国土交通省が発表した「長持ち住宅の手引き」によると、日本の住宅の利用期間は平均30年だと言われている。戦後の日本では、人口増加、都市化の進展、経済成長が続く社会状況の中で、新築が主流であったことが要因である。しかし、これからの成熟社会では、人口、世帯数ともに減少していくことが予想され、つくっては壊す時代から長持ちさせる時代へ変わっていく。
そんな中、「ご縁を大切に出会ったお客様とは一生涯のお付き合いをさせて頂く」精神のもと、東京武蔵野の住宅を見守っている企業が株式会社グッディーホームだ。今回、創業者の卯月靖也氏から、既存のお客様を大切にするために行っていることや今後のビジョンについて話をうかがった。
5歳から起業を考え、初志貫徹を貫く
ーー起業はいつから考えていましたか。会社設立に至るまでの卯月社長の経歴を教えてください。
卯月靖也:
祖父が建設業を創業しており、その家庭で育ったので、5歳くらいのときは祖父の後を継ぐものと思っていました。しかし、母方の祖父だったため従兄弟が継ぐことが決まっており、その旨は母からもはっきりと言われたことを覚えています。
大学や新卒で企業に入社したときは、起業は考えていませんでした。一方で、大学卒業時のコメントには「社長になる」と書いていたので、心のどこかで意識していたのかもしれません。
起業のきっかけは、新卒で入社した株式会社細田工務店にて、当時取締役だった現在の株式会社さくら住宅相談役の二宮生憲氏と出会ったことです。二宮氏から起業を勧められたことで、意識が変わりました。今でも師匠として慕わせていただいています。
ーー創業後、どのようにお客様と接点をつくってこられたのですか?
卯月靖也:
2004年の創業時は、折り込みチラシでショールームのリフォーム相談会を告知したり、知り合いから紹介をしていただいたりして、お客様を獲得していきました。
創業5年目には10年後の未来のお客様に向けて、今現在リフォームを意識していない方でも参加できるバスツアーを企画し現在も続けています。夏休みの自由研究対策としても活用できる本ツアーは、約200件応募があり抽選になるほど人気があります。
地域密着型の「街の住医」として既存のお客様とのご縁を大切にする
ーーグッディーホームの強みを教えてください。
卯月靖也:
リピーターが多いことです。2023年度の数字では、契約に至るお客様の8割以上は、以前弊社でリフォームをしたことのある方か、その方からの紹介でした。
一方、金額別で見ると、件数の8割は50万円以下の低額リフォームです。弊社は小さなお困りごとにも対応しています。
お客様から「ありがとう」と言っていただくのは、3000万円のリフォームでも1万円のリフォームでも変わりません。1万円のリフォームであっても、お客様のライフサイクルが変わったときに、再度大きなリフォームでも声をかけていただけるきっかけになるのです。
ーー地域密着型企業として、リピート率向上のために行っていることはなんですか。
卯月靖也:
地域密着だからこそできることとして、今までお付き合いのあったお客様に、年4回郵送にてダイレクトメールを送っています。ダイレクトメールには、必ず担当者が一文でも手書きでお客様にコメントを書くことを徹底しています。
また、毎年10月には次の年のカレンダーを手渡しでお客様にお持ちします。そうすることでいつでも接点を持てるので、お客様が住宅のことでお困りの際は弊社を思い出していただくことができるのです。
これが、弊社がキャッチコピーとして掲げている「街の住医」の考え方で、既存のお客様が困ったときに駆けつける。さらに弊社は、お客様だけではなく、社内の社員が困っている場合でもお互いに駆けつける文化を大切にしています。
従業員の幸せを第一に考えながら、リフォーム業界の発展にも寄与していく
ーー卯月社長が思い描く理想の企業像を聞かせてください。
卯月靖也:
基本的には、今後も既存のお客様を大切にしていくことを第一に考えています。また、ある時期を境に、社員が「この会社で働いていてよかった」と思えることを優先したいと考えるようになりました。売上重視ではなく、現状の社員数でお客様満足をいかに高めるかを追求しています。
そのため、新規のお客様を無理に増やそうとは思っておらず、自然増で良いと考えています。時期によっては問い合わせが多く、相談会や遠方までうかがう時間を既存のお客様のフォローにまわしたいという理由もあり、ここ数年は相談会を減らしたり、施工エリアを狭めることもしています。
ーー理想の企業像のために思い描く、5年後10年後のビジョンはありますか。
卯月靖也:
弊社が少しずつ成長していくことが重要で、社員と既存のお客様を大切にし、新規のお客様や社員は、弊社の考え方に共感いただいた方に参加していただければ嬉しいです。
その上で、リフォーム業界全体も変えていきたいと考えています。具体的には、リフォーム業界は建設業界の中に包括されており、学生がリフォーム業界に携わりたいと思ったときに、勉強をする手段がありません。そこで、2024年9月より学校法人東京町田学園 町田デザイン&建築専門学校にて、リフォームの授業をさせていただくこととなりました。
また、リフォーム業界を支えるメーカーとの関係も変えていきたいです。弊社のような工務店は、大手上場企業から建材を導入しているため、メーカーが工務店に頭を下げて、製品を導入してもらう図式ができていますが、私はそうではないと思います。工務店、メーカー、商社が三位一体となって、個々のお客様のニーズに合った建材を導入したり、お客様の生の声を共有したりするなど、もっとフラットな関係性にしていかなくてはならないと考えます。
しかし、これらの業界改革は、私1人ではできません。私の師匠でもあるさくら住宅の二宮相談役が2019年につくった一般社団法人全国リフォーム合同会議にて、意見交換を重ねながら今後も進めていきます。
編集後記
全スタッフの顔写真をホームページに載せている卯月社長。確かにどのようなスタッフが、大切な家のリフォームを手がけてくれるのかわかれば、初めてお願いするときでも安心して任せられるだろう。
また、最初のリフォームから何年か経った後でも「あのときお願いした担当者」がすぐにわかり、リピートにつながるのもうなずける。社員や既存顧客を大切にする卯月社長だからこそ、真に住み心地の良い家ができ、武蔵野の住宅環境を見守り続けてくれる安心感につながるのに違いない。
卯月靖也/1970年東京都生まれ、拓殖大学卒。株式会社細田工務店に6年、山九株式会社に5年勤務したのち2004年に株式会社グッディーホームを設立。