※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

日本への訪日外客数は、1964年以降、コロナ禍や一部の年を除いて増加を続けている。ホテルマネージメントインターナショナル株式会社の代表取締役でインド出身の比良氏は、1970年から日本でホテル業を営み、人的交流を通じて多くの人々に日本の魅力を伝えることを目指してきた。訪日外国人をさらに増やすために、同社が推進する事業や人材育成の方針について、比良氏にお話をうかがった。

インドとの歴史的つながりを活かし、ホテル事業で成功

ーー日本で事業を始めるまでの経緯を教えてください。

比良竜虎:
私の先祖に遡る話ですが、1905年、日露戦争が終結した年に、日本はイギリスと第二次日英同盟を締結しました。その条文には、当時イギリスの植民地であったインドの領有権と防衛権を認める内容が含まれており、その一環としてインドの約50社が日本に誘致されたのです。その中の1社が私の先祖の会社で、これをきっかけに、私の先祖が日本で事業を始めることとなりました。

私たちの家業の始まりは、横浜で日本の絹をインドに輸出したことです。その後、神戸で綿をインドに輸出したり、インドから鉄鉱石を輸入するなど、さまざまな事業を展開してきました。

そして1970年、当時日本の宿泊業界は旅館が中心であった時期に、ニッポンレンタカーサービス株式会社の石川浩三社長が、モーテルとレンタカーを組み合わせた新しいビジネスモデルとして株式会社サンルートホテルシステムを設立した際、弊社はその事業に50%出資したのです。これが弊社のホテル事業の始まりです。

ーーその後、事業の中心をホテル業に移行されたのですか?

比良竜虎:
その通りです。サンルートホテルの運営が順調に進み、最終的にサンルートの全株をJTB社に譲渡しました。その資金を活用し、後継者不足という課題を抱える日本の旅館を継承したり、資本提携を通じてホテルを買い取り、ホテル運営を本格的に始めたのです。

当時、ホテル業界は成長期にあり、顧客数も増加し、新しいホテルが次々に建設されるなど大きな変革を遂げていました。現在では、買い取りに加えて自社開発も進めています。弊社で最も大きなホテルであるリザンシーパークホテル谷茶ベイやホテルパールシティ神戸などは自社開発したもので、自社開発と買い取りの比率はほぼ半々となっています。

インド系企業ならではの強みが生む新たな価値

ーー貴社の事業内容や強み、現在の取り組みについて教えてください。

比良竜虎:
弊社は、ホテル・旅館・結婚式場などの経営を中心に事業を展開する企業であり、日本におけるインド資本企業という稀少な特徴を持っています。インドの富裕層は家族旅行を好む傾向があり、専属の調理人を同行させることもあります。

宿泊にワンフロアを借り切って、1回の利用で1500万〜2000万円ほど消費することもあるため、顧客としては非常に魅力的だと言えるでしょう。こうしたインドからのインバウンド需要を的確に捉えられることが、弊社の強みですね。

また、今年に入ってからは、マリオット・インターナショナルやIHGホテルズ&リゾーツといった外資系ホテルと提携を進めています。国内で運営する50軒のホテルのうち、10軒を外資系企業との提携施設とし、国際化をさらに推進する方針です。

人材育成が生み出す観光立国への架け橋

ーー今後、どのような事業展開を目指していますか?

比良竜虎:
毎年、新たに3軒のホテルを開業することを目標としています。その展開方法として、新規開発、既存ホテルとの提携、そして今回のマリオットとのような外資系とのアライアンス形式の3つを計画しています。

また、インド国内では現在30軒のホテルを開発中で、そのうち15軒はインド政府が民営化する予定のホテルを継承する予定です。このような海外展開を進めることで、人的交流や企業文化の共有、さらにノウハウの蓄積を図っています。日本とインドの架け橋となり、双方に持続的なメリットを創出していきたいですね。

ーー従業員向けの教育で大切にしていることは何ですか?

比良竜虎:
言葉の教育を最も重視し、英語を基盤に、中国語や韓国語も習得できるよう指導体制を整えています。社内には常駐の語学教師が15名おり、学びやすい環境を提供しています。

また、ホテル業務は内部統制や管理、販売、サービス、経理など多岐にわたるため、国際的なホテル水準に対応できる人材を育成するべく、HMIホテルスクールを開講しました。本スクールでは、3ヶ月、半年、10ヶ月といったコースを設け、修了試験に合格した方には証明書を授与しています。

さらに、海外研修やインターンシップを通じて、グローバルスタンダードなサービスを現場で学ぶ機会を提供し、社員の成長を促すと同時に、お客様にご満足いただけるよう努めています。弊社が求めるのは、国際的な視野を持ち、自ら考え行動できるクリエイティブな方です。そのような方には、多くの活躍の場が用意されています。

編集後記

「世界の80億人に日本に来てほしい」という比良氏の言葉には、観光立国を目指す揺るぎない情熱と、日本の魅力を世界に届ける使命感が宿っていた。50年以上にわたるホテル業界での豊富な経験と鋭い洞察力をもとに、日本の観光業が進むべき道を見据え、次々と果敢に実行するその姿勢には圧倒される。

多様な業態を展開し、世界中の顧客に応える力を持つホテルマネージメントインターナショナル株式会社とともに、比良氏は日本の美しさと奥深さを世界に発信し、観光業の未来を切り拓く確かな歩みを続けている。

比良竜虎/1948年、インド生まれ(1976年、日本国帰化)。1970年、日本レンタカー株式会社石川浩三氏とともに共同出資し、株式会社サンルートホテルシステムを設立。1998年、ホテルマネージメントインターナショナル株式会社を設立。公益社団法人在日インド商工協会会長・公益財団法人日印協会理事・経団連会員他。インド国のPBS勲章及び、民間功労者に叙勲される最高位勲章「パドマ・シュリ勲章」を綬章。陸運及び観光関係内閣府沖縄総合事務局長賞、国土交通大臣観光功労賞を受賞。