2019年に設立された株式会社SPeak(スピーク)。バイリンガルの学生や外国籍の留学生といった、グローバル人材をサポートするWebコンテンツが企業や大学に注目されている。代表取締役CEOの唐橋宗三氏に、創業のきっかけや事業内容、今後のビジョンについてうかがった。
海外生活で見えた問題点から日本のグローバル化を目的に起業
ーー経歴や起業の経緯をお話しいただけますか。
唐橋宗三:
日本の中高一貫校のエスカレーターシステムに違和感を覚え、16歳で高校を中退しました。経営者である父を見て「自分の力で意義ある事業を立ち上げたい」という思いを抱きつつ、英語だけは好成績だったことから、両親に懇願してアメリカ現地高校で学ぶ機会を得ます。8年ほど海外で過ごして「日本をより良い国にしたい」と考えるようになり、大学卒業後は日本で就職しました。
その後、日系メーカーで経験を得た後、MBA取得を目的に慶應義塾大学大学院へ通い、留学生からキャリア形成について相談を受ける中で、彼らが日本で就職活動や住居探しなどの生活全般に困っていることを知りました。インターン先にも「日本で働きたいけれど行き着く先がない」という人が多くいたのです。
自身も「外国人の妻がいる」という理由で家を借りられなかったり、自分の名義でなければ妻が携帯電話を契約できなかったり、生活の不便さを実感していました。海外からの優秀な人材を日本が歓迎できていない状況に改善の余地を感じ、起業した次第です。
ーー課題解決の方法に起業を選んだ理由をうかがえますか?
唐橋宗三:
人口減少の「ただの穴埋め」として行われる移民政策は、おそらく成功しないと思っています。日本のグローバル化をスムーズにするには、NPOやボランティア、スモールビジネスなど多様な手段があり、中でもスタートアップは大きなインパクトを世の中に与えられると考えました。課題がとても根深いからこそ、ビジネス的なニーズも多く埋もれているのです。
優秀な外国人材の就活をサポート!学生向け・企業向けWebサービスを運営
ーー事業内容について教えてください。
唐橋宗三:
現在では、キャリア支援として2つのWebサイトを運営しています。「JPort Journal」は、グローバル学生の課題を解決するプラットフォームとして、日本でのキャリアや就活に役立つ情報を英語版・日本語版の各種コンテンツで提供しています。
日本の就職活動は、世界的に見ると特殊であるため、留学生の就職率は35%程度に留まっています。「JPort Journal」のように、ユーザー視点に立ったコンテンツは、日本の就活の異国の地で行う留学生にとって、なくてはならないオンラインキャリアセンターの様な存在になっています。留学生の先輩にあたる、「日本で就職した外国人」とともにコミュニティが形成されている点も大きな特徴です。
「JPort Match」は企業向けサイトで、日本語・英語でグローバル新卒へ向けた求人や会社情報を掲載できる媒体です。バイリンガルで、日本文化への理解も深い多くの留学生が登録しているため、海外展開やダイバーシティ経営を推進する企業様に好評です。留学生用に新たな職種をつくるなど、フレキシブルに変化した会社もあります。
ーーどのように競合と差別化したのですか?
唐橋宗三:
留学生の就職をサポートする「圧倒的ユーザー視点のコンテンツ」・コミュニティによる「アクティブなユーザー層」が強みです。外国人材を対象とした就職斡旋・人材紹介・媒体はすでに市場にありますが、「求人情報の数を増やす」という目的が先行しています。
「The 就活」に苦悩する留学生のために価値提供をすることが、採用したい企業が求める母集団形成によりつながります。弊社のプラットフォームはアクティブなユーザーが非常に多く、大学低学年から登録している学生もたくさんいるので、海外展開・ダイバーシティ推進する多くの企業の経営者・人事の方々に積極的にご活用してほしいと思います。
新たなインフラを構築し、国籍を問わず誰もが安心して暮らせる社会へ
ーー今後の展望をお聞かせください。
唐橋宗三:
「JPortブランドだけで、留学生就職率を70%に大きく貢献する」という中期的な目標があります。目標を達成するには、1社につき5名が働くと考えると最低でも「3000社」の企業と連携する必要があるため、企業規模や業界を問わず海外展開を加速する企業へのアプローチを深めていこうと思います。
私は「日本をグローバル人材先進国にする」という志を持っています。そして、当社は「Global People make Global Companies & Society.」というビジョンを掲げています。
「JPort」は「Japan Passport」の略でもあり、いずれはは優秀な若手外国人材とその家族が日本人と同等のサービスを受けられるように、インフラの構築を目指していきたいと思います。あまり知られていないですが、日本の優秀な外国人に対する政策は、他先進国に引けを取らない一方で、社会インフラが整っていないのが日本の現状です。
日本では多くの場面で遭遇する「外国人NG」という現状への解決策とし、金融事業を進めていきます。信用が見える化される環境さえあれば、リスクを恐れるサービス事業者への安心材料を提供し、「若手外国人材=プレミアムユーザー」という理解も得られると確信しています。日本で暮らす若手外国人材とその家族がさらに増えても「安心・安全な日本」を維持できるように、日本人も外国人も安心できる社会をつくることを目指していきます。
編集後記
人口減少が加速していく日本。「人材を活かせる環境がない」という理由で、優秀な外国人材を逃している現状は実に惜しい。SPeakの取り組みは単なる留学生のキャリア支援ではなく「日本のグローバル化」だ。日本に魅力を感じる外国人を増やすことで、日本がさらに「安心・安全で良い国」になるという好循環が生まれるだろう、と胸が弾むインタビューだった。
唐橋宗三/16歳で渡米し、アメリカの高校を卒業。ニューヨーク市立大学法科心理学部を卒業。帰国後、ダイキン工業株式会社にて営業戦略部門に従事。慶應義塾大学大学院にてMBA取得後、スタートアップや中小企業での経験を経て、2019年に株式会社SPeakを創業。日本最大級の学ぶ・働く若手外国人材向けキャリアサービス「JPort」や、ダイバーシティ経営・海外展開・多国籍社員とインクルーシブな職場を軸に企業選びができるサイト「JPort Match」を運営。