聴できるようにしたり、項目別に「スター社員」を紹介する社内報を発行したりしています。それらを家族にも見せることで、会社や仕事の素晴らしさを自慢できるような仕組みを目指しています。

女性の活躍も弊社の特徴で、13店舗のうち3店舗は女性が支店長を務めています。ベテランがしっかりと支えてくれる環境で、若手が成長できることも魅力です。同世代で切磋琢磨することにより、30代前半で支店長になる人もいます。

現場に負担をかけないよう配慮しながら、採用面も強化し、採用イベントにはできる限り社長自ら参加するようにしています。新卒採用が中心でしたが、営業部門に関してはキャリア採用も増えてきました。

ーー今後の展望をお聞かせください。

古荘雅教:
会社の規模だけでなく、収益力・マーケットシェア・お客様や従業員の満足度といった、あらゆる「質」において九州No.1企業を目指していきたいですね。

前年を上回る取り組みを続けた結果、労働環境やグループが少しずつ良くなり、結果的に全社員の物心両面の幸福を実現することが理想だと思います。商圏拡大のチャンスが来たときに、弊社に真っ先に声がかかるような体制づくりを大切にして、今後も挑戦を続けていきます。

編集後記

社長交代やホールディングス体制への移行と、従業員にとっては激動とも言える変化が続いている熊本日産自動車。古荘社長が高く掲げる旗は、組織の目的地に欠かせないナビゲーションであり、チーム全体にやる気と安心感を与える。ビジョン実現に向けた堅実な取り組みには、長い歴史を重ねてきた老舗ならではの底力を感じた。

古荘雅教/1980年、熊本県生まれ。2003年に慶應義塾大学総合政策学部を卒業。同年、ネスレ日本株式会社に入社し、7年間従事。2010年、熊本日産自動車株式会社に入社。2020年、代表取締役社長に就任。2024年、日産プリンス熊本販売株式会社の代表取締役社長に就任。