今のままでは、デジタル時代の波に取り残されてしまう。自らを変革したいと考える企業や地方自治体の事業創造の支援を行っている株式会社ADDIX。その守備範囲は広く、DX化のための事業構想の策定からシステム開発、デジタルマーケティングまでをカバーしている。さらに出版メディア事業も手がけており、質の高いコンテンツ制作能力を持ち、ユーザーの心を動かすデジタルサービスの構築を得意としている。
あらゆる趣味やライフスタイルを提案するメディア展開やSaaSサービスのWeb来訪データ可視化「FARO REPORT NEXT」の提供など、自社事業も積極的に推進し、多角的な事業展開で培った知見を、顧客支援に還元している。最近ではJR東海グループに参画し、さらなる飛躍が期待される代表取締役社長である伊藤雄剛氏に、同社の現在と未来についてお話をうかがった。
新たな挑戦を求めて
ーー貴社に入社したきっかけを教えてください。
伊藤雄剛:
これまで株式会社オプト(現株式会社デジタルホールディングス)やソウルドアウト株式会社、アンドデジタル株式会社などに入社し、デジタルマーケティングの分野で経験を積んできました。40代半ばになり、もう一度新たな挑戦をしたいと考えていたところに当時の株主であるPEファンドから声を掛けてもらいました。
入社を決めた理由は、この会社に大きな可能性を感じたからです。従業員が160人程度の規模でありながら、大手企業のDXや新規事業開発を一貫して支援できる体制に驚きました。コンサルティングや広告代理店のようなソリューションビジネスを展開しながら、本格的なDX支援ができる会社は珍しいと感じました。私自身が経験してきたデジタルマーケティングの延長上にある会社だと思い、自分自身もこの環境で学びながら成長できると感じたのです。そして、この会社でどこまで自分を成長させられるか挑戦してみたいという思いから、代表取締役として入社を決意しました。
ーー入社後はどのような取り組みをしましたか?
伊藤雄剛:
パラシュート人事での社長就任だったので、まずは従業員の皆さんの声に耳を傾けることに注力しました。社長とはいえ、細かい仕事もこなし、謙虚な姿勢を心がけました。そうすることで、徐々に従業員が心を開いてくれるようになり、会社の強みや課題が明確になってきました。
そして約4ヶ月間を経て、自身のビジョンを打ち出していきました。それがパーパスである「課題解決から、課題創造へ。そして、未来創造へ。」です。日本の企業が世界に後れをとっていたり、地方自治体の元気がなくなってきている現状を踏まえ、デジタルの力とコンテンツの力を活用して、再び輝ける企業や自治体をつくり出すことが私たちの使命だと考えています。
多様な専門性が融合するビジネスモデル
ーー貴社の事業内容について詳しく教えてください。
伊藤雄剛:
弊社は、事業創造支援会社として、企業や地方自治体に向けたDXやデジタルマーケティングの支援により、事業やサービスの成長と新たなビジネス創出による利益拡大を支援しています。また、出版メディア事業やSaaSサービスを提供しています。
企業さまがデジタルを活用して新しい事業やサービスをつくる際、事業の構想策定からシステム開発、マーケティング支援まで一貫してサポートしています。たとえば、大手保険会社の案件では、保険金のお支払いをするだけでなく、BaaS(※)を活用して、お客様がお支払いされたお金で資産運用ができるワンストップサービスを構築しました。こういった新しい取り組みを、構想段階から開発に至るまではもちろん、その後のサービス成長についてもサポートしています。
(※)BaaS:「Banking as a Service」の頭文字をとった略称。銀行が提供するサービスや機能を、APIを利用して「クラウドサービス」として提供すること。
ーー他社と比べてADDIXの強みはどこにありますか?
伊藤雄剛:
私たちの強みは、顧客の声を聞きながら進めるCX(カスタマーエクスペリエンス)の設計にあります。CXの設計は、顧客がサービスを利用する体験や購入、購入後など、顧客体験に関わるさまざまな顧客の行動を綿密に分析し、サービス全体の体験設計を行うものです。
私たちは、出版メディア事業も行っており、料理やガジェット、アウトドアなどの趣味を軸とした多様なメディアを持っています。好きなことに熱中している人たちの声を直接聞ける環境があることが、私たちならではのCX起点のサービス設計につながっており、評価されています。
また、事業やサービスを成功させるには、顧客の心を動かすコンテンツが不可欠です。そして出版事業で培った、質の高いコンテンツをつくる力があり、内製でクリエイティブ開発ができることも私たちの強みですね。
従業員と会社の共存共栄を目指して
ーー今後の人材採用について、どのような考えをお持ちですか?
伊藤雄剛:
現在、特に力を入れているのはビジネスプロデューサーの採用ですね。さまざまな職種のプロフェッショナルを束ねてプロジェクト全体をプロデュースし、クライアントの課題を解決に導く役割を担います。業務内容は多岐にわたりますが、その分、とてもやりがいのある仕事です。
能動的で、スピード感があり、心が動く瞬間を大切にできる方であれば理想的ですね。成果や成績も大切ですが、それ以上にチームワークを重視できる人に、将来の管理職や役員になってほしいと考えています。
ーー今後の展望を教えてください。
伊藤雄剛:
企業や地方自治体の課題解決と事業創造を、今以上に多くの場所で実現していきたいと考えています。5年後には従業員規模を2倍以上に成長させ、その結果を従業員に還元し、皆が幸せになれる会社として活躍していたいですね。
最近ではJR東海グループに参画したことで、新たな可能性も広がっています。たとえば、JR東海が持つ会員データや決済システムなど、グループのアセットを活用した新しい提案などができるようになるかもしれません。そうしたグループのつながりに加え、デジタルの力やコンテンツの力を武器に、企業や地方自治体の輝きが向上する支援をしていきたいと思います。デジタル時代に新しいことを始めようとするとき、真っ先に思い浮かべてもらえるような存在になりたいですね。
編集後記
事業創造という新たなビジネス創造を手掛けていく中で、自社の強みであるCXに基づいた設計とコンテンツをしっかりと柱に持っていることで、総合的な支援力を実現しているADDIX。伊藤社長の語る言葉からは、日本の産業界や地方の未来を真剣に考え、それを実現しようとする強い意志が感じられた。同社の描く未来図が、どのように実現されていくのか。その過程を見届けられる将来が、今から楽しみでならない。
伊藤雄剛/株式会社オプト(現株式会社デジタルホールディングス)に入社後、ソウルドアウト株式会社の取締役COOに就任。地方・中堅企業のDX支援会社であるアンドデジタル株式会社の代表取締役CEOを経て、株式会社ADDIXの代表取締役社長に就任。