
2020年9月、国の方針で携帯電話料金の引き下げを断行したことで、通信業界全体の収益構造が変化した。その影響は販売代理店にも及び、厳しい状態が続いたという。
株式会社テレアースジャパンは、携帯電話の代理店事業会社として1999年に設立された。携帯電話の普及に伴って事業を拡大してきたが、現在は通信事業の一部を譲渡し、「テレアースグループ」として通信事業の他、飲食店事業なども多角的に運営している。現在の業態に至るにはどのような背景があったのか、代表取締役社長を務める安達晴彦氏にうかがった。
証券会社から住宅設備、そして携帯電話の販売事業へ
ーー社長の経歴をお聞かせください。
安達晴彦:
バブル期に大阪の大学を卒業した後、当時人気の業界だった証券会社に就職しました。顧客を獲得し結果を出していたのですが、父が心臓の手術をすることになり、「帰ってきてほしい」と母に頼まれたため、家業の有限会社安達住設を継いで住宅設備の仕事に携わることになったのです。
住宅設備の仕事は楽しかったのですが、同時に物足りなさも感じていました。そんな中で当時はまだ珍しかった携帯電話を目にする機会がありました。自分も欲しいと思ったのですが、当時はまだ携帯電話がとても高価な時代です。何とかできないかと考えたとき「仕事にしてしまおう」というアイデアが浮かびました。その後すぐに携帯電話の販売事業をスタートさせ、1999年に株式会社テレアースジャパンを設立しました。
ーー仕事をする上でどんな考えを大切にしていますか。
安達晴彦:
仕事をする上では「ご縁」が最も大切だと考えています。ご縁によって人やものとつながることで、困難に直面したときは助けてもらえたり、やりたいことがすぐに実現できたりするからです。ご縁があれば、1本の電話で会いたい人ややりたいことにつながることができますが、ご縁がないと100本電話をかけてもつながることができません。
たとえば病気をしたときに「いいドクターに診てもらえた」というのも、「人(ドクター)とのご縁」に恵まれたからです。
仕事でも、取引先やスタッフなど「人とのご縁」はもちろん、タイミングを逃さない「時間のご縁」や「物とのご縁」など、どんなご縁も大切にしていきたいですね。
――「人とのご縁」で、スタッフに対して、意識して取り組んでいることはありますか。
安達晴彦:
入社式や内定式では必ず動画を撮影し、ご両親にお送りしています。やはりご両親としては、お子さんが就職した会社について「どんな会社で働くのか」「どんな先輩がいるのか」と気になることが多いはずです。「こんな素敵な会社で働いているんだ」と思って安心してもらいたいという思いをこめて、この取り組みを続けています。
通信事業から飲食店事業まで多角的に経営を行う

ーー現在はどのような事業を展開していますか。
安達晴彦:
現在はドコモショップの通信事業と、「nana's green tea」を始めとする飲食店事業を展開しています。通信事業は以前はソフトバンク事業部とワイモバイル事業部もあったのですが、携帯電話料金引き下げの影響で業界全体の収益が下がったため、2023年に事業譲渡しました。
「nana's green tea」は、日本茶や抹茶など日本の伝統的な茶葉をオリジナルの合組(ごうぐみ/ブレンドのこと)で味わえるグリーンティーカフェです。現在、京都・大阪・岡山・神奈川でフランチャイズ店舗を6件運営しています。
私の父は生前、「衣・食・住に関係する仕事はとだえない」と話していました。携帯電話は、カバーを付けたり着せ替えをしたりするなどアクセサリー的な側面を持つ、一種のアパレル製品と捉えています。つまり「衣」の仕事ですね。安達住設では「住」の仕事も体験しました。そこで、「次は食に関する仕事をやりたい」と考えて始めたのが、「nana's green tea」です。現在は「食」に関する仕事として、「ラーメン諭吉本舗」をはじめとしたラーメンブランドの展開にも携わっています。
インバウンド需要に応えてさらなる成長を!
ーー最後に、貴社の今後の展望をお聞かせください。
安達晴彦:
これからは、インバウンド需要がますます増加していくでしょう。日本政府が「2030年までに訪日客を6千万人まで増やしたい」という目標を掲げており、2022年以降はインバウンドが増加しています。弊社の飲食店事業においても、インバウンド需要に応えるメニューやサービスを展開するつもりです。
私は、会社をひとつの「チーム」として捉えています。時代の変化に合わせて対応しながら、柔軟な判断や行動ができるチームとして皆で成長することが、弊社が飛躍する1つの柱になると考えています。会社の代表者として後継者の育成をするとともに、スタッフ全員と今後の展望を共有して成長していきたいと思います。
編集後記
「感謝できる人は素晴らしいパートナーに恵まれる」と安達社長は語る。他人に感謝できる人には、同じように感謝できる人がパートナーとして現れるからだ。この考え方と「ご縁」を大切にする姿勢が、テレアースグループの成長を支えてきたとも言えるだろう。多角経営を「衣食住」の視点で捉える視点もおもしろい。これからの時代の変化に合わせて、同社がさらに変化していくのが楽しみだ。

安達晴彦/1965年、京都府生まれ。1988年、大学卒業後、大阪の証券会社に勤務。1992年、株式会社安達住設に入社。1996年、専務取締役に就任。1993年、峰山青年会議所(現:京丹後青年会議所)入会。1999年、株式会社テレアースジャパン設立。1999年、日本青年会議所JC研修プログラム推進支援委員会副委員長。2002年日本青年会議所人間力探究委員会副委員長。2005年日本青年会議所近畿地区京都ブロック協議会国際交流委員会委員長。