会社の成長に欠かせない新たな挑戦には、ときに即断即決も必要だ。1959年の創業から造園工事業で成長してきた株式会社豊環境開発は、2代目代表取締役である榊原康徳氏による挑戦的な試みにより近年大きく売り上げを伸ばしている。
一体どのような取り組みが成功したのか、挑戦の背景や内容などを榊原社長に聞いた。
父から受け継いだ会社に新たな風を入れ、急成長を成し遂げた2代目社長
ーー榊原社長の経歴をお聞かせください。
榊原康徳:
私は父が創業した会社を受け継いだ2代目社長にあたります。農業高校を卒業してから3年間、名古屋市の造園会社で修業を積み、1992年に弊社に入社。そして入社10年後の2002年に社長を引き継ぎました。
会社を継ぐことは学生の頃から意識していたものの、具体的な将来ビジョンまでは持っていませんでした。農業高校を選んだのも弊社の事業に分野が近そうだという程度の理由でしたが、高校で学んだ農業や土木の知識はすべての基礎として今も役に立っています。
ーーターニングポイントになったエピソードを教えてください。
榊原康徳:
30歳のときに2人の方から「ビジョンがない者に会社の成長はない」と言われたことです。それまで自分の将来に向き合ってこなかった私にとっては、本当に耳の痛い言葉でした。
この出来事をきっかけに、自分の「社長」という立場と正面から向きあうことを決意し、自分の中での本当のスタートを切ります。そして「会社の売り上げを伸ばす」ことと「40歳で新たな事業を立ち上げる」という2つの目標を掲げました。
その後、40歳までに両方の目標を無事達成し、社長としての自覚もより一層強固になりました。30歳で2人から同時に提言されたことが今でも不思議ですが、あの出来事があったからこそ今の自分があると言えるでしょう。
ーー新たに立ち上げた事業はどのようなものでしたか?
榊原康徳:
ヤフーオークションを利用した中古建機の販売です。最初は自社の機械を修理して出品していたのですが、これが驚くほど順調に進み、2カ月目で売上500万円を達成しました。
そしてその調子のまま事業を拡大していき、約10年後には年間約12億円を達成するほどに成長しました。該当するカテゴリに競合が少なかったことと、カテゴリ1位を全力で目指した行動量が功を奏したのでしょう。
じつはこの事業開始には、店舗を借りる前に事業内容が決まっていなかったという裏話があります。普通に考えれば無謀な行動ですが、当時の私にとっては自らを奮い起こすために間違いなく必要なことでした。
道は全力で開拓すれば切り開けるものです。始まりがスマートでなくとも、“今・その時”努力すれば見えてくる景色もあります。
歴史ある造園工事業のノウハウをベースに新事業で規模拡大を狙う
ーー貴社の事業内容を教えてください。
榊原康徳:
造園・土木・水景施設などの建設工事と、ヤフーオークションを利用した中古建機のオークション、そして中古建機販売の「オールストッカー」の運営です。
弊社は1959年の創業当時から造園工事で成長してきた会社です。オークション事業の始まりは先ほどお話したとおりで、オールストッカーはその延長線上の事業として2022年にスタートしました。
オークション事業とオールストッカーの運営は今や弊社に欠かせない事業になっており、弊社の年間売上額は2021年が17.0億円、2022年が43.0億円、2023年が46.7億円と順調に推移しています。
ーー2022年にスタートしたオールストッカーとはどのような事業ですか?
榊原康徳:
「オールストッカー」とは中古建機を専門に取り扱う、オークションサイトとマーケットプレイスを組み合わせた事業です。もとはSORABITO株式会社が運営していた事業であり、同社代表取締役社長(現:取締役会長)である青木隆幸氏との協力体制を検討した結果、2022年に弊社が買い取ることとなりました。
買い取った理由は、オークション事業で培った中古建機販売のノウハウを活かせると判断したためです。弊社の豊富な売買実績と整った物流体系で事業を強化しつつ、パートナーであるSORABITOとともに事業発展に取り組んでいます。
伝統ある事業と新たな挑戦を両立できる企業を目指す
ーー今後、貴社が達成したいと考えている成長目標を教えてください。
榊原康徳:
売上100億円を目指したいですね。まずは目下の目標である50億円を達成してから、次のステップとして100億円を目指します。
ここ数年の売上額は順調に推移していますが、100億円を達成するには事業規模が足りません。現在の事業を柱としてしっかり維持しつつ、M&Aのようなリソースや売り上げを伸ばす方法を活用していく必要があると感じています。
また、2025年には設立50周年を迎えるので、新社屋の建築に取り組みたいと考えています。50年生き残れる会社は本当に貴重ですが、その実績に慢心してはいけません。この節目の年にかぶとの緒を締め直す気持ちで新たな環境に身を置き、より一層事業発展に邁進してまいります。
編集後記
榊原社長が始めた中古建機販売事業はSDGsとの相性もよい。社会が「新しい物をほしいだけ」から「必要なものを必要なだけ」へと変わっていく中で、今後も需要は増え続けていくだろう。ヤフーオークションという小さなスタートから始まった事業がどこまで成長していくのか、その可能性は果てしない。
榊原康徳/1969年、愛知県生まれ。愛知県立半田農業高等学校出身。高校卒業後に名古屋市の造園会社で3年の修業期間を経て、1992年に株式会社榊原農園(現:株式会社豊環境開発)に入社。2002年に代表取締役に就任。2009年にエコ建機という屋号でヤフーオークションをスタートし、2022年には中古建機を専門に取り扱うオークションおよび販売サービス「オールストッカー」を買収。年間売上額を2年間で約30億円伸ばすことに成功。