※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

株式会社デリモは、「おいしい時間を、あなたと」をコンセプトに、調理麺や惣菜の製造を行っている。2021年には新たな商品ブランドである「DELIMO(デリモ)」を立ち上げ、1977年に設立した株式会社栗田製麺所から、2022年に現在の社名に変更し新たなスタートを切った。

2012年に代表取締役社長に就任し、惣菜事業を拡大させてきた栗田美和子氏にブランドに込める思いや今後の目標についてうかがった。

「うちだからできること」にこだわって、地域の食材や季節を楽しむ

ーー社長就任までの経緯を教えてください。

栗田美和子:
結婚を機に夫の家業である会社を手伝い始めた当時は、事務作業や配達、スーパーマーケットへのルートセールスの仕事をしていました。その後、常務取締役を務めていた時に惣菜事業がうまくいかず、前社長から「社長をやってほしい」と言われ、会社が衰退しても良いか、社長を引き受けて立て直しを図れるか悩みました。

もともとは息子が次期社長であることを社内発表している状態でしたが、市場が変化し、会社の状況が良くない中で、息子に引き継ぐ前に私が一度体制を整えたいと思い、社長を引き受けたのです。

ーー社長に就任してからどんなことに取り組んできましたか?

栗田美和子:
弊社はもともと製麺業をしていましたが、現在はグラタンやラザニアなどの惣菜を粉からつくり、麺が美味しい惣菜業の会社として形を変え、従業員にもそのことが浸透してきていると感じています。

また、「コトづくり」をテーマに、祭事を楽しむことや、地域で収穫された原材料を使い、更に原材料にこだわることに取り組んでいます。普段から社内の開発担当に向けて「大手企業にしかできないこともあるけれど、うちだからこそできることも必ずある」と伝えています。

社名をデリモに変えるというチャレンジも、従業員の理解を得ることができた一つの成果だと感じています。

現在では、私が社長に就任した2012年と比べると売上が2倍になり、安定した利益が出るようになってきていますが、夏は売上が伸びるのに対し冬は商品が伸び悩むなど、まだまだ課題は多いです。

ーー貴社の強みを教えてください。

栗田美和子:
近所の農家で採れた新鮮な小松菜を使ったメニューや、毎年5千パック程度つくっている七草粥など、少量でも製造できるところが弊社の強みです。

また、農水産物で市場販売規格からはずれた材料を活用した商品開発にも取り組んでいます。原材料の量が限られているので大手スーパーのプライベートブランドで同じことをするのは難しいと思いますが、弊社の商品はデリモオリジナル商品なので、材料がなくなれば終売とすることができます。

さらに、使用する小麦粉は主に埼玉県産の「あやひかり」という品種であることや、有名飲食店とのコラボ商品を数多く展開していることも弊社の特徴です。

海外人財も障害者も、すべての従業員が誇りを持てる会社でありたい

ーー新たな商品ブランド「DELIMO」を立ち上げたことでどのような変化がありましたか?

栗田美和子:
弊社は青森から愛知まで商品を展開していますが、「DELIMO」を立ち上げたことで自社商品が認知されやすくなり、従業員が離れて暮らす家族に「このスーパーで売っているから買ってみて」と商品を勧めやすくなったと感じます。従業員が親族などの親しい人に、どんな会社で働いているか伝えられることが、誇りを持って働くことにつながると考えています。

ーー海外人材や障害者の雇用も積極的に行なっているそうですね。

栗田美和子:
ミャンマーの技能実習生や特定技能の方々を直接雇用し、現在は105名が在籍しています。また、障がいのある方は8名在籍しており、現在も特別支援学校の方が実習に来ています。障害のある方は働かずに親が面倒を見るという考え方もありますが、私は働くことへの付加価値を伝え、汗を流して得たお金の価値を分かってもらいたいと思っています。障害のある方に対して社会が少し手を差し伸べることが大切であり、弊社でもできることをしていきたいです。

ーー採用強化のための取り組みを教えてください。

栗田美和子:
新卒採用が難しい現状の中で、弊社のことを知ってもらうためにインターンシップの受け入れを強化しています。今年の8月には大学1年生から3年生までの学生を10名ほど受け入れ、2026年以降の新卒採用の種まきを行なっているところです。

また、城西大学で2年間講演してきたことが実を結び、講演を聞いて弊社に入社したいと言ってくれた学生が来年入社する予定です。

「DELIMO=美味しい」といわれるブランドを目指して

ーー今後「DELIMO」をどのようなブランドにしていきたいですか?

栗田美和子:
コラボ商品の店名を見て買っていただくことも嬉しいですが、「DELIMO」だからという理由で手に取ってもらえるブランドに成長したいです。そのためにも他社に負けない商品を生み出したいですね。それによって従業員が自分の会社に誇りを持てるようになることで定着率が上がり、ひいては技術力の向上にもつながるでしょう。

ーー会社としての目標を教えてください。

栗田美和子:
「DELIMO」の立ち上げの際に、弊社の商品に対する思いやブランドのあるべき姿を明確にしたブランドステートメントを1年かけて作成しました。迷ったときはこのブランドステートメントに立ち戻り、消費者のみなさんに「DELIMOがあって良かった」と思うファンになってもらい、協力工場には「DELIMOだったら協力しよう」と言ってもらえるような会社を目指しています。

ーー読者に向けてメッセージをお願いします。

栗田美和子:
青森から愛知まで約110社のスーパーに展開しているので、「DELIMO」のマークを見つけたらぜひ食べてみてほしいです。また、日本で食品製造業を行っている誇りを持って、社員の方々や、弊社に関わっていただいている一人ひとり、これから関わる多くの人々と一緒に成長していきたいと思っています。

編集後記

従業員が誇りを持てる会社でありたいと繰り返す栗田社長の言葉からは、従業員やお客様を大切にする姿勢が強く感じられた。「DELIMO」ブランドを通じて、美味しさを追求しながら、地域や季節の食材を生かした商品を提供していくという思いが伝わってくる。また、障害者や海外からの技能実習生を積極的に受け入れ、多様な人材が活躍できる環境づくりにも力を入れている。今後、さらに「DELIMO」が成長し、他にはない価値を提供するブランドへと進化していく姿が楽しみだ。

栗田美和子/1955年富山県生まれ、日本大学卒業。1977年、株式会社栗田製麺所(現株式会社デリモ)に入社。2012年、株式会社クリタエイムデリカ(旧栗田製麺所)代表取締役社長に就任。