光回線の営業を手がける株式会社メルヴェイユ。2005年に同社を設立した代表取締役社長の杉本幸倫氏は、現在ではSNSやYouTubeを通じてその名が広く知られる存在となっている。
もともと貴金属買取事業で急成長を遂げたものの、突然のトラブルに直面し、3000万円の借金を抱えることになった杉本氏。しかし、その逆境を乗り越え、今では年商20億円を超える企業へと成長させた。その成功の秘訣とは一体何なのか。会社設立に至るまでの道のりと、経営理念について詳しく話をうかがった。
成功と挫折の波乱からの会社設立
ーー起業の経緯をお聞かせください。
杉本幸倫:
学校を卒業した後は、まずは会社員として働き始めました。体育会系の環境で育った私にとって、先輩が後輩にご馳走するのが当たり前という文化が根付いていたため、社会に出て10歳も年上の先輩と割り勘にすることにどうしても違和感を覚え、「収入が低いからなのだろうか」と疑問を抱くようになりました。自分は10年後、後輩と食事をする際に割り勘にしたくないという思いが強まり、23歳で会社員を続けながら化粧品やサプリメントの代理店ビジネスを始めることにしました。
そのビジネスで手ごたえを感じ、半年後に会社を辞めましたが、代理店ビジネスには将来性が見出せないと感じ、30歳のときに仲間と共に貴金属の買取事業を立ち上げました。この事業は順調に成長し、1年目で8000万円、2年目には12億円という売上を達成することができました。
ーー貴金属買取で順調な成長を遂げる中、現在の会社を立ち上げるに至ったのはなぜでしょうか?
杉本幸倫:
貴金属買取の事業は急成長しましたが、その最中に国税局の調査が入り、役員一人あたり3000万円の支払いが求められる事態となりました。勉強不足もあって、期日までに必要な金額を準備することができず、借金を抱えることになりました。
さらに、当時は身近な人からの裏切りや盗難といった予期せぬトラブルも次々と発生し、大きな困難に直面しました。それでも、私は過去を悔やむよりも前に進むことが大切だと考えるタイプです。この借金を返済しながら新たな挑戦をするために、知り合いの社長で成功を収めている方々に連絡を取り、ビジネスの手法を学ぶことにしました。こうして2005年、私はメルヴェイユを設立する決意を固めたのです。
ーー日々のビジネスや生活の中で、特に大切にしている考え方やモットーを教えてください。
杉本幸倫:
私は「尋ねるな、観察せよ」という言葉を常に心に刻んでいます。23歳でビジネスを始めて以来、成功している人に直接質問するのではなく、その人の行動や言動を観察し、自分のものにしようと努めてきました。電話のかけ方や飲食店での立ち居振る舞い、初対面の人への接し方など、どんな些細なことでも学びの対象とし、成功者の真似をしてきました。
私のビジネス経験は長いですが、それは観察と模倣のおかげであり、自分から積極的に動き、結果を出している人に接触する姿勢が重要だと思っています。SNSを始めたときも、成功している人に自分から連絡をとり、そのノウハウを学びました。私は自分に特別な才能や能力があるとは思っていませんが、だからこそ他者から学ぶことに全力を注いでいます。
強みは教育力!1%の積み重ねがもたらす大きな成果
ーー現在手がけている事業内容と、貴社の強みを教えていただけますか?
杉本幸倫:
私たちの最大の強みは「教育力」です。設立当初は借金を抱えていたため、人材確保に十分な資金を投じることができませんでした。
ヘッドハンティングに頼ることもできず、業界未経験者を徹底的に教育することで成果を上げてきました。さらに、私たちは家族にも自信を持って売れるような誠実な商材だけを扱うことを徹底しています。また、toC(個人向け)であれば商材が変わっても販売できる自信があり、少し教育に時間をかければ、営業以外のビジネスでも結果を出す力を持っていると自負しています。
ーー社員の方々には、どのような理念や考え方を伝えていますか?
杉本幸倫:
スタッフには「1.01倍の365乗」という話をよくします。多くの人は何かを大きく変えることで成功を手にしようと考えます。SNSでは劇的な変化の物語が目に留まりますが、それは多くの場合一時的な結果に過ぎません。
昨日よりも今日少しだけ多くのことをこなす、つまり1%の努力を積み重ねることで、その365乗は37倍にもなります。この小さな努力をさらに3年間続けることで、真の成功が見えてくると伝えています。大きな変革を目指すのではなく、毎日少しずつの積み重ねが大事だということを強調しています。
新卒採用やインターン制度を新たに展開
ーー今後の採用方針や、どのような人材を求めているかについて教えてください。
杉本幸倫:
これまでは中途採用が中心でしたが、来期から新卒採用やインターン制度も開始する予定です。特にインターン制度では、学生起業を目指す方を対象としたプログラムを考えています。将来的に独立を考えている方も歓迎ですし、学生でも可能性があれば、出資などの支援を行っていく予定です。
中途採用でも新卒採用でも、私たちが求めるのは「素直さ」を持つ人材です。先輩からアドバイスを受けたとき、良し悪しを判断する前にまずは試してみる、そういった素直さが結果を出すための秘訣だと考えています。私自身も、少しだまされやすいほど素直だからこそ、他者の方法を取り入れて成長してきたと感じています。
ーーこれから就職・転職を考えている方に向けて、貴社の魅力を一言で伝えるなら、どんな点をアピールしたいですか?
杉本幸倫:
給与面での充実は業界でも際立っています。たとえば、入社3か月で月収80万円を達成した社員もいます。社員一人ひとりの目標に合わせたキャリアパスを一緒に描き、そのためのアドバイスも行います。さらに、独立志向の方には、そのための考え方や方法も指導し、独立を支援しています。
オフィス環境も魅力の一つで、自然光を取り入れた明るい空間で、居心地よく働けるよう配慮しています。人が集まる場所には情報や機会も集まり、それが成長の原動力となると信じています。
編集後記
杉本社長は、数々の格言を引用しつつも、常に謙虚な姿勢を貫いている。その言葉からは、自身の成功を過信せず、他者からの学びを大切にしていることが強く伝わってくる。この謙虚さが数多くの成功者とのつながりを生み、さらなる成長へと導いているのだろう。メルヴェイユが今後どのような新たな挑戦に臨み、どのように発展していくのか、非常に楽しみである。
杉本幸倫/1975年愛知県出身。岐阜大学工学部卒業後、メーカーに就職して1年間設計職として従事。その後7年間、健康関連の販売代理店を営む。リサイクル会社の役員に就任し創業メンバーとして参画。2005年株式会社メルヴェイユを設立。