京都府に本社を構える交洋ファインケミカル株式会社は、化粧品や電子部品などの原料の不純物を蒸留によって取り除く工程を担うメーカーだ。同時に化粧品の卸売商社としても発展してきた。
1963年に創業した同社は、2024年に平田智也氏が代表取締役社長に就任し、次世代にバトンが受け継がれた。平田社長のこれまでの人生と、今後の展望について聞いた。
父の思いを汲んで会社を引き継ぐことを決意。営業で積み重ねた人脈が財産となる
――まずは平田社長のご経歴をお聞かせください。
平田智也:
私は新卒で大手の繊維製品メーカーに就職しました。社会人になって3年目くらいに現会長である父から交洋ファインケミカルに入社しないかと言われ、7年目が経過した2013年に弊社に入社しました。それからは主に営業に従事し、2024年に社長に就任しました。
――もともとお父さまから会社を継ぐようにといった、お話があったのでしょうか?
平田智也:
そういった話は今までありませんでしたね。父は私の意思を尊重する考えを持っており、「自由にしてもいいよ」と言ってくれていました。正直なところ、交洋ファインケミカルが何をしている会社なのかも詳細までは知らなかったのです。
とはいえ、父にはどこか「継いでほしい」という思いがあると感じるようになり、会社を継ごうと決意したのです。
――営業担当から社長に就任したときの心境の変化についてお聞かせください。
平田智也:
営業では製品の製造に関与していたため、既存顧客のフォローや、その過程で構築した人脈を活かして、新規顧客の開拓もしてきました。特に今思えば経営者の方と親密な関係を構築しておいて、本当によかったなと感じています。
営業から経営側に立場が変わると悩みの内容も変わってきます。営業時代は「どうしたら仕事が取れるんだろう」という悩みが大きかったのですが、経営となると品質研究や製造、総務、経理など全ての部門と連携しなければなりません。「いかに従業員の意識を統一するか」という悩みに変わりました。
幸いなことに、営業時代にお世話になった経営者の先輩から経営に関するアドバイスをいただけたので、人脈が大きな財産になっていると実感しています。50代、60代の大先輩が多いので、仕事が思うように獲得できないときに具体的な行動指針を教えてくださったり、従業員とのコミュニケーションのとり方に悩んだときに人生経験に基づいたアドバイスをしてくださったりと、本当に助かっています。
1ppbの微細な不純物を取り除く格別な蒸留技術で企業としての価値を生み出す
――貴社の事業内容について改めてお聞かせください。
平田智也:
弊社は、「製造」と「商社」という2つの事業を行っています。製造に関してはメーカーさまから「蒸留」という工程を受託しています。大きくは「化粧品」と「工業用」に分かれています。
化粧品の原料の場合、不純物が含まれていることがあり、それがアレルギーの原因となるため、蒸留によって取り除くのです。また、工業用に関しては主に携帯電話や自動車に使われる半導体の原料の蒸留を行っています。商社の事業では、その時々のトレンドに合った化粧品をメーカーから仕入れてユーザーに販売しています。
――競合他社と比較して、貴社の技術にはどのような強みがありますか?また、事業展開についても教えてください。
平田智也:
とくに弊社が力を入れて目指しているのは「金属管理が出来る体制」です。濃度の割合を示す1ppb(10億分の1)、つまりppmのさらに1/1000以下の微細な金属を取り除き且つ管理出来る体制を目指しています。また、「低温蒸留」を採用しており、熱で不安定になりがちな化合物でも蒸留・合成できることが強みです。
今後は、金属管理ができるという付加価値をもっと広めて行きたいですね。弊社の技術を活かせる分野はあると思うので、より幅広い業種に進出していきたいと考えています。
商社に関しても市場のなかで立ち位置を確立していく構えです。化粧品メーカー様、OEM様と連携して、提案から製造までトータルでコーディネートしたいと考えています。
透明性のある人事制度によって社員が失敗を恐れずチャレンジし続ける会社でありたい
――今後、どのような組織をつくっていきたいですか?
平田智也:
まずは製造と営業の体制強化です。とくに製造部門は人手不足です。また、営業に関しても進出できる分野が他にもあると思います。そのためには、適切な人財を採用し、幹部を育てていきたいですし、人事評価は変えていく必要があるでしょう。たとえば、「なぜこの人がこのポストなの?」「どうしたらこのポストにつけるの?」といった根拠が明確になるような透明性のある人事制度、そして実績を正当に評価できる制度をつくっていきたいですね。
――貴社が求める人物像を教えてください。
平田智也:
弊社は若手でも裁量を持って働ける社風ではあるのですが、それでも長く続けていくとどうしても保守的になってしまいます。「たとえ失敗してもめげずにチャレンジし続ける人材」を採用したいですね。
化粧品や化学に興味がある方、さまざまなプロジェクトに挑戦してみたい方は、大歓迎です。
編集後記
他社とは一線を画す蒸留技術を持ち、商社としても市場の立ち位置を確立しつつある交洋ファインケミカル株式会社。風通しが良く、年齢や立場に関係なく意見が言い合えて、挑戦できる社風が魅力であると感じた。平田社長に世代交代したことで、どのようなチャレンジが生まれ、市場を席巻していくのか、着目したい。
平田智也/1981年、京都府出身。2007年山口大学大学院 理工学研究科卒業後、グンゼ株式会社に入社。2013年交洋ファインケミカル株式会社に入社し、受託事業、商社事業などに携わり、執行役員技術営業部長、取締役研究開発本部長などを経て2024年5月、代表取締役社長に就任。